カカの天下740「お花見大会(普通)」
「お花見おめでとう!」
どうも。その表現は何か間違ってると思いつつも、野暮なツッコミは入れない空気の読めるトメです。
ちなみにただいま叫んだのは我が妹だったりするのですが、雨が上がって開催が決定した笠原ファミリーお花見大会には次々とメンバーが集まってきました。や、大会といっても何か競い合うわけじゃないんだけどね。
「ゆーた君、あれを運んでください」
「キリヤ、貴様に従う理由は――」
「ゆーたかっこいー」
「ゆーた力もちー」
「ふはははははは! 次はどいつが俺の獲物だ!? 百でも二百でも運んでくれるわ! み、見てますかーサカイ親子様!!」
『見てなーい』
「ショック! だがそれがいい! 運ぼ」
最初から素直に運べばいいのに……
「シュー君はこれを並べてください」
「はい! キリヤ様!」
素直すぎる……キリヤも何かしたのかな。や、しなくてもシュー君なら簡単に様づけしつつ誰にでも従いそうだけど。
「タマちゃんとクララちゃんはそこで応援しててください」
「がんばです! ですがんば!」
「えいえいおいおいおー!」
和むなぁ。適材適所だキリヤ。
「カカちゃんご一行は何もしないでください」
適材適所すぎる。さすがだ!
「サラさんは私の手伝いを」
「わっかりました!」
「カツコさんはサラさんの監視を」
「ん、慣れてる」
「どういう意味ですか!? 別にお酒をドミノ倒しみたいに倒して全部割ったりとかしませんよ!」
「はいはい、サラちゃん。あたしがいるから二度はないよ」
一度はあったんだ。
「トメ君は」
「おう」
「いつもどおり、ツッコんでてください」
「なんでやねん」
「そんな調子です」
どんな調子なのか甚だ疑問ではあるが、キリヤの指揮で着々と進んでいくお花見準備。要は宴会だ。シートを広げて、弁当や飲み物を所定の位置へと移動させるだけ。
しかしキリヤが大げさなものを東治から持ってきたので少し仕事がある。その大げさなものとは……文字通り大きな、すごく大きなクーラーボックスだ。水と氷をぶっ込んで、そこにペットボトルやビンごと飲み物を入れて冷やすことができる。おかげで外にいても常に冷えた飲み物にありつけるわけだ。ただし水いれ氷いれ、それの移動、最後の水抜きは面倒だったりする。
しかしそれもバカ力のペッ――召使――ていうかゆーたさんのおかげで、なんなく完成、準備完了。各々に飲み物がいきわたり、いよいよ乾杯という段取りとなりました。
「それでは、校長に乾杯の挨拶をしていただきましょう」
仕切りまくってるキリヤがやるのかと思いきや、ここで最年長の参加者様の登場だ。
「おほほ」
はてさて。詳しいことは知らないが校長が今回の主役だと聞く。
いったいどんな素晴らしいお言葉と共に乾杯してくれるのか!?
「かんぱい!」
お言葉ひとつも無いんかい!
『かんぱーい!!』
まぁ、そんな野暮なツッコミを考えるのは僕だけだったらしく。みんなは気にせず乾杯したので、僕も遅れてみんなの紙コップに自分のをぶつける。
そして飲む。よく冷えたビール! 外で飲むビール! 花見酒! んめー!!
「さて! お集まりの皆さん!」
お? みんながシートに座って弁当箱を開ける中、真っ先に飛びつきそうなカカが見向きもせずに立ち上がった。
「なんかメンバーがすっごくいっぱい居ますので、ここで自己紹介なんかしたら、どうでしょうか!」
自己紹介……?
「なぁカカ。今さらじゃないのかそれは」
「や、ほら。なんとなく一緒にいる面子だけどさ、改めてやれば親睦も深まるかなーと」
な、なんだと! カカがこんなに大人な意見を持ってくるなんて……せ、成長したなぁ。お兄さん涙出ちゃうよ。
「じゃあまずはトメ兄から!」
僕から? まぁ仕方ないか。今回はカカの大人な提案に乗っかるとしようか。意を決して立ち上がる。
「えーと、まず僕の名前はトメ!」
「なんでやねん!」
「カカ!? おまえのツッコミになんでやねん!」
「まぁこんなツッコミばっかり言ってる人です」
「おまえが紹介すんのかよ!」
「ていうか今さら言わなくても知ってるよね、みんな」
「おまえは何がしたいんだよ!」
「いただきます」
「聞けよ!!」
「美味しい!」
「よこせよ!」
「あー! 私のハンバーガー!」
ハンバーグじゃなくてハンバーガー!? お弁当に? なに考えてんだトウジさん……ってうめぇ! ハンバーガーうめぇ!! 肉汁とかレタスとか卵とかワンダホーでうめぇ!!
「ま、冗談は置いといて自己紹介を再開しよう」
「むぐむぐむ……? 冗談だったのか」
じゃあ食べるのを止めよう。
「隙あり!」
「僕のハンバーガー!! 返せ!」
「というのも冗談で……むぐむぐ」
「食ってんじゃねぇか! 冗談じゃないじゃん! 返せよ僕の!」
「ほらトメ兄。子供みたいにみっともないこと言ってないで自己紹介やるよ」
「どうせまた僕のお弁当を盗る気だろう? そうはいくか! ばくばくばくもぐもぐもぐむぐんむぐん!!」
盗られる間もないくらいの勢いで食いまくる! どうだカカ、これで――
「……トメ、あんたって」
これで――
「さぁ、空気の読めないトメ兄は放っておいて、本題のユカさんの自己紹介を始めるよ」
これで――カンペキに僕は見世物なわけだ。来てたのねユカさん。そのための前フリだったのね。そして、僕は見事に乗っかってしまったわけね。見苦しいほどに。
えーん。
「トメって……こんなに意地汚かったんだ」
えええええええええええええん! なんかユカにしみじみ言われたああああ!
「さぁユカさん! 雲の王国ファミリーへの入国試験だよ!」
僕の心には雲どころか豪雨が降りまくってるよーうええええええええん!
「これを持って!」
「カカちゃん、これって」
「三角定規」
「これで、どうしろと?」
「なんかおもしろいことして」
僕だってお花見でテンション上がってたんだよーうえええええええ……ん? なんだか無茶振りが聞こえたような。
「それがうちの入国試験だよ!」
初めて聞きましたが。
「面白いか変か変態じゃないと、うちのファミリーには入れないの!」
そんな特徴も初めて聞きましたが。
「ね、ボス?」
そんな風に呼ばれるとまるで僕がそれらの全てを兼ね備えているみたいに聞こえるんですけど!?
「…………」
ま、まぁ、あのユカがそんな恥をかいてまで僕らの仲間に入りたいなんて、
「がんばる」
思うんだ!?
「えっ……と」
ユカは悩む、悩む悩む。それはそうだ。なにせ三角定規だ。あれでどうボケろというのか。むしろ僕としてはそんな微妙なもんを渡したカカにツッコみたい気分だ。
「よし!」
おお? もうネタを思いついたのか。意外と才能あるのかもしれない。なんのだ。
「んしょ」
ユカは自分の靴の裏に三角定規を取り付けた。まるでスパイク……いや、ピンヒールか? ともかくそれを装備したユカは、半ばジャンプするように僕へ近づいてきて――足を振り上げ、踏み下ろしながら言った。
「元彼女様とお呼び!!」
三角定規ヒールは、僕に刺さることはなかった。あくまで踏むマネだったからだ。
ユカはファミリー一同を見る。僕もそっちを見る。
なんか唖然としていた。ネタが突飛すぎたか?
「…………!」
あ、ユカの顔がだんだんと赤くなってきて――
「にゃあああああああああああああああー!!」
意味不明な奇声をあげて、結局僕を踏み刺した!!
「ぎにゃああああああああああああああああああああ!!」
負けないくらいの声で僕も叫んだ! だって予想以上に痛かったし! ぐりぐりされたし! 血が出てるし! 思わず転がるし!!
『合格!!』
なんで満場一致なんだよ!? 唖然としてただろおまえら! どうして「こういう人材がほしかった」とか「カカちゃん、いい子を拾ってきたわね」とかホクホク顔なんだよ! 僕まだ転がってるんですけど? あとユカが妙に照れくさそうに笑顔なのも気に食わない! いや仲よくなるのはいいんだけど加害者だろおまえ! 被害者になんかないのか!! 「みんな、ありがとう」ってありがとうの前にごめんなさいだろ!!
「よし! 仲間も増えたことだし、盛り上がっていくよー!!」
「ぎにゃあああああああああああああああ!!」
我が妹の宣言は高らかに。そう、ちょっといつもより高い。僕を踏み台にしたから。僕、何かしましたか……?
ともかくお花見は続きます。あとはダラダラと――
むう、思ったより遅れてしまいました。もうお花見の時期は……ま、まぁちょっと長めにお花見気分を楽しむということで!
次の話は続きますが、ダラダラです。新しい感じの書き方でダラダラさせようと思いますので、お楽しみに。まぁさして特別すごいことするわけじゃないんですけどね笑
しかし感想が返せない。なんか毎回謝ってて申し訳ない。後で寝る前に元気があったら必ず!!




