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カカの天下  作者: ルシカ
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カカの天下74「ひねった気持ちと素直な行動」

「ねえ君さ、いくらなんでも調子乗りすぎじゃない?」


「ん?」


 ども、カカっす。


 今は昼休みの時間。


 のんびりとサエちゃんと給食でいちゃいちゃしていた私に向かっていきなりぼーげんを吐いてきたのは見知らぬ女子でした。


 ところで暴言じゃなくてボーゲンってあったよね。なんだっけ。


「誰、あんた」


「人に名前を聞くときは自分から名乗るもんよ」


「じゃ興味ないから名前言わなくていいよ」


 そんなことよりもボーゲンがなんだったかのほうが興味ある。


 うーん……と唸っていると、


「君のそういうところがムカつくのよっ」


「ん? まだいたの」


「……! へ、へぇ。噂どおりの勝手な子ね!」


「それで、結局はどちらさまー?」


 ぽややんと様子を見ていたサエちゃんがその女子に聞くと、


「わたしはサユカ。なんかカカって子がずいぶんいい気になってるみたいだから、言いがかりをつけに来たの」


「正直だねー。言いがかりつけにきたって自分で言わないよ、普通」


「普通じゃないなら変なやつか。この変なやつめ」


「やっかましいっ! 君に言われたくないわっ」


 おーなんか顔赤くしてる。単純っぽい子だなぁ。


 それはいいけどボーゲンボーゲン……なんだっけ。


 あ、確かスキーのやつだ。


「とにかくね、そんなちっこいくせに偉そうにされちゃたまんないのよねっ」


「サユカちゃん、背高いもんねー。うらやましー」


「ふふん、そうでしょう? でもさ、高ければいいってもんじゃなくて……はっ」


 スキーの……ええと、道具? 違う。


「とにかくっ。そこのカカ! あんまでかい顔しないでよねっ」


「えー、カカちゃん顔小さいよ?」


「むぅ、確かに。これは私がうらやまし――じゃなくて!!」


 あ、思いだした!!


「とにかくカカ。聞いてるの? 私はあなたの」


「滑り方だ」


「滑り方が気にいらなくて」


「スキー行きたくなってきた」


「一度こってりと指導してあげようと思って」


「あ、ほんと? じゃ今度お願い」


「仕方ないわね、わかったわよ。わたしの指導は厳しいわよ……って、あれ?」


 サユカちゃんは、なんか変な顔して首を傾げていた。




 ……あれ?


 わたしは最近生意気と評判のカカに、文句を言うために隣の教室へわざわざ出向いたはずなんだけど……


「サユカちゃん、これ食べるー?」


「あ、サエちゃん。それは私が最後にとっておいたコンソメたっぷりポテチ!!」


「ダメだよ。お友達記念にサユカちゃんにあげるのー」


「えー。せっかくの記念だしこの黒コゲポテチあげようよ。姉も『新人の歓迎には根性焼きが一番』って言ってたし。根性ありそうな焼き加減のこれのほうがいいよ」


 なんで、そのカカの部屋でのんびりお菓子食べてるんだろう?


「じゃ、どっちも食べてもらうってことで」


「うー……まぁいいか。歓迎会だし」


「ちょっと待ったっ! カカすけ? なんか流されてここまで来たけど……あと何度も言ってる気がするけど、もともとわたしは君に文句を」


「お、カカすけっていいね」


「トメお兄さんもトメすけって呼んで、二人で並ぶと語呂がよさそうだねー」


「ごろ? ごろごろ」


「うがぁぁぁぁぁぁー!!」


 人の話を聞かないこの二人に、わたしはなんかもうやりきれなくなって叫んだ!


 そしてそのままカカの部屋を飛び出す。


 後ろで二人が何か言っているのが聞こえたけど、そんなのは知らない! 


 なんだかわからないけど無性にここから離れたくなった。


 なんだか、わからないけど――


「お、カカの新しい友達か?」


「へ」


 玄関から飛び出そうとしたところで男の人と出くわした。そういえばカカ、お兄さんがいるみたいなことを言ってたような。


「なんだ、もう帰るのか。ゆっくりしてけばいいのに」


「……わけわかんないんだもん、カカ。わけわかんないまま連れてこられて、わけわかんないまま一緒にいて」


 なんだかむしゃくしゃしていたわたしは、初対面にも関わらずそんな脈絡もないことを言ってしまった。


 でも、そのカカのお兄さんらしき人は――呆れたように、そんなわたしを笑い飛ばした。


「わけもなしに一緒にいるのが友達だろが」


「とも……だち? でも、カカとか、サエとか、喋ったことあんまり」


「ほんと最近のお子様はどいつもこいつも……細かいこと考えるなよ。カカも多分なんも考えてないよ。『なんとなく』で何でも行動するやつだからな」


「なんと、なく」


 そう、なんとなく、わたしは声をかけた。


 隣のクラスまで、わざわざ足を運んで。


 喋ったこともないのに、わざわざ声を――


「だからおまえもお子様らしく、なんとなくうちでゆっくりしてけよ」


 なんとなく――顔が熱くなった。


 わたしはぺこりと頭を下げて、身を翻した。


 そしてカカの部屋へ。


「カカすけ!!」


 そしてなんとなく叫んだ。


「わたしを姉と呼んでいいわよっ」


「……あんた、私の姉がどんな化けものか知ってて言ってる?」




 さて、いきなり偉そうなことを言ったうえ、サユカちゃんにとある感情を芽生えさせてしまったトメだったが……


「そうそう、細かいこと考えてたらうちの妹とやってけないよな。うん、我ながら的確なアドバイス。やっぱキングオブ兄だな」


 そんなことは露知らず、妹の人間関係に出しゃばることができた自分を自画自賛していた。




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