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カカの天下  作者: ルシカ
739/917

カカの天下739「満開の桜は何思ふ」

 こんにちは、トメです。


 今日は楽しいお花見の日! だったのですが……


「雨……降ってきた」


 嫌がらせのような曇天、少しずつ落ちてきた雨は徐々に勢いが強くなり、間もなく豪雨となるらしい。


『えぇー!』


 僕の家に集合して準備をしていたカカサエサユカ、クララちゃん、姉の五人が一斉に不満を漏らした。


『困る!!』


 そんなこと言われても。


「どうしよー、せっかくのお花見がー」


「よし、みんな! 急いでテルテル坊主を死ぬほど作るんだ!」


「カカすけ、今更そんなことしても無駄よっ!」


「お母さんを迎えに行こうと思ってたのに!」


 慌てる一同。


「とりあえず案としては……サカイさんちにでも集まってパーティーでもするか? せっかく弁当とか用意してもらったんだし」


 もちろん僕もお花見はしたい。しかし雨の中で無理やりするわけにもいかないだろう。みんなの予定と準備を無駄にしないための代案を口にしてみたんだけど。


「そんなことしなくてもいいよ」


 姉がずっぱり切り捨てて、言った。


「要は、あの雲にどいてもらえばいい話だ」


 そんな無茶なことを。


「それで? どうやってどいてもらうんだよ。雲にお願いでもするのか?」


「そう!」


 アホだ。


「せーの――そこの雲! どけええええええええええええええ!!」


 それお願いじゃなくて命令な。


「お姉に続け! どいてええええええええええええええ!!」


「雲かーえーれー! 雲かーえーれー!」


「わ、わたしもっ! ブーブーブーブーブーッ!」


「サユカン太ったの?」


「ぶたにくー?」


「お腹を摘ままないでよっ! ブーイングのブーブーよっ!」


『知ってる』


「ブーブーブーブーブーッ!!」


「クララもやるです! ブヒー! ブヒー!」


「だから豚じゃないってのっ!!」


 や、そもそもさ。そんなことで晴れるわけないでしょ。


「お、雨止んだ」


 うそぉ!?


「あの雲も邪魔だね。いくよ妹ちゃんたち! せーの!」


『あっち行け!!』


 本当に雲があっちに行った!? なんか太陽見えてきた!! なんだコレ!!


「本当に晴れた!!」


「よーし! みんな桜の木にいこー!!」


「クララはお母さん呼んできます!!」


「ブーブー言ってるだけでこんなことができるなんて、豚って結構すごいのねっ!」


 豚じゃないって言ってなかったっけ。というか、豚じゃなくて姉がすごい……のか?


「なぁ姉。おまえ動物だけじゃなくて天候も操れるのか」


「んなわけないじゃん」


「や、でもあんたが叫んだら実際に天気が」


「あたしゃノリで行動してるだけだ。そしたら空がノッてくれた。それだけのことさね」


 どれだけのことなのか微塵もわかりませんが。


「ま、こんだけ力を持ってる人間が願えば雨乞いの逆くらいできるのかもね」


「力? なんだそれ」


「なんかこう――幸せな力」


 とりあえず姉の頭ん中が幸せなのはわかった。


「どうせ似合わないさ! こういうセリフは!!」


「何も言ってないだろ」


 さて、晴れたのには違いないんだし行くとしようか。




 クララです!


 天気をなんとか快晴にできました! えっと、こういうのを気合っていうんですよね!


「こーちょー! はやく来るです!」


「おほほ、そんなに急がないで」


 シュバッと移動したクララはお母さんをエスコート中です。繋いだ手を大きくぶんぶん振って、ご機嫌に公園を目指します。


「晴れてよかったですね!」


「ええ、本当に。なんだか雲が怯えたように去っていきましたけど」


「雲が気合負けしたのですね!」


「はい?」


「どちらかと言うと気体負けですね! 雲ですから!」


「はい?」


「クララ気合です!」


「えーと。おほほ、元気ねぇ」


 楽しく会話しているうちに、目的地はもう目の前に!


「…………」


「あれ? どうしたのですか校長」


 なのにお母さんは足を止めました。


「お花見とは……この先のお花の下でするのかしら?」


「そうです!」


 枯れたと勘違いさせてしまってから一年。ようやくクララの復活した姿を見せることができるのです!


 なのに、お母さんは、背を向けて――


「校長!? どどどどーしたのですか!」


「お、おほほ。急に用事が」


「そんな用事どうやって感知したのですか! 携帯も何も見てないです!」


「こ、校長ともなると、脳に携帯並の受信機能がついてですね? メールも電話もお手のもので」


「嘘です!」


 クララに嘘は通用しません。目を見ればわかってしまうのです! え、目を見なくても嘘だとわかる? あなたすごいですね!! クララそんけーです!!


「とにかく逃がしません!」


 クララは校長の腕をがっちり掴み、そのまま桜に向かって引き摺り始めました。こうなったら無理やりです。


「わ、わたくしは、その」


「あの桜を見るのが嫌なのですか!?」


 だとしたらクララしょっくです! お母さんはもう、クララの桜が嫌いになってしまったのでしょうか?


「……恐い、のです」


「えっほ! えっほ! なにが! 恐いのですか!」


 がんばってずりずり引き摺りながら聞きます。


「わたくしは、本当にあの桜が大切だったのです……本当の子供のように」


 えっほ! えっほ!!


「あの木が枯れて――死んでしまって。わたくしは悲しくて……あの子の枯れた姿を見たくなくて」


「校長はその子が好きじゃなかったのですか!?」


「大好きでした。だからこそ――」


 ええい、ごちゃごちゃうるさいです!!


「生きていようが死んでいようが、好きな人に会えば嬉しいもんなんです!!」


 枯れたがどうしましたか。死んだがどうしましたか。


 人はなんでお墓というものを作るのですか?


 相手への気持ちが変わらないからでしょう。ずっと好きだからでしょう。


「見てください」




 薄らと降った雨は、程よい化粧になったのか。


 視界いっぱいに広がる桃色。濡れた花弁を陽光で一層に輝かせながら、春を告げる木は堂々とそこに在った。


 温かく、美しく、晴れやかに、この世全てを祝福するかのように。感謝するかのように。


 そして何より幸せそうに、花を咲かせていた。




「――ほら、こんなに喜んでいます」


 この木はクララ自身です。


 花は満開。それは心も満開だから。


 お母さんに、「クララは大丈夫だよ」って、伝えることができたから。


 そしてまた一緒に、桜と母として会話できることが、何より嬉しいから。


「……あ」


 クララに――クララの桜に会えたお母さんは、泣いていました。


「……ああ」


 嬉しいんです。喜んでいるんです。クララにはわかります。だってお母さんのことですから。


「……よかった」


 本当に、よかったです。晴れてよかった。また会えてよかった。


 さぁ、お花見を始めましょう。そろそろみんなが集まってきます。


 そして春を祝いましょう!

 


  

 みんなが集まる直前。


 お母さんは小さな声で、納得したように言いました。


「やっぱり最後にあげた肥料――ティラノサウルスの糞が効いたのね」


 どっから持ってきたのですか!?


「あ、糞の化石でした」


 だからどっから!?


「ありがとう、糞」


 クララ台無しです!!




 お花見開始、です!


 もちろん今回で終わることなく続きますよん^^

 

 楽しい宴になればいいなぁ。


 そうそう人気投票ですが。中間発表終わってからもどしどし来たので、またもや番狂わせがありそうです。まだわかんないけどね。

 え、感想返信? あ、明日……笑

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