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カカの天下  作者: ルシカ
737/917

カカの天下737「ごろんごろん」

「ふにゃー……」


 こんにちは……カカでふぅ……


 あぁー、いま? いまね、ふにゃふにゃなの。溶けてるの。太陽さんがあんまりにもポカポカだからね、公園の芝生で大の字に寝っ転がって光合成してるの。


「あーったきぃー……」


 解説しよう! あたたかい→あったかい→あったけー→あったきぃー、って感じ。


「あー……ぅうぅー……」


 解説しよう! 気持ちよくて、あー、うー♪ な感じ。


 程よい雲と、程よい陽気。これだけ春色な気候なら桜もじきに満開だね。あの桜が咲いたらお花見しないとなー。みーんなみんな集めて、騒いで……んあー、それはさておき現在進行形の太陽光が気持ちよすぎるー、草の匂いが心地よすぎるー、花の香りに癒されすぎるー。


 たまに体を撫でるそよ風、揺れる草木の静かな囁き、涼やかな鳥の歌、遠くから聞こえてくるのは子供の声……公園って実は、すんごく快適なお昼寝スポットなわけですよ。意外とみんな気づかないわけですよ、気づいても知ってても、忘れてたりするわけですよ。


 ――なにを? お昼寝の幸せ具合を、ね。


 これこれ、そこの大人さん。そんなに急いでどこに行く? ちょっとゆっくり休みなさいな。その辺に転がってる幸せも、けっこーいいもんなんだべよ?


「あー……お?」


 私が寝っ転がってる芝生越しの道にて、そんな急いでる大人さんの一人が足を止めた感じ。


 なにやらこちらを凝視されてる感じ。


 かと思ったらズカズカと――や、芝生の上だからざくざくか。とにかく足音たてて近づいてきた感じ。


 んで、見下ろされてる感じ。


 私は薄らと開いていた目を向けた。太陽を背にして、ぼんやりと浮かび上がるシルエット。


「……おねーちゃん?」


 ふと、自然に口が動いた。


「ワタシはあなたの姉なんかじゃないわよ」


 あれ、違ったか。


 ほんとだ。うちの姉と全く似つかない金髪さんだ。


「ユカさんだっけ」


「そうよ。あなたのお兄さんの天敵よ」


 口元がニヤける。天敵だって? ウケる。


「……なにが可笑しいの」


「んや、日向ぼっこが気持ちよくてさー」


「……そう。じゃ、ワタシはこれ、で?」


 目を細めてるからあんま見えないけど、ユカさんが訝しんでるのがわかる。


 それもそのはず、私はユカさんの足をがっちり掴んでいるんだから。


「あの、離してほしいんだけど」


 ぶんぶん、と首を横に振って拒否。


「なんで」


 ばんばん! と空いてる手で私の隣へカモンと叩く。 


「……一緒に寝転がれって?」


 コクコク、と頷きまくって肯定。


「はぁ……久々に変なのに捕まったもんだわ」


 観念してくれたのか、隣へ動く気配がしたので手を離す。寝転がるまではいかなくても、芝生へ腰を下ろしてくれたのがわかった。私は満足げに微笑む。


「意外と、のんびりさんなのね」


「んー? なんで?」


「なんだか、いつも動き回ってるようなイメージがあるから」


「そうでもないよー。まったり大好きよー」


 そりゃ面白いこと大好きだから暴れるときが多いけどねぇ。いつも一緒にいるトメ兄がこういう年寄りくさいの好きだから、いつの間にか毒されちゃったんだよね。


「……まぁ、ワタシも最近は空を見上げることもなかったし。いいか」


 促されて私も空を見上げる。


「あの雲」


 それを見つけて、思わず指を空へ向けた。


「あの雲? うん、面白い形ね。まるで……」


「まるでトメ兄のツッコミみたい」


「どんな雲!?」


「あの雲は私のボケ」


「だからどんな」


「あれは黒いことしてるサエちゃん。愉快なことになってるサユカン。それを見て笑ってるテンカ先生とお姉、サカイさん」


 一つ一つ、指を向けていく。


「料理を運んだりしてみんなのお世話をしてるキリヤン、ちゃっかり美味しいものばかり食べるサラさん、走り回ってるタマちゃんとクララちゃん、追い回されてるシュー。あ、あれは学校のみんなかな。あっちのは、サカイさんの動物団」


 もう滅茶苦茶だ。でもしーらない。


「ずいぶんと楽しそうな雲の王国ね」


 大事なのは、そこだけだから。


 あったかくて、気持ちよくて、楽しければ、ただの雲だって――ラクガキし放題の王国なのだ。


「もちろんユカさんもいるよ」


「……そんな楽しそうな国に、ワタシみたいな恐い顔した女はいられないでしょ」


「そう? ユカさんっていつも楽しそうだけど」


「はぃ?」


 すっとんきょーな声出してまー。


「え、っと……ワタシ、怒った顔しか見せたことないと思うんだけど」


「でも本当に怒ってはいないでしょー」


「……なんで、そう思うの」


「なんとなくー」


 隣を見る。そこにはきょとんとした女の人。


 実は穏やかな人。


 うん、やっぱり。トメ兄を相手にしてるときの刺々しい雰囲気が全くない。あれはトメ兄とだけの“遊び”なんだよね。


「楽しそう、か」


 天敵だなんて、そんな遊び相手の呼び方は聞いたことない。だから、面白い。


「そか」


 ユカさんも面白かったのかな?


「……あはは」


 笑いながら、頭を撫でられた。


 すごく、優しく。


「おねーちゃん?」 


 あれ、頭を撫でられてたら、なんかまた勝手に口が。


「……お義姉ちゃん、か。そう呼ばせて遊んでたこともあったっけ」


「えと?」


「おっきくなったね、カカちゃん」


 そう言って、私の頭をポンポン叩きながら、にっこり笑ったユカさんは。


 やっぱり私たちの仲間なんだって、思って。


「それじゃ、また――」


「今度、お花見するの」


 立ち上がったユカさんを引きとめるように、また口が動いて。


「そうなんだ……ふぅん」


「みんな、集まると思うの」


「雲の王国のみんな?」


「うん。だからユカさんも」


 ユカさんは少しだけ考えるそぶり、そして。


「入国審査に受かったら、行くわ」


 冗談交じりにそう言って、踵を返した。


 来てくれるかな……


 来てくれるといいな……


 あと……


「入国審査、か」


 なんか考えておかないと。


 面白いのを。




 最近、日差しが温かくて。

 のんびり日向ぼっこしてたら、こんなお話が浮かんできましたとさ。


 トメには毒舌満載のユカさんも、子供相手には普通のおねーさんだったりします。


 トメ以外の大人へは……はてさて? 入国審査を突破すれば見れるのでしょうか。


 それはそうと昼寝したいなーくそー。


 あ、次の話のあとがきにでも人気投票の中間発表を載せまーす^^

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