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カカの天下  作者: ルシカ
735/917

カカの天下735「春の日々ならぬ春な日々」

 カカです。春休みに入りました。


 休みに入る直前、テンカ先生は「春だぞ。ねみぃだろ? 好きなだけ寝て、嫌になるほど寝て、そしておとなしく寝てろ」と言っていました。宿題をやれと言う前に、とにかく私たちにおとなしくしてほしいみたいです。


 そうはいくか。


 というわけで春休み、一日目。


 何かしよう……とは思ったけど、お楽しみ会で疲れたこともあってトメ兄とゆっくりすることにしました。


「はふー」


「んー」


 居間で二人、お茶をすすってまったりのんびりテレビ鑑賞。


「……お茶」


「はいよ」


 トメ兄はおとなしくしてる私には優しい。特に文句もなくお茶のおかわりを煎れてくれる。


 数分後。


「お茶」


「はいよ」


 数分後。


「お茶」


「はいよ」


 数分後。


「おしっこ」


「はいよ」


「湯のみに入れるの!?」


「ちっ」


「トメ兄……どうするつもりだったの?」


「や、特に何も。反応見たかっただけ。トイレだろ? 行ってこい行ってこい」


 トメ兄はたまにお茶目だ。




 二日目。もう元気満タンだ。


 この日はサエちゃんサユカンと二人で遊び倒してやろうと思ったのに、天気は雨だった。なんだか外に出るのが面倒だ。でも広がってる水弾幕をふっ飛ばしながら突き進むのも悪くないかなぁなんて思ってたら……お姉が遊びにきた。


「やほ、カカちゃん」


「お姉。ちょうど退屈してたんだよ」


「おし、じゃあ久々にやるか?」


「おっけー!」


 春休み、つまり連休だからこそできることがある。それはお姉式トレーニング。やり方はこうだ。


 一日目。体中のありとあらゆる筋肉をトレーニングでぶっ壊す。例、死ぬほど腕立て伏せをして両肘を付けることができなくなるくらい胸筋を壊す、など。笑いが止まらなくなるくらい腹筋する、など。体の動かなさに泣けてくるまで、など。


 二日目。筋肉痛で半分死体。でもできるだけトレーニングする。泣き言は聞かない。


 三日目。軽いランニング、軽い運動だけして無理はしない。よくやった。


 この三日間、きちんとたんぱく質、余裕があれば適応したアミノ酸を取ること。そうすれば三日だけでかなり筋肉が付く。筋繊維とは一旦壊し、再生することにより強くなるのだから。


 ただし注意点。この三日間は激しく行動が制限される。休みでもない限りはするべきではない。二日目に学校や仕事に行こうものなら地獄の一日となるだろう。あなたがドMならば止めはしない。


 以上、かつて小学生に入ったお祝いとしてお姉が授けてくれた修行法である。あまりにきついので年に一、二回しかやらないけどね。


 よって、春休み二日目〜四日目。体をふらふらにして過ごした。あまりに動けず、外にも出れなくて暇だったので、宿題を全部終わらせてしまった。ちなみにお姉は一日目に私の倍トレーニングしてたくせに、二日目は元気に仕事へ行っていた。バケモノ。


 五日目。体が回復した。やっとサエちゃんサユカンと全力で遊べる。


 あまりに嬉しかったので、サエちゃんをお姫様だっこして商店街を爆走した。


 サユカンは慌ててついてきた。私が見苦しく迷惑かけていることを「ごめんなさいっ! ごめんなさいっ!」って商店街の皆様に謝ってる。サエちゃんは私の腕の中で寝ている。


 商店街を一周したあたりで私は満足した。我が筋力は確実に鍛えられておる。サユカンの喉も確実に鍛えられておる。


「さて、とー」


 起きたサエちゃんは徐にサユカンの背中から一枚の紙を剥がした。


 貼り紙に書いてある文字は――『笠原トメはわたしのモノでごめんなさい』


『宣伝終了』


 サエちゃんとハイタッチ。サユカンは叫ぶ。おお、喉はまだまだいけるみたいだ。


 ――その夜、トメ兄が。


「なぁ。今日さ、夕飯の買い物に行ったときに変な目で見られたんだけど、僕に何か変なとこあるか?」


「別に」


 とりあえずおめでとう。


「そっかー。変といえばキリヤもなんだよ。最近付き合い悪くてさー。奢るって言ってんのにさー」


「あっそー」


 とりあえずどうでもいい。




 六日目。サエちゃんちで遊んだ。以前に壊れたパコちゃんはすっかり元気。ヘンテコRPGでサユカンの絶叫を聞いた後は、サカイ動物園で思いっきりはしゃいだ。一番楽しかったのは鬼ごっこ。動物たちはさすがに速いけど、ルールをわかってないので上手く手懐ければ鬼をあっさり代わってくれる。


 そんな動物たちの中でも、一番目立っていたのはゆーた。


「うへへへへへ」とか気持ち悪く笑いながら手をわきわきさせて追いかけてくる姿はヘンタイにしか見えなかった。サエちゃんはそれを真っ正直に言って、ゆーたを泣かしていた。泣くくらいならしなきゃいいのに。でもそれがいいのか。


 途中からサカイさんも参加した。誰かと同じように「うへへへー」と追いかけてきて、サエちゃんに「そのネタさっき見たー」と言われて泣かされていた。変態の考えることは皆同じらしい。




 七日目。商店街を歩いていたらイチョウさんに会った。


 花屋のサラさんに差し入れに行くとのことなので、ついていく。


「お、カカちゃん」


 そこではお姉が植木鉢を十二個ほど両手で持って運んでいた。どうやって持っているのか、わけがわからない。


「サラちゃん? あの子なら奥にいるよ……え、なに!? お姉さんのことはどうでもいいの!? 一緒に叫びながら腕立て伏せした仲じゃないの!? 汗くさくて水くさくて単純にくさいあたしらの友情は――」


「いいから仕事しなよ植木のバケモノ」


「んだとう! 肥料くさいとも言う気か!」


「草とも言う気だ」


「おう、一本とられた!! じゃ、その草の仕事してきまーす」


「いってらー」


 イチョウさんは私たちのやりとりを呆然と見つめていた。


「え……っと、仲がいいですね!」


 すごく感想を言いづらそうだった。


「ま、姉妹だし」


「わたくしも負けていられません……お姉様!」


 花屋さんの中へ入って、すぐにサラさんは見つかった。


「おやおや妹ちゃん、どったの?」


「もうすぐお昼ですので、差し入れをお持ちいたしました」


「わわ! うっれしぃ! 愛してるよ妹ちゃん!!」


 いきなり抱きついて頬ずりされるイチョウさん。メガネがズレる、三つ編みがズレる、「そ、その、あの!?」と焦って表情もズレる。服も微妙にイヤンにズレる。可愛いじゃん。仲いいじゃん。私と姉じゃこういうのはなんないんだよねぇ。


「それで、何を持って来てくれたのかな?」


 イチョウさんはバッグからお弁当箱を取り出した。


「お父様のライスと、わたくしのハンバーグ、そしてヤナツのサラダです」


「なんか家族を食ってる気分になるんだけど」


「食べてくれないのですか?」


 こんな新しい「私を食べて」初めて見た。

 



 八日目。お馴染みトリオで公園を闊歩してたらニシカワ君とアヤちゃんが歩いているのを発見、即突撃。


「ようよう、お熱いねぇお二人さん!」


「……カカ、あんたのセリフは寒いわよ」


 ショック!!


「ねーねーお二人さん、誤魔化さないで教えてよー」


「どうなのっ! どうなのっ! ラブラブしてたのっ!?」


 瞬時に真っ赤になるアヤちゃん。それに比べてニシカワ君は涼しい顔で、


「うん」


 頷いちゃった!?


「え、ちょ、に、ニッシー?」


「どうやってラブラブしてたのー? 詳しくー」


「そこらへんブラブラ」


『そんなボケはいらない!!』


 私ら三人の声が重なり、不思議そうに首を傾げるニシカワ君。


「ラブラブってどんなの? ねぇアヤ坊」


「え……ど、どんなのって、ニッシー?」


「どんなのかなぁ」


「そ、その……」


 私ら三人は思った。


 そんなのだよ。




 九日目。


「もう春休みが終わる!?」


「もうって。さんざん遊んだだろうが」


「花見してない!」


「次の休みにでもすればいいだろ」


「それもそっか」


 異常気象かまだまだ寒く、桜の花もこれからが本番だ。


 新学期が始まる私らも本番。さぁ、頑張っていこう!


「とりあえずさ、僕ってばこないだ警官に話しかけられたんだけどなんでかな?」


「さーて宿題って終わってたっけなぁ」




 春休みの日々をざーっと書いちゃいました。

 手抜きになるかなーと心配でしたけど、意外と楽しく書けてよかったです^^


 さてさて、ようやく普通の時間軸に追いついて……でもちゃんと春の話は今後も書いていきますのでご安心を!

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