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カカの天下  作者: ルシカ
728/917

カカの天下728「がんばれ○○」

 こんにちは、カカです。


 そろそろ春休みに入るので授業も簡単になってきました。次の学級活動の時間なんて楽チンったらありゃしません。最近は卒業式の練習くらいしか行事もなかったし……体育館でドッジボールしたりすることも多いので、むしろ楽しみです。


 でも他の教室は少し忙しいような気が。何してんでしょね。


「おぅ、てめぇら」


 ともあれ授業開始。教壇に立ったテンカ先生を見つめる私ら生徒。今日は何すんのかな。わくわく、わくわく。


「重大な知らせがある」


「テンカ先生が教頭と結婚!!」


『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』


「カカ、黙れ。殺すぞ」


「ハイすいません」


 自重します。こあい。


「あー、知らせだがな――お楽しみ会を忘れていた!!」


 しーん……


「……あん? どうしたてめぇら。お楽しみ会だぞ、年に一度の楽しみだぞ。去年はてめぇらもはしゃぎまくってたじゃねぇか。それを忘れてたってのに、なんでそんなに無反応なんだ?」


「だって私たちは覚えてましたしー」


 サエちゃんの言葉にピキリと固まるセンセ。


「ていうか先生、前に言ってたじゃないですかっ! 準備も段取りもぜーんぶ自分がやるから、生徒は何もしなくていいってっ!」


「オレがそんな面倒なことを言うはずがない!!」


 や、それが言っちゃったんだなぁ。


「はい、先生。証拠の動画ですよー」


 サエちゃんが携帯を先生に見せる。ついでとばかりに私も覗き込む。


 そこには過去のテンカ先生が映っていた。


 とてつもなく眠そうに机で頬杖を突きながら。


『テンカせんせー』


『……あぁはん?』


 外人さんっぽいステキなイントネーションで応えてくれる先生。


『起きてますー?』


『あぁはん?』


『寝てますよねー?』


『……あぁはん?』


『あ、起きてるんですね』


『……あぁはん』


『今回のお楽しみ会なんですけどー、準備はどうするんですか?』


『あぁはん?』


『あ、先生が全部やってくれるんですねー』


『あぁ――』


 はん、と続けようとしたところで、誰かから受け取った消しゴム(ケロリンの香り)を先生の口に突っ込むサエちゃん。あぁ、と返事したように聞こえなくもない。


 という動画だった。


「ほらー! ちゃんと言ってるでしょー」


「これっぽちもちゃんとしてねぇ」


「でも証拠があるんですからー、やってくださいねー」


 作戦成功とばかりにニヤニヤするサエちゃん。そして共犯(動画撮影係&消しゴム手渡し係)の私とサユカン。


 果たしてハメられたテンカ先生は一体どんな反応をしてくれるのか!? 私たちは大いに期待を膨らませた。


「……あのよ」


 でも返ってきた反応は、予想外にも呆れた顔。


「ハメるならハメるで、もっと早く言えよ。もう一週間もねぇのにそんなこと言われてもフツーに準備できねぇぞ? 何を発注するにも間に合わねぇし、何の練習もできねぇだろ。時間なくて」


 あ……口をあんぐり開ける私たち。


「そ、そういやそうだー!」


「結局わたしたちの首を絞めてるんじゃないのコレッ! せっかくのお楽しみ会なのにっ!」


「そんな! サエちゃんが計算ミスするなんて!」


「……ごめんねカカちゃん。計算とかじゃなくて、実は私もさっきまでお楽しみ会のこと忘れてたのー!」


『なにぃぃぃぃぃぃ! サエちゃんに任せてれば大丈夫と思って放っておいたのにぃぃぃぃ!(byクラスメイト一同)』


 あぅー、しっぱいーしっぱいーと頭を抱えているサエちゃんも可愛いけど、事態はそれどころじゃない! 


 イベント大好きな私たちが、お楽しみ会に何もできないだと!? そんなことがあってはならない! クラス全員がざわざわと騒ぎ出す。何か……何かをなんとかしないと!

 

 そんな自業自得に焦る私たちに、テンカ先生は「やれやれ」とため息をつきながら口を開いた。


「まぁ落ち着け。オレもさっきお楽しみ会を思い出したときは焦ったがな、他のクラスの出し物を見て参考になったものがある」


「え、他のクラスは何するんですか?」


「タケダのワンマンショー」


 騒いでいたクラスはなんか黙り込んだ。


「……なによ、その拷問」


 全校生徒もかくやという人数の前、一人でショー。確かに拷問だ。


「いやな? 実はタケダってば最近まで失踪してたんだよ」


『そうなの? 気づかなかった』


 誰が言ったかは想像に任せる。


「んで、あいつのクラスメイトが『おいタケダ、休みすぎで単位やべーぞ』『このままだと留年決定だとさ』『なんとかして先生のポイント稼がないと!』ってたきつけたらしくてな」


「あの……ここ、小学校……」


「おう、小学校で留年って素晴らしく格好悪いだろ?」


「あの、そういう問題じゃなくてっ!」


 サユカンのツッコミは届かない。


「タケダも『なんと! 日本初の小学校留年児になってしまうというのか!! ならん、断じてならん! 学歴重視の現在で小卒などではまともな就職ができるはずもないし、何より恥だ! そのような世界的屈辱に比べれば、生徒の前でショーすることなど……たやすいわ!』って了承したらしい」


「あの……だから、法律……っ」


 サユカンもういいよ。


「というわけでコレを参考に考えたんだが、オレたちのクラスの出し物はカカのワンマンショーということでどうだ」


「は?」


 反対は出なかった。


 むしろ皆、大賛成だった。


 ……うそん。




 始まりました、『がんばれカカ』シリーズ。『がんばれタケダ』よりも視聴率を奪えるのか! 

 まぁシリーズ続きませんけど。


 リアルな時期的には卒業式終わってますけど、実はお話的にそれよりちょっと前のお話だったりします。カカラジとかカオスでタイミングがズレました^^;

 べ、別にテンカ先生みたいに忘れてたわけじゃないんだからね!


 とりあえず、去年ほど盛大にではないにしろ、お楽しみ会はやりまーす。


 自業な自得なカカさんは、何するんでしょうねぇ。

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