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カカの天下  作者: ルシカ
715/917

カカの天下715「過去、勝負の時間」

 と、トメでーす……


「じゃじゃっじゃっじゃじゃん!」


 対峙する僕のお姉さんと彼女。


「だだっだっだだん!」


 教室のど真ん中で。


「べんべけべんべんべん!」


 いきなりですが本音を漏らしていいですか?


「にゃんにゃかにゃんにゃんにゃん!」


 勘弁してください!!


「ぺんぺぺけぺんぺけぺんぺけぺんぺけぺんぺけ――」


「そしてうるさいぞカカ!」


「にゃはは」


 場の雰囲気を読んでるんだか読んでないんだか、妙なBGMを口ずさむ妹を一喝する。まぁ全く堪えずにゃーにゃー言ってるけど。や、それはさておき。


「も、もしもーし。姉さん? ユカさん?」


 すっとぼけた挨拶をしてからずーと固まっている二人に、恐る恐る声をかける。


 それが合図になったのか、姉が突然声をあげた!


「勝負だ!」


「何をだ!?」


 僕は光の速さでツッコんだ。すると姉は「うぐ」と押し黙る。やはり大して考えもせずにノリで口にした言葉らしい。


 しかしユカはそう思わなかったのか、固い表情のまま答えた。


「あ、う、受けて立ちます」


 ふっかけた姉自身が「え、なにを?」と聞いてしまうくらいの気迫!?


「あ……あの。それで、おねえさん」


「お義姉さんとかいうなよ……ちょ、ちょっといいじゃないか、えへへ」


 なんの勝負かさっぱりわからんけど姉はもう負けそうだ。


「勝負って、ええと、どっちがよりトメ君のことが好きか、競うんですか?」


「……あぇぃっ!?」


「お姉さんはそんなにトメ君のことが好きなんですか?」


「うぇぃっ!?」


 ……ユカ、そうくるか。


「どっちが好きかという勝負なら」


「ちょ、ちょ! ちょちょっちょっちょっちょっちょちょっちょちょちょちょちべっ!! いだぃ噛んだ……じゃなくて!」 


「その勝負なら、ま、負けま、せん……」


 ユカのこうげき。姉の自尊心にクリティカルヒット。


 ユカのこうげき。僕の羞恥心にクリティカルヒット。


 ユカのこうげき。クラスメイトのヤジ馬根性にクリティカルヒット。


「え……つまり、これって」「二人でトメを取り合ってるのか?」「彼女と実のお姉さんで? うわードロドロ」「ま、まさかあの妹さんも……?」「いや、あれは俺の嫁だ」「誰だおまえ」「消えろおまえ」「死ねおまえ」


 騒ぎ始めるヤジ馬達。そして晒し者の僕たち。


 当事者らしい僕は何一つ言葉を発することができない。だってなんて言ったらいいかわかんないし。ユカが頑張ってくれてるのは嬉しいし姉はわけわかんないしカカは修羅場っぽいBGMを口ずさんでるし、一体どうすればいいのだ!?


「う」


 あ、姉が口を開いた。


「うわああああああああああああああああああん!! ばかああああああああああああ!!」


 この雰囲気に耐えかねた姉は吹っ飛ぶような勢いで窓から外へ逃げた!! だからここ二階――


「おっとカカちゃん忘れてた」


「どうやって戻ってきた!?」


 二階という高さを全く無視してひょっこり同じ窓から帰ってきた姉。こいつ、ホントなんでもありだな。


「カカちゃん肩車おっけー! そいじゃ皆様お騒がせしました、うわあああああああああああああああん!!」


 肩車した妹に「おーよちよち」とか慰められながら、嵐は過ぎ去っていった。


「……や、律儀に叫び直さなくても」


 そんな僕のツッコミもむなしく、教室には呆気にとられた面々が残った。


 いや。


 なぜか、瞳の中に黒い炎を灯した熱血な皆さんが、僕を囲んでいらっしゃる。


「……え、なんだおまえら」


「なんだって、友人Aだよ。見せ付けてくれやがって。おまえは死ね」


「友人Bだが。本当に死んだほうがいいと思うよ」


「友人Cだわ。あんたなんか地獄に落ちればいいのよ」


「友人Dだが。そしたら今度は閻魔様とか死神にモテたりするんじゃないか?」


「友人E的には恐竜が住んでる時代あたりにいけばいいと思うよ。人間一人だけで孤独に過ごしたあげくにティラノに食われてしまえ」


「友人FですけどEさんに質問です。もちろんティラノもオスですよね?」


「おぅいえす。トメの周りにはオスしかいない」


「おぅけい」


「友人Gもおぅけい」


 待て待て待て待てどんだけ出てくるんですか!?


『モテるやつは死ねばいい!!』


 友人H〜Zまで満場一致!?


「あ、あはは……さいなら!!」


 僕は逃げた。


 このまま外へ行こう。授業なんか知らない。日ごろ真面目にしてるから、少しくらいサボったって成績も出席も大丈夫だ。ごめんなユカ、僕は放課後のデートまで身を隠すよ。


 はぁ……大変だ大変だ。


 大変だけど、やばい、顔がニヤける。


 彼女がいるってのは、こんなにもいいもんなのか。可愛い子に想われるのは、こんなにも幸せなもんなのか。


 今なら確実に言える、僕はユカが好きだ。


 この気持ちをきちんと伝えたい。そうだ。ちょうど日ごろの感謝の印を、と思っていたところだし。今から商店街へ何かプレゼントを探しにいこう。


 何が、いいかな?




 勝負、それは少し重い響き。

 とうとうシリアスか? そう思われた方もいるのではないでしょうか。だがしかーし! 実際はなんか増えまくった友人達とユカさんのアレがアレしてコレがコレな話!


 なんだか過去話、結構楽しくてどんどん長くなってる……許してね笑

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