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カカの天下  作者: ルシカ
71/917

カカの天下71「トメって意外と……」

「はぁ!!」


「違う違う。まだまだだなぁカカは」


 ……ども、トメです。


「てや!!」


「だめだめ。気合が足りない」


 なんか、橋の上で傘を振り回している姉妹がいます。非常に認めたくないことではありますが、僕と血を分けている人間と言わざるを得ないことを、ここにお悔やみもうしあげます、かしこ。うん、変な文だ。ちょっと変なやつらを見てたから、変な文を書いてみたかったんだ。


「何してる、妹と姉よ」


「あ、トメ兄」


「よ、弟。いまね、修行中」


「なんの」


「ほら、あそこ見える?」


 姉が指差す向こうには一本の街路樹。そしてその枝には――


「鳥の巣、か」


「そうそう。この橋通るとね、鳥が警戒して攻撃してくるんだよ。おもしろいでしょ?」


「おもしろくねぇよ!」


 目を輝かせる妹カカを叱り飛ばす、が、全く聞いちゃいない。


「その鳥を叩き落そうと、いま頑張ってるとこ」


「うんうん、鳥だって必死なんだからさ、カカちゃんももっと必死に振り回さないと当たらないよ!」


 この姉妹はいったいどこへ向かっているのだろう?


 警察か。はは――


 や、笑えない。烏が人に危害を加えているのかもしれないけど、こんなところを本当に警察に見つかったりしたら!


「おい、そこの君たち」


 うわ、都合よく巡回中の警官登場!


 ツカツカと近づいてくる警官にカカは怯む、が、姉は――


「よう、シュー君」


「げ、お姉様!!」


「知り合い!?」


 しかもお姉様とか言ったぞ。


「姉。おまえ、僕のほかに弟いたのか」


「違う違う。これは弟分」


 あんたどこの組の親分だよ。


「シュー君、なんか用?」


「い、いや……さすがにこんなところで傘を振り回して鳥と格闘するのは、ちょっと公共の場では……」


 おどおどしながら言いにくそうに進言する警官シュー君。しかしニヤリと笑う姉に「ひっ」と情けない悲鳴をあげる。


「ひったくり、八件」


「うぐっ」


「強盗犯、五件」


「ぐっはぁ!」


「誘拐犯、三件」


「……がくっ」


「見逃せ」


「了解」


 なんだこの会話は!!?


「な、なぁ姉。おまえ、なに言ってるんだ?」


「あたしの輝かしい経歴」


「えっ、お姉ってそんなに犯罪やってたの!?」


 カカが「あらまぁ」って感じで両手を口にやって驚く。僕も真似してみる。


「やっぱり」


「やっぱりってなんだ!? 違う! あたしが犯人捕まえた事件の数だ!!」


 あんた本当に何者だよ!?


「……あ、シュー君とやらが何も見なかったことにして去っていく」


「あたしとあいつ、幼なじみでさ。昔からいろいろ頼ってくるんだよ。警察になってからも」


「へー。ま、とにかくだ。いい加減こんなことやめろ。警官は誤魔化せても、近所で変な噂がたったら僕に迷惑かかるんだからな」


「えー。せっかく始めた戦いだよ。ちゃんと決着つけないと女がすたるよ、ってお姉が言ってた」


「廃らせとけ、そんなん」


「トメ……あんたにも勝負の決まりごとを教えただろう?」


「遥か昔にそんなこと聞いたような気もしないでもない。とりあえず勝負始まったら一発かませ、だっけ?」


「そう! あたしらはまだあの鳥に一発も――」


 と、いきなり我ら三人に滑空してくる影。


 噂をすればなんとやら、鳥が襲い掛かってきたのだ。


 カカが傘を振り回す。はずれ。


 姉が腕を振り回す。掠った。


 僕が拳を振り回す。鳥の顔面に直撃。


 鳥はふらふらと橋の下へと落ちていった。


「さて、これでいいだろ? 帰るぞ」


「えと」


「トメ兄……あれ? なに、今なにしたの?」


「鳥殴ったんだよ」


「えと……弟、あんたケンカとかしない人じゃなかったっけ」


「そうだよ」


「なのに、なんでこんなことができるわけ?」


「誰の兄弟やってると思ってるんだ」


「……納得」




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