表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カカの天下  作者: ルシカ
707/917

カカの天下707「だるまなサエちゃん」

 こんにちは、カカです。


 給食も終わってお昼休み、定番の三人で集まってるんですけど……


「ねね、サエちゃん今度のバレンタインだけどさ」


「んー」


「どんな賑やかなことしよっか!」


「やだー」


「またカカすけは変なこと考えてるんでしょっ! でも、まぁ……楽しくなるならいいけどねっ」


「よくないー」


「さ、サエちゃん! とりあえず一緒にチョコ作ろうか?」


「チョコは私と同じで黒いからヤー」


「ほ、ホワイトチョコならいいんじゃないっ!?」


「黒い私に、白いもの作る資格なんてないー」


 ええと、見ての通りです。


 サカイさんに怒られたのがいまだに効いているらしく、どうにもサエちゃんが元気を出してくれないのです。その証拠に私たちの話を聞きながらちまちまと机の上に広げているビーズは『おとなしくしているのー』という字を描いているのです。目に見えて不貞腐れています。


「ね、ねぇサエすけ。なんでそこまで落ち込んでるの? サカイさんに言われたことを守りさえすれば、それで終わりな話じゃないの?」


「そーだけどー」


「なら何がダメなの?」


「あのねー、なんかねー、色々よくわかんなかったんだけどー、わかったことがあってねー」


 その説明こそよくわかんないけど、私とサユカンは静かに聴く。


「なんかねー……私ってー……すごく黒くてー……すごくエロかったんだなーって思うとー……落ち込んじゃってー……」


 な、なるほど。どうやらサカイさんのスパルタ教育は、サエちゃんが自覚していなかったことを見せ付けるものだったらしい。一体ナニをどう喋ったのか想像もつかないけど。


「き、気にすることないわよっ! ほら、君らもよく言うじゃない、わたしのほうがよっぽどエロいって!」


「うん」


「うん」


「慰めようと思って言ったけど少しは否定してよっ!!」


 だって事実だし。そんなことよりサエちゃんだ。


「よし、サユカン。ここはなんとしてでもサエちゃんに元気になってもらわないと」


「あのさ……わたしも今のダブル肯定でちょっと元気なくしてるんだけど……」


「だるまさんが笑った、をしよう」


「ねぇ話聞いてよっ!!」


 聞いてもエロいもんはエロい。


「なにそれー?」


「サエちゃんはただ壁に向かって立って、だるまさんが転んだ、の要領で振り向いてくれるだけでいいから。それで、私たちも、だるまさんが転んだ、の要領で動きを止める。ただし口は動かしてもよし」


「まったくもうカカすけってばいっつもいっつも……他にルールは?」


「私たちが動いたら負け。サエちゃんは笑ったら負け。以上!」


「私なんか笑われるのがお似合いだよー……」


「まぁまぁ、そう言わずにやってみよ」


「動いたら負け、笑ったら負け……要は、だるまさんが転んだ、と、にらめっこをプラスしたようなもんねっ」


 さすがサユカン。普通に頭いい。


「……わかったー」


 動く気力もなくだるそーに壁まで移動するサエちゃん。私とサユカンは二人して適当な距離をとって並ぶ。ん、机が邪魔だな。ほいほい、避けて避けて。


 教室のど真ん中で何やらおっぱじめた私たちに注目が集まる。でも知ったこっちゃないね。


 サエちゃんはおとなしく壁側を向いて、


「だーるまさんが」


 私の言ったとおりに始めた。って前フリなくいきなり!? 私はサユカンに目配せする。その意味はすぐに伝わらなくて、サユカンの顔に焦りが浮かぶ。ええい、仕方ない!


「わーらったー」


 サエちゃんが振り向く。


 私は両手を腰に当てて胸を張り、大威張りなポーズ! サユカンも同じポーズ。そして口だけは動かしていいから、


『ふははははははははは!』


 とりあえず笑った。


「……だーるま」


 サエちゃんは笑わなかった。ええい、サユカンとの打ち合わせができてない。


「さんが」


 ええと、とりあえずサユカンに身体を向ける。サユカンも身体を向けてくる。二人向かいあって、とりあえずダンスでもするかのように抱き合うポーズ!


「わーらっ」


 ええと、次は!


 ……どうしよう。


「た」


 サエちゃんが振り向く。私とサユカンは抱き合ったまま、近距離で目を合わせたまま、


『ふはは』


 とりあえず笑った。何やってんだ私ら。


「……だーるま」


 サエちゃんは笑わなかった。ていうかサエちゃんペース速い! 考える時間がないよぅ……!


「さんが」


 ああもう、どうしよ――お? サユカンが黒板に向かっていった。黒板に指を差して、ああ先生のマネ? なら、えっと!


「わらった」


 サエちゃん振り向いた! 


 サユカンが言った!


「問題ですっ! 織田信長×武田信玄はっ!?」


「びーえる!!」


「正解っ!」


 サユカンないすアドリブッ! ちなみにびーえる、BLってのは男の子同士が仲良くするものだったはず。サカイさんがよく口にしてた。


「……織田信長と武田信玄ってー、敵同士だったと思うんだけどー」


「じゃあ激しいびーえる!!」


「……だーるま」


 あ、壁に向かった。くそぅ、やっぱりこんな適当なネタじゃ笑わないかぁ。でもこうなったら勢いのままに行くしかない!


「さんが、わーらった」


「問題っ! わたし×トメさんはっ!?」


「ネタ」


「正解ー」


「なんでサエすけが答えるのっ!?」


「だーるまさんが」


「ああもうっ! 今度はカカすけが先生役やりなさいよっ!」


「わかった、交代ね」


 とは言っても何も考えてない!


「わーらった」


「先生っ! 今日は何の授業をするんですかっ?」


 もう適当に答える!


「調理実習です!」


「何を作るんですかっ!?」


「トマトです!」


「材料はっ!?」


「トマトです!」


「だーるまさんが、わーらった」


「先生! 次の授業はなんですかっ!?」


「トマトです!」


「だーるまさんが、わーらった」


「先生! 患者の容態はっ!?」


「トマトです!」


「キャー!! 赤いっ!!」


「だーるまさんが、わーらった」


「トマト先生っ!!」


「勝手に名づけるな!」


「だーるまさんが、わーらった」


「先生のお名前はっ!?」


「トマトです!」


「わたしがさっき言ったの合ってるじゃんっ!!」


「だーるまさんが、わーらった」


「サユカンのだるまトマトめ!!」


「はぁっ!? カカすけ先生! わたしはなんと返せばいいのですかっ!?」


「思いのままに!」


「やっぱ君は変だっ!!」


「……ぷ、く、ふ、ふふふ……」


 そんなやりとりを続けているうちに、いつの間にかサエちゃんは笑っていた。何がおもしろかったのかはわからない。ただ必死になっていた私たちを見て、気の毒になって笑ってくれただけかもしれない。


 それでもよかった。その笑顔が戻るなら。


「よかった、元気になったみたいだねサエちゃん」


「うん……ちょっと、元気になったかもー。ありがとう、二人とも」


「よしっ! それじゃ勝負に負けたサエすけにお仕置きねっ!」


「え、そんなのあったっけー?」


 あるよ。今決めた。多分サユカンも同じことを思ってるはず。


『もっと元気になれ! 以上!』


 ほらね、同じだ。


 さぁ、バレンタインに何をするか話し合おう。


 笑って元気になっただるま……じゃなくて、サエちゃんさえいれば、きっと面白い計画が浮かぶよね!!




 だるまの着ぐるみ姿なサエちゃんを想像した人、申し訳ありません。なんかイメージするとめっちゃ可愛いんですが、そうじゃなくて本当すいません……今度書こかな。


 さて、東京から無事に帰ってまいりました。もちっとしたらちゃんと感想返信しますので、少々お待ちを笑

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ