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カカの天下  作者: ルシカ
70/917

カカの天下70「がんばれタケダ、たち」

「ただい……ま?」


 トメです。お仕事で疲れて家に帰ってきたとですたい。


 あんれまーそいだら知らん顔がおるやないけ。


 あ、すいません。なんか驚きのあまり、どこかの方言になってしまいました。


 だって驚いても仕方ないと思う。


 知らない男子が三人も居間に居座っていたら。


 お、一人知ってる顔がいた。


「タケダ君じゃないか」


「お邪魔してます、おにいさ」


「貴様にお兄さんなどと呼ばれる筋合いはない!!」


「ぐぼぁ!!」


 おっと、いけないいけない。我が家の女性陣のごとくヤクザキックをしてしまうところだった。


「うう……ごめんなさい」


 なぜかタケダ君は顔を抑えているけど気のせいだろう。無意識に蹴ってしまったなんてそんな野蛮なことはないぞ、うん。


「で、そこの二人は?」


「僕の弟子です」


「ど、どうもお邪魔してます……」


「は、初めまして。僕は、あの」


「あ、ずるい。あのですね僕の名前は」


 なんだか競い合うように自己紹介された。


 でも覚えるのも面倒なので部下Aと部下Bって覚えておこう。


「で、タケダ君とAとBは何でここにいるんだ?」


「え、あの、お兄さ」


「だからそう呼ぶなと」


「ぐっほぁ!! す、すみません……」


 なぜか顔を抑えている部下Aは放っておいて、タケダ君に説明を求めると……


「私が呼んだの」


 奥の部屋から部屋着に着替えたらしい我が妹、カカがやってきた。


「なんかね、会議するんだって」


「会議って……なんの」


「はいっ、それはですね!」


 意気込み勇んで説明を始める部下B。その話によると、どうやら『小学校の中にあるイジメを防止するにはどうすればいいか』を討論するため、カカの家にお邪魔することになったそうだ。


 なぜカカの家かというと……


「学校で一番強いからです」


 だ、そうだ。すげーなカカ。


「ふぅん……まぁいいや。話し合うならちゃっちゃとやりな」


「トメ兄、なんか不機嫌じゃない?」


「気のせいだ」


 そこの読者、シスコンとか呼ぶなよ?


「じゃ、話し合おうか」


「はい。じゃあまず、今あるイジメをどうするか、ですが!」


「とりあえず全員ぶん殴ってやめさせる」


「…………」


 あれ、終わり?


「じゃ、じゃあ、苛められていた子が、もう苛められないようにするには」


「身体、鍛えさせればいいじゃん」


 しゅーりょー。


「はい、帰った帰った」


「ま、待ってくださいおに――ぐぃはぁ!!」


 ん、今度の悲鳴は僕のせいじゃないぞ。


「よ、なんだか客がいっぱいいるね」


「その客を足蹴にしながら挨拶すんな、姉」


 前触れもなく家に侵入してきた傍若無人は、男子三人を見渡して……不機嫌そうに目を細めた。


 どうやら気づいたらしい。


 まぁ誰にでもわかるだろうが。


 この三人は三人とも、カカ狙いでこの家にきた。議論は単なる口実だ。


「ちょっと聞こえたんだけど、あんたらイジメっ子をどうにかしたいんだって?」


「は、はい」


「じゃあ話は簡単だ。あんたらが強くなってやめさせればいい」


「え、えっと……」


「カカがいつもやってるトレーニングをあんたらもするの。まさか、女子にできることをできない、なんて情けないこと言うつもりはないだろうね?」


『ま、まさか!!』


 三人はハモって即答した。そりゃ好きな女の子の前で情けない姿は見せられないもんな。


「じゃあまず、腕立て10回」


 ほっと胸を撫で下ろす三人。思いのほか簡単で安心したらしい。


「私もやる?」


「カカはいいよ、毎日やってるでしょ」


「うん」


 マジか。


「じゃ、はじめ」


 言われた通り腕立て伏せを10回こなし、三人は姉のほうを見た。


「終わりました、が聞こえない。腕立て10回」


「え、ま、また?」


「腕立て10回!」


 姉の大声にビクリと震え、再び腕立てを始める男子三人。


『終わりました』


「終わりました、の声が小さい。腕立て10回」


『――終りました!!』


「終りましたの声が可愛くない。腕立て10回」


『――終わりました♪』


「きもい。腕立て10回」


 数分後、三人は疲れのせいか気落ちのせいか、肩を落としまくって帰っていった。


「ふん、カカは一生嫁にやんないからね」


 過保護だよなぁ、お互い。


 しかし、もしも嫁じゃなくてサエちゃんの婿だったら……いや、このことは考えるのやめよ。




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