カカの天下7「めくりめぐり」
こんにちわ、カカです。今日はお日柄も困ってますことで。どんなお日柄か? 想像に任せます。
さて実は今、私はお日柄と同じように困ってます。なので頼りにならないまでも一応大人なトメ兄に相談してみました。
「ねえねえ、ちょっと相談してもいいよね」
「なんか妙な日本語だな。まぁいいぞ」
トメは仕事から帰ってきてふにゃふにゃになってます。正確に言うとソファーに抱きつきながらぐったりしてて今にも寝そうです。なので意識があるうちに聞いておこうと思います。
「実はね、小学校で敵ができたの」
「ん? なに、女子のグループで抗争でも起きたのか」
「そんなのはいつものことだから大したことなくて」
「あー、やっぱりあるんだ」
「あのね、とある男子がスカートをめくってくるの。しかも一回や二回じゃなくて毎日、女子とすれ違うたびに」
それを聞いた途端、トメ兄はがばっと起き上がった。
「マジか!? この時代にそんなことするやつがいるなんて……根性あるなぁ」
私には理解できない。なぜスカートをめくるということが根性あることに繋がるんだろう。
不思議そうにしている私に向かってトメ兄は得意そうに言った。
「いいか? 今の時代、どこの場所でも集団での女は強い。小学校となれば身体的にも女のほうが強かったりする。昔は多少なら大丈夫だったが、マセてるガキが多い今の世の中でそんなことをしてみろ。そりゃ学校中の女子から白い目で見られ、さらには総無視、集団いじめされてもおかしくないんだぞ?」
「なのにそんなことするのって、単なる馬鹿じゃないの?」
「いや、だからこそ! それを実行した者は男子からは勇者と讃えられるのだ! しかも小三になってまでそんなことをするなんて、すごすぎる」
そうかなぁ。とりあえず先生が止めに入るまで泣きながら「ごめんなさい」と言われ続けても手を止めずにぶっ叩いてたら、他の男子はその子に近寄らなくなったけどなぁ。
そのことを言うとトメ兄は「そりゃそうだ」と笑った。
「とばっちりが怖いんだよ。その子と仲良くしたら自分も同じ目にあうかもしれないしな」
「それで友達なくしたら、やっぱり単なる馬鹿じゃないの?」
「いや、それでも勇者なんだよ。皆、内心で羨ましがってるはずだ」
「スカートめくりできるのがトメ兄はそんなに羨ましいのか」
「違う違う。その行動力を、だよ」
そうなんだぁ。
トメ兄にそこまで言われるなんて少し羨ましい。
なので翌日、小学校で。
私も勇者になってみることにした。
でも男子にスカートはない……仕方ないね。
すれ違いざまにその子の短パンを思いっきりずり下げてやった。
「!」「!」「!」「!」
周囲の人がすんごくびっくりした顔で固まった。その子もパンツ丸出しで石化する。
「あ、あの。カカちゃん、なにしてるの?」
仲のいい女子の一人が聞いてきた。私は勇者になるとか言うのが恥ずかしかったので適当なことを言ってみた。
「んと、仕返し?」
それを聞いた周りの女子は、なんだかすごく納得した顔をした。
「……で、いままで被害を受けた子は、その子が隙を見せると短パンをずり下げるようになったって?」
「ほとんどの女子が被害にあってたからね。休憩時間であの子が短パンを下ろしてない時間のほうが短かったかも」
「……その子、学校こなくなったろ」
「うん、転校した」
「おまえが総いじめのきっかけつくってどうするよ……」
「私、勇者?」
「や、どっちかというと魔王」
「やった♪」
「いくらおまえの女子仲間が魔物っぽいからってその称号で喜ぶな」
「褒めたたえてよ!」
「よくやった。てい」
痛っ。
「なにするの」
「褒めたたいた」