カカの天下696「こんな大人たち」
サラです。
「もー、カツコさん! いきなり呼んだから何かと思えば……これくらいの荷物なら私がいなくても運べるじゃないですか、片手で」
「えー、だってほら。明らかに重そうなダンボールを片手で五個ずつとか持ったらさすがに目立つじゃん?」
「お客さんの注目集めれば、商売繁盛するじゃないですか」
「花屋じゃなくて見世物小屋になっちゃうよ」
「お花はもともと見るためのものです」
「ええい、本当に口が達者になったなおぬし。口達者……たっしゃ……たっちゃんって呼ぶぞ!」
「はいはい、好きに呼んでください……トメさん大丈夫かなぁ」
「弟君、落ち込んでたねぇ」
「あ! やっぱり私とトメさんが喋ってるの、わかってて呼びましたね!?」
「うぐ、そ、そりは」
「カツコさんのブラコン!!」
「な、な、なにおう! ラーメン奢るからそれだけは言わないでください!!」
妙な敬語で謝ってくるカツコさんを楽しく眺めながら、私は心の中で呟いた。
ご飯とか、飲み会とか、イベントとか。そんなのに、当然とばかりに誘ってくれるカツコさんや、トメさん、カカちゃん。それがどれだけ嬉しいことなのか、あなたたちにはわかっていないんでしょうね。
裏も表もなく、純粋な好意だけで誘ってくれている――それがこんなにわかりやすい人たちが他にいるでしょうか?
トメさん、私が思うあなたの一番いいところは、そんな“誰かのために何かをする”ということを当然のようにできるところです。
当然すぎて、自分では気づいてないみたいですけどね?
テンだ。
「ただいまー! いやぁ、いいことしたぜ」
「おかえりなさい。お邪魔してるわテンカさん……また使った食器を洗わないで出かけたでしょう。せめて水に浸してくださいな」
「あー、つっかれた。やっぱオレって教職に就いてるだけあるよな」
「ほらほら、そんな脱ぎ散らかしていかないで」
「オレって格好いい、大人だぜー」
「まったくもう、一人暮らししてからも母親に世話させて……いつまで経っても子供なんだから」
「……来てくれなんて頼んでねぇけど」
「来なかったら部屋がすごいことになるでしょう」
「……すいません」
なぁ、トメよ。一人で家事できたり生活を維持したり、それができるだけでも大したもんなんだぜ? 少なくともオレにとっては。
「もっときちんとしなさい」
「……おう」
「おうじゃなくて、はい、でしょ?」
「……はい」
教職やってるから、人には偉そうに語ったりもできるが……オレ、それ以外ダメなんだよなぁ……はぁ……
カカです。
えっと、ですね? 私は家で留守番してただけですよ? 何もしてないですよ?
ただ、夜遅くにトメ兄が帰ってきて、「おかえりー」と出迎えただけですよ?
なのに、あの。
「笠原トメ! 25歳、独身です!!」
なんか、さ?
「いま、お水飲んでます!!」
ものすごい状態なんですけど、うちの兄。いかがいたしましょうか。
「笠原トメ! 酔ってます!!」
その通りです。なんかベロンベロンなんです。どうしよコレ。燃えるゴミに持ってっていい?
「趣味は特にありません! 得意なのはツッコミです! あと家事全般できます!」
なんか自己紹介始めたし。
「まぐろ大好きです!!」
知らないよ。知ってるけど。
「笠原トメ! 20歳! 初めて飲んだ酒はまずかった! ていうか苦いよビール!」
なんか時間を逆行してるし。
私、知ってる。ここまで酔っ払ったら、今言ってたことは次の日に覚えてないんだよね、絶対。そして激しい頭痛と共に起きて、首をかしげることになるんだ。何度かお姉が飲みすぎてスイッチ入って潰れたときと同じ感じだもん。
「笠原トメ! 19歳! たばこに憧れました!」
いまだに逆行中。
「笠原トメ! 17歳!! 彼女ができました!」
お、でもこれ昔の話を聞くチャンスかも。
「ねね、彼女ってどんな人だった?」
「隣のクラスの同級生! 地味な黒髪! 地味な三つ編み! 地味なメガネ! 地味な性格! 極めて普通の女の子でした!」
「ほうほう、そうなんだ」
くくく、今のうちにトメ兄の恥ずかしい過去を暴いてやる。
「彼女さんと、どんなことしてたの?」
「カカを子供役にして、ママゴトとかしました!!」
「えええええ!?」
そ、それは初耳なんだけど……ええと、トメ兄が17歳ってことは8年前だから、私が3歳のとき? そりゃ覚えてないか。
「カカも役になりきって、おっぱいー、おっぱいー飲むー、とにじり寄ってきました!」
「ちょ、待っ!」
「そして僕のを吸ってました!!」
「待てやこらああああああああ!!」
耐え切れなくてドガァンと一発回し蹴り! 見事に後頭部へもらったトメ兄は、そのままコテンとくたばりました。
「はぁ……はぁ……ま、まさか私の恥ずかしい過去が明かされるとは思わなかったわ」
「……それ見て……彼女さんは……大爆笑してて……」
「ええい、まだ言うか!」
「……カカも楽しそうでさ……」
「はいはい、とりあえず自分の部屋で寝ようね。よい、しょっと! お、トメ兄を背負えるようになった。筋トレの成果出てるなぁ」
「……あのころは……楽しかった……なぁ……」
やれやれ。普段はおとなしいトメ兄がこんなノリになるなんて。お酒って怖いね。
私は呆れながらトメ兄をベッドまで運んで、布団をかぶせてあげるのだった。おお、私ってば大人っぽい。それに比べてこのでっかい子供は……
でも、トメ兄。
なんで泣いてたんだろ?
トメの過去話はまだか!? との声が多いようですが……
まぁ待ちねぇ。急がば回れ、焦っても損するだけだぜぃ。
感想の返信はまだか!? との声は別に多くありませんが……
まぁごめんなさい。貧乏暇なし、時間と身体に余裕がないんだぜぃ。
とりあえず、過去話は近々明らかにしていくつもりですので一ヶ月ほどお待ちください(なげー
あ、そろそろカカラジですね♪
何かネタ思いついたら遠慮なく送ってくださいね^^