カカの天下692「わーい」
こんばんは、トメです。
今日も今日とて夕飯の時間。せっせと作ってテーブルに並べます。
「ほらカカ、ご飯だぞ」
「わーい、ご飯だご飯だ」
両手をバンザイして喜ぶカカ。うむ、作ったかいがあった。
「ほらカカ、味噌汁だぞ」
「わーい、味噌汁だ味噌汁だ」
「あ、ちょっとトイレ」
「わーい、トイレだトイレだ」
何が始まってるんだか……ふむ。
「カカ。わーいわーい」
「わーい、わーいわーい」
「カカ、青巻紙赤巻紙黄巻紙」
「わーい、赤巻紙青巻紙きまきまき、あかまけまきあみゅっ」
勝った。さーてトイレトイレ……
用を足して戻ってきて、二人そろって「いただきます」だ。
「わーい、とんかつだとんかつだ」
「カカ、それマイブームなのか?」
「わーい、そうだそうだ!」
そうなのか。
「そういえばさ、この間な、姉が」
「わーい、バケモノバケモノ」
「サラさんと」
「わーい、おっぱいおっぱい」
「ボーリングに行ったそうだ」
「わーい、ガーターガーター」
よくガーターばっかりだったってわかったな。ちなみに姉は力の入れすぎ。サラさんは転びすぎだそうだ。
「わーい、おかわりおかわり」
「はいはい」
そんな調子で食事は進み……食べ終わって二人仲良く「ごちそうさま」だ。
「わーい、食器洗い食器洗い」
「おお、やってくれるのか。悪いな」
シーン……
「言ってみただけかよ」
「わーい、だるいだるい」
「まぁいいけど……くそ」
「わーい、クソだクソだ」
「下品な言葉を使うんじゃありません!」
「わーい、大便だ大便だ」
「まったく上品になってません!!」
「わーい、自然の摂理だ不可抗力だ」
「おまえ難しい言葉知ってるね」
仕方ないなぁ……満足して妙なマイブームやめるまで付き合ってやるか。
「はい、質問」
「わーい、質問だ質問だ」
「1+1は?」
「わーい、2だ2だ」
「356×573は?」
「電卓もってこい」
「急に素になるなよ」
「わーい、次だ次だ」
「まったく……じゃあ問題です」
「わーい、カモンカモン」
「カカの父親は、いまどこにいるでしょう?」
「わーい、死んだ死んだ」
「死んでねぇよ!!」
さすがに哀れすぎるぞ父さん……ちなみにテーブルの下にいたりする。カカの答えを聞いて泣きながらシュバッと消えたけど。
「謝っておけ」
「ごめんなさい」
うむ、さすがにひどいことを言った自覚があるのか、素直で結構。聞こえたかどうかは知らんが。
「ふー疲れた」
「お、満足したのか」
「うん。今度はトメ兄がやってみてよ」
「僕がぁ? 嫌だよ、キャラじゃないし」
「可愛い妹の頼みと思って」
「えー……」
「とーめーにー! とーめーにー!」
あー、わかったわかった。言うこと聞くから、僕の腹に頭突きしてそのまま頭をぐりぐり押し付けてくんな。攻撃なんだか懐かれてるんだかよくわからんが。
「でも僕、そんな器用になんでも思いつかないぞ?」
「そこを頑張って!」
あーもう! 懐くなってのに!
まったく……本当に仕方ないなぁ。やれやれ!
言っておくけど、妹に甘えられて張り切ってるわけじゃないからな!
ただな、ここで期待に応えてこそ兄だなとか思っただけで!
とにかく頑張ってみるか!
わーいわーいと、元気よく!
すごく恥ずかしいけど頑張っ――
「あ、サエちゃんと電話するんだった。ごめんねトメ兄。私、部屋に戻ってそのまま寝るわ。おやすみ」
――って、みる、つもり、だったのに。たったったーと自室に戻る気まぐれカカ。
「……わーい、一人だ一人だ」
寂しくなんかないんだからな!!
「やーい、一人だ一人だ」
「クソオヤジてめぇ!! どこだ!?」
「わーい……仲間だ」
「……飲むか?」
「……わーい」
女心と秋の空(冬だけど)に振り回された哀れな親子は、なんとなくしんみりしながら杯を交わすのだった……わーい、酒だ酒だ……
わーい、ほのぼのだまったりだ。
そんなの書こうとしたら、なんか残念な結末に。
……わーい、これもカカ天だ私の気まぐれだ。




