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カカの天下  作者: ルシカ
687/917

カカの天下687「ご注文はお決まりですか」

 こんばんは、トメです。


 カカと雑談しながら歩行中。


「でさ、ブートンって名前はつまんないじゃん?」


「サカイさんちの豚か? そりゃ日本経済だの総理大臣だのに囲まれてりゃ印象薄いけど」


「だから豚野郎に改名したの」


「なんでおまえらのネーミングセンスはそうなんだ?」


「そうなんだと言われてもこうなんだ」


「そうなんだー。あ、見つけたぞ。この店だ」


 今日の夕食は、とある居酒屋さんですませることにしました。それというのも、キリヤが臨時バイトとして入っているというので顔を出してみようと思ったからです。

 

 店に入り、案内してくれた子に「今日入ってるはずのキリヤってバイトの知り合いなんですけど」と言っておき、カカと二人でテーブルに座って間もなく。おしぼりを持ったキリヤが目新しい制服姿で登場した。


「いらっしゃいませ。こちら、おしぼりでございます」


「ジュースは?」


「搾ります」


「気にいらないヤツは?」


「絞ります」


「おっぱいは?」


「しぼりたいです」


「でもやがて」


「しぼみます」


「お腹あたりのココが気になる」


「脂肪です」


「トメ兄は」


「死亡です」


 店は変わっても相変わらずのやり取りを『しぼ』という言葉縛りで始めるカカキリヤ。ツッコミどころは多いが、僕も一つに『絞って』言わせてもらおう。


「勝手に殺すな」


『しょぼーん』


「仲良いなオイ」


 ちょっとヤケるぜ。


「でも自重しろよ。臨時で入ったのにこんな愉快なことしてたら、キリヤの立場が危うくなるかもしれないだろ」


「だってメニューも店の名前もおもしろくないんだもん。私たちがおもしろくなるしかないじゃん」


「カカちゃん、同感です」


「同感なのかよ」


 本人がいいならいいけどさ。


「ともかくようこそいらっしゃいました。ご注文がお決まりになりましたら、そちらのボタンでお呼びください。失礼致します」


 店員モードになりつつウインクなんかしてくれたキリヤはそそくさと仕事へ戻っていった。


「さて、何を食べようかね」


「飲み物は?」


「僕は生ビール」


「ビールといえばお姉だよね!」


「……まぁ、そうだな」


 なんだ急に。


「カカは?」


「私はジンジャエール。あ、神社といえば巫女姿のサラさん可愛かったね」


「少なくともテンの十倍は似合ってたな」


「うんうん、神社はサラさん」


 なんか変な言い方だな。


「あと何を食べようか」


「じゃ、これと、これと……わ、居酒屋にホットドッグなんかある」


「ハンバーグも珍しいな。お食事のお客も目当てなのかね。あ。これいいかも」


 二人であーだこーだとメニューを指差しながら決めて、ボタンをぷっしゅ。


「はい、お伺い致します」


 他の店員が気を使ってくれたのか、ちゃんと来てくれたキリヤ。


「えっとな」


「私! 私が言う!」


「はいはいお好きにどうぞ」


 わざわざ言いたがるなんて子供かよ。


 ……子供だったな、そういえば。


「んとね、んとね」


 まずは生ビールと、


「ナマ姉と」


 ジンジャエール。


「サラエール」


 ……ああ、なるほど。なんかしきりに頷いてたのはこの布石だったのか。しかし嫌だなナマ姉。そりゃ姉はいつだってナマモノだけど、なぜか汚いナマ足みたいな印象が浮かんでしまう。あとサラエールって薬みたいだな。もしくは外国人が人さらいの時に「オゥ、コノ子サラエール! ヒャッフゥ」とか言ってるみたい……これは強引か。


「あとね、日本経済のソテー」


 牛肉のソテーね。


「それと、官房長官ハンバーグ」


 こねこねハンバーグ……こねこ、子猫ね。


「さらに、あったかいラスカル」


 ホットドッグな。


「こんくらいで」


「かしこまりました」


 さすがキリヤ、かしこまりやがった。


「オーダー入ります!! ナマ姉、サラエール、日本経済のソテー、官房長官ハンバーグ、あったかいラスカル、オールワンです!」


 しかもそのまま厨房に言いやがった!!


「ナマの、お姉さん?」


「さらえ? 誰を?」


「官房長官どこだ」


「日本経済を……ソテーするのか? 何様?」


「官房長官どこだよ」


「ラスカル……あったかいって、生きたラスカルを出せってこと? ていうかラスカルって」


「官房長官どこっ!?」


 そして困惑する店員さんたちの顔といったら! 僕とカカは口を必死で押さえつつ、静かに大爆笑していた。


「――お待たせしました、ナマ姉とサラエールです。あと、申し訳ありません。官房長官の在庫が無いそうなので、キャンセルという形でお願いしてもよろしいでしょうか」


 僕とカカの笑いは止まらなかった。しかしその勢いで僕は一気にビールを飲み干し、気になっていたオリジナルカクテルを注文した。


 カクテルの名前は、ネコの踊り。


「総理大臣の踊りを一つお願いしまーす!!」


『無理!!』


 奥から聞こえてくる無駄にでかいキリヤの声。仕事中だというのに期待に応えまくってくれるキリヤの姿に、僕とカカはいつまでも笑っているのだった。




 おまけ。


 サカイ宅にて。


「もしもしー? あらあらキリヤ君?」


「あ、もしもし。お願いがあるんです。実は食材が不足していまして……官房長官、余ってませんか?」


「あははーくたばれ」


 もちろん冗談である。




 成人の日! というわけで成人された方々おめでとうございます!!

 え、話の内容が成人の日とまったく関係ないって?

 いーじゃん別に。


 ともかくおめでとう!!

 

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