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カカの天下  作者: ルシカ
683/917

カカの天下683「がんばれ代表、タケダじゃないよ」

 おはようございます、カカです。


 短かった冬休みも終わり、新学期が始まります。そんなわけで久々に登校してきたわけですが、まずあるのは始業式。体育館に生徒全員が集まり、生徒代表さんが司会進行を務めます。


『起立!』


 マイクで増量されたその代表さんの声で、ダラダラと体育座りしていた私たち生徒は一斉に立ち上がります。


『気をつけろ!』


 『ろ』はいらない。


『マッチ一本、火事の元』


 続けなくていい。


「火のーよーじん!!」


 誰だノッた生徒は。うらやましい、私も混ぜろ。


『礼!!』


 ペコリ。ちっ、そんな暇ないか。


『ちゃくちぇき!』


 あ、かんだ。


 色々と「子供のやることですのでお許しください」的な一礼から始まった始業式、お次は?


『教頭先生からのデストロイです』


 お話って意味ね。


 ステージに上がるデストロイヤー教頭。久々に見るけど、やっぱり渋い。


 ナイスミドルな教頭は、ダンディな声で静かにこう言った。


『あけおめ』


 まさかこの人が略して言うとは思わなかった。意外と若くてお茶目な一面を見てしまい、そのギャップに私たちは沈黙せざるをえない。


『ことよろ』


 ええい、まだ言うか!


『以上!』


 えええ!? もうちょっと何か言おうよ!


 誰もが矛盾しつつも私と同じことを思ったに違いない。しかしそんな想いを込めた視線もなんのその、教頭はやりきった顔でステージを下りていく。さすがはデストロイヤー、新年からなんとなく見えない何かを壊していった。そそるぜ。


『生徒代表の言葉』


 ん、それいけ代表さん。


 …………


 しーん……


『生徒代表さん?』


 ……えっと?


『って、あたしか!?』


 そうですよん。司会進行に没頭してて忘れてたのか。


『え、えっと……がんばろうぜ!!』


 おっけー。あんた粋なヤツだな。応援するよ。


『え、えぇと、次は表彰!』


 冬休み中、功績を残した生徒たちを称えます。


 略。


『続きまして、校長先生からお言葉をいただきます』


 お、今回はいるのね校長先生。


 小柄な可愛いおばあさんがゆっくりとステージに上がっていく。目を皿のようにしてその様子に注目する私たち。


「呼んだ?」


 呼んでないよサラさん。だから今のは幻聴です。


 こほん、ともかく小柄なおばあさんはマイクを取って、言いました。


『ここはどこかのう?』


『校長じゃないのかよ!?』


 なぜか素晴らしいタイミングで体育館に迷い込んだ一般のおばあちゃんは、たまたま手が空いていた事務員のゆーたさんに家まで送ってもらうことになったそうな。


「すまんのぅ……」


「はっはっは! 女性に尽くすことこそ男の悦び! ささ、手を。足元に気をつけてください」


 言い方はともかく、やってることは普通にえらいよねこの人。


 さて、本物の校長さんは?


『ええと、てっきりあの方が校長だと思っていたのですが、本物の校長はまた海外に行っていて不在だそうです』


 気づこうよ。


『同じおばあちゃんだからてっきり』


 外人さんは全部おんなじ顔に見える、みたいな理屈はやめなさい。


 えーと、その後は校歌を斉唱しました。『降下、戦死』とか言ってた気もするけど、いい加減にだるくなってきた私たち生徒はスルーしました。


 そして、最後。 


『きりっ』


 キリッとしてどうする。


『気をつけて』


 『て』はいらないってば。


『また明日』


 だから変な風に続けるなっての。


『失礼』 


 それ謝ってるの? 『礼』を『失礼』と間違ったの? どっち。


『ちゃくちぇき!』


 や、だから誰も礼してないんだってば。どっちかわからないから。


『ごめんなさい』


 え、あ、うん。ええと、頑張ったよね、拍手拍手。


 パチパチパチパチ――なぜか予定になかった拍手をもって、式は終了した。




「――こんな始業式だったんだよ、トメ兄」


「おまえらはいつも楽しそうだなぁ」


 以上、始業式の模様をトメ兄のツッコミ力も借りてお送りしました。今学期もよろしくお願いします。




 がんばれタケダっぽいサブタイトルですが微塵もヤツは出てきません。

 今、彼がどうしてるか?

 知りませんよそんな些末事。

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