カカの天下682「不思議な繋がり?」
こんにちは、サエです。
突然ですが、これは夢です。初夢というやつでしょうか。そんなわけで何の説明も理由も道理も前触れもなく、空からお年玉が降ってきました。
『あなたが落とした玉は、この金の玉ですか? それともこの銀の玉ですか?』
どこからともなく聞こえてくる声が言うには、どうやら落とし玉のようで。目の前には二つのおっきな玉が並びました。
「えっとー」
わたしは何も落としてないんだけど、とりあえず選べばいいのかな?
「どっちにしようかなー」
うろうろと迷っていた、そのとき!
「こっちにしなさい、サエ!!」
いきなり金の玉の上半分が砕け散り、まるで卵から生まれたひよこのごとく現れたのはお養母さん――わかりやすく説明すると、前までお世話になっていた叔母さん。
「いいえ、こっちよー!」
続いて同じように銀の卵から生まれたでっかいひよこは、現在進行形で私と暮らしているお母さん。
二つのお年玉――落とし玉の中身は、お母さんとおばさんだった。がっかり。
あ、いやっ、別に二人が嫌いなわけじゃないですよ? でもお年玉っていったらもっと……ねぇ?
「あらあらあらー、そこの人はなんで金の玉に入ってるのかしらー? 略してほしい? 略して言ってほしい?」
「あははうふふ? 何を下品なことを言ってるのかしら銀の人? 英語で言うとシルバーの人? シルバーつまりは高齢者、あらあらお似合いじゃないですかー。お、ば、あ、ちゃ、ん」
「私より遥かに年上の人に言われたくないわー」
「肌年齢はあなたより下だと思うわよ? そんなにシワシワじゃないし。のびのびなのは声だけで残念ね」
「ふふふー、あなたの寿命もちゃんとこれ以上のびるといいわねー? 突然終わっちゃったりしなければいいわねー」
寒い……どうしてこの二人が会話するだけでこんなにも寒いのでしょうか。
「それで、サエ?」
「どちらを選ぶのー? そっちの金玉じゃないよねー」
「あ、言った、言っちゃった!! サエ? まさかそっちの下品なシルババァを選んだりしないわよねー? あら、シルバーとババァが混ざっちゃったー、おっかしー」
「汁ババァに言われてしまいましたー。何の汁か? ふふ、キモチワルイ汁とだけ言っておきま――」
「えいっ!!」
とりあえず落とし玉、ということなのでー。
二つとも崖に落としました。いきなり崖が現れたのは、夢だからです。なんで落としたかというと……怖かったので、つい。
「――という夢を見たのよっ」
「サユカちゃんが?」
「ええ、なぜかわたしがっ!」
ミステリーだ。あ、ども。バトンタッチしてカカです。いまだ冬休み中、我が家に集まってコタツで歓談しているとこです。今の話題はサユカンの初夢。
ちなみに今の夢話のナレーションは、夢の中でサエちゃんになっていたサユカンでした。微妙な違い、わかった?
「わたし、サエすけのお家事情にそこまで詳しくないはずなのに……ここまでシンクロした夢見るなんて、わたしすごくないっ!?」
「あ、でもねー。私も初夢、カカちゃんになりきってる夢だったんだよー」
「なんですと!?」
それは聞き捨てならねぇなぁ!!
「どんなどんな?」
「えっとねー」
『バナナ』
『バナーナ』
『ばにゃにゃ』
『バニャーヌァ!!』
「ひたすらバナナって叫んでたー」
「カカすけっぽい」
そうなのか。
そうなのか?
そうかも。
「んー、この流れだとー」
「カカすけっ! 君はわたしの夢を見たでしょっ!?」
「サバの夢見た」
『なんでさっ!?』
そんなこと言われても。
「この流れなら三人が三人の夢見てー」
「不思議な繋がりを再確認するところでしょうっ」
つくづくそんなこと言われても。
――そして夕飯の時間。
「……こいつか」
「ん、どしたカカ」
テーブルに並んだ今夜のメニューを睨みつける。
サバ。今年の初夢を『交換』した(かもしれない)相手。
じゃあ、このサバはサユカンの夢を見たのか。
「おまえも私たちの仲間だったんだね?」
「なんで焼きサバに話しかけてるんだおまえは」
初夢のお話です。
ちょっとおもしろい初夢のリクエストもいただいたんですが、いざ書いたら長くなりそうなんでまたの機会に……
さてさて、そろそろ冬休みも終わる頃。
正月も終わる頃。
やばい……正月っぽいこと初詣しかしてない!!
とりあえず餅を食べようと思います。
あ、カカたちに餅食わせてない!!
サバじゃなくて餅にすればよかった。
餅になった夢……そそられるZE!!