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カカの天下  作者: ルシカ
677/917

カカの天下677「今年もおみくじ」

 こんにちは、トメです。


 年も無事に明けた翌日、僕らは家族で初詣へ行くことになりました。残念ながらすっぽんぽんではありません。


「んむぅ……」


 僕らと一緒に年を越すために頑張って夜更かししたカカは、ものすごく眠そうだ。思えば昨日のすっぽんぽんハイテンションは眠気がピークで頭がイッてたせいかもしれない。


「……はっ!」


「起きたか、カカ」


「ここはどこ!?」


「神社の前だ」


「私のこの格好は!?」


「晴れ着だよ」


 母さんが半分寝てるカカを器用に操りながら着せたのは、去年用意した青地に蝶柄の着物だ。見るのは一年ぶりだがやはり可愛らしい。ちゃんと髪も結い上げてるし。


「くぁ」


 着ている本人は大口開けて欠伸しているが、それでも可愛らしい。


「ふふ。去年は獅子舞だったけど、今年は皆でお参りできるから嬉しいわ」


「あれ、でもお母さんは着物じゃないんだ。残念」


「あっはっは! カカちゃん? この母が着物でおめかしなんかしたら一瞬で男どもに囲まれちゃうよ」


 姉の言うとおりだ。僕らの母さんは有名人、オーラを消さなければ一般の人に正体がバレてしまうのだ。


「それでセーターにジーパンなんてラフな格好してるんだね、それも似合うけど」


「ふふ、ありがと♪ でもカッ君が着ないのはなんで?」


「あたしゃどうせ似合わないもんよ」


 確かに。


「そっかぁ。じゃあトメ君が着ないのはなんで?」


「や、僕、男だし」


「えぇー」


「えぇーって言われても」


「ちゃんと用意したのに」


「だからそれ女物だろ!? 嫌だぞ去年みたいに見世物になるのは!」


 蘇る悪夢……あのときは化粧までされてたっけ。あんなのはもう御免だ。


「ふふ、いざとなったらパパ君にお願いするから気をつけてね」


「そのパパ君はどこだよ」


「え? すぐ隣にいるじゃない」


 すぐ、隣? 隣っていうか周りには一般の参拝者がたくさんいるけど……まさかこのうちの誰かに化けてるのか!? わからない、何がわからないってそうまでして顔を隠す理由がわからん。


「変に意地になってるだけだと思うよん」


「……姉、人の心を読むな」


 でもそれが正しい気がしてきた――お、人の列が見えてきた。並ぼう並ぼう。


「サエちゃんとサユカンは?」


「連絡しといたよ。もうお参り済ませておみくじ売ってるとこで待ってるとさ」


「むむ! 私を置いて先にやるとは友達がいのない!」


「おまえが時間になっても起きないから待ち合わせ時間に遅れたんだろ」


 そんな雑談をしているうちに、あっという間にお賽銭箱の前にたどり着いた。ご縁があるように五円放り込み、ガラガラとでっかい鈴を鳴らす。そして二礼二拍一礼。


 えーと、今年も病気とか事故なく無事に過ごせますように……あと、


「すっぽんぽーん!!」


 隣でこんなん叫びながらナニを祈ってるのかさっぱりわからないカカが、色々な意味で無事に今年を過ごせますように。


 よし。


「ぽんぽぽーん!!」


「ほら行くぞ」


 ひたすらぽんぽん念じているカカの首根っこを掴んで引きずり出す。おお、髪を結い上げてるおかげで掴みやすい。


「ああ、待って、まだぽんぽん終わってない!」


「いいから来い」


 周りの人に迷惑だ、色んな意味で。


「ぽんぽこおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


「いつの間にタヌキになったんだ」


 周りの注目を浴びても恥ずかしくないのは、こういうのにすっかり慣れてしまったからかなぁ。うぅむ。あれ、姉と母さんは――いた、あんなとこで甘酒飲んでる。僕も後で行こう。


「あ、サエちゃん! サユカン!」


 泣いたカラスがもう笑った――いや、鳴いてたタヌキがもう笑っただな、これは。


「あけましておめでとう!!」


「おめでとー」


「今年もよろしくしてやるわっ! ねね、年賀状見た?」


 きゃいきゃいはしゃぐ三人娘。二人とも去年母さんにもらった晴れ着姿で見目麗しいが、それにしても年明けから子供は元気じゃのう……っと、今年は僕も元気にいくんだった。


「二人とも、あけましておめでとう!!」


「あ、トメお兄さん。おめでとうですー」


「お、おめでとうございますっ! 今年こそよろしくお願いしますっ」


 サユカちゃん? 『こそ』ってどういう意味かな? や、ツッコまないほうがよさそうな気がする。


「二人ともおみくじは引いたのか?」


「はいっ!」


「でも内緒ですよー、お二人が引いてから教えますー」


 よしよし、それじゃー売り場へ……


「あ、トメさーん、カカちゃーん! あけましておめでとうございます!」


「お、ミコさんだ」


「サラです!!」


 巫女姿のサラさんね。


「今年こそサラです! よろしく!」


 心配しなくても去年もちゃんとサラだったよ。大体は。


「今年もこのバイトやってたんだな」


「はい、短期だからやっておこうかと思いまして。おみくじですか?」


「うんうん! トメ兄、私から引くね!」


「はいはい」


 勢いよくおみくじ箱に手を突っ込み、豪快にほじくり回したカカが掴んだ、そのおみくじ内容とは――


「やった! 大吉!! じゃない!!」


「じゃないのかよ」


 だったらなんだ?


「んとね、『太吉』だ」


 あい?


「それ、ゴミがついててそう読めるだけじゃ?」


「や、これでいいみたい。太い一年になりますって書いてあるもん」


 そういえばこの神社って……まさか今年もヤツが書いたのか?


「サエちゃんたちに見せてこよーっと!!」


 晴れ着のまま器用にたったか走っていくカカを見送りながら、


「ああ……なんだか急に引きたくなくなってきた」


「次はトメさんですね、どんどんどうぞ!」


「わ、サラさん!?」


 無理やり引っ張られてそのままおみくじ箱に突入してしまった僕の右手。こうなったら仕方ない、と直感でおみくじを引いた。これに決めた!!


「どうだ!!」


 いざ、オープン!


「やった! 大凶! じゃない!?」


 今年も大凶かと思いきや、


「これ……『大区』だ」


 え、なに。書き間違い? や、でもカカのも内容はちゃんとしてたし、開けばちゃんとした文章が――


「えっと『漢字まちがえちった♪』って、ならいれるなよ!!」


 叫びながら地面にスカおみくじを叩きつけた僕は、これを書いたヤツを脳内で殴りながらサラさんにお金を渡した。


「もう一回」


「あら、いいんですか」


「当たり前だ。今年最初の大事な行事を『漢字まちがえちった♪』の一言で終わらせてたまるか」


 これでどうだ!


「えーと、『おまえはもうダメだ』って吉とか凶とかどこいったの!? ケンカ売ってんのか!」


「あははは! トメさんてば今年もおもしろいですね!」


 笑い事じゃないよサラさん。神様にケンカ売られてるとしか思えない……


「あははは――あら、どうしました?」


 笑っていたサラさんのところへ、同業者っぽい巫女姿の人が。


「あの、ここに置いといた宴会用のヘンテコおみくじ箱知りません?」


「あ」


 それ、もしかしなくても……


「予備の箱と間違えて使っちゃいました!!」


「あんたのせいかぁ!!」


「あぅ!! ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」


 僕と巫女さんに平謝りするサラさん。今年初ドジだったな。


「えーとえーと、あ! 本物の予備は便所にありました!!」

 

 なぜだ。まさかおみくじで拭くのか。勘弁してくれ。


 あ、ちなみに改めて僕が引いたおみくじはというと――


 大凶だった。やっぱ僕にケンカ売ってるだろ神様。




 さりげなく続きます。


 ちなみに私は末吉でした。


 待ち人:まだ来ない


 来いよ!!


 あ、失礼しました(悲

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