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カカの天下  作者: ルシカ
674/917

カカの天下674「今年最後の詰め合わせ あと」

 アヤです。もう年末です。


「ねぇニッシー。大晦日、どうする?」


「今年最後の夕日が沈むのを見る!」


 さすがは無意味に西にこだわる男ね! 意味がわからない? ほら、夕日って西に沈むでしょ。


「じゃ、じゃあ私も一緒に見るわ!」


「いいの? アヤ坊。つまらないよ」


「いいのよ!」


「すごくつまらないよ?」


「いいのよ!」


「なんで自分はこんなことしてるんだろうって人生の意味まで考えちゃうよ?」


「それをやろうって意気込んでるあんたは何なのよ!?」


「僕は死ぬほど楽しいし嬉しいし興奮する」


「そ、そう」


 いまだにニッシーのこういうところ、わかんないのよねぇ……


「アヤ坊、行く?」


「……行くわ」


 いつかわかる日が来るかしら?


 ――アヤが今年、手に入れたもの。 


 ちょっとだけ素直な心。


 ――ニシカワが今年、手に入れたもの。


 西。




 シェーです、じゃなかったシューです。もう年末です。


 クリスマスの夜、漫画喫茶で寝ていたら……なぜかゴミ収集車に運ばれました。ゴミと勘違いされたらしいです。なぜだ。


 気がついたら遠いゴミ捨て場に放り込まれそうになったので、ぎりぎり脱出。


 ゴミに成りすまして転々とゴミ収集車を乗り継いで――なんか途中で腕が一本生えた妙なゴミ袋も見かけたけど――なんとか我が家に帰宅。


「おお、タマ様! お久しゅうございます!」


「くちゃい」


 ですよねー。


 ――シューが今年、手に入れたもの。


 ネタ。


 ――タマが今年、手に入れたもの。


 強さ。




 テンカです。もう年末です。


「あれ、母さん、どした」


「テンカさん……これ、どういうことかしら?」


「こ、これは!?」


 オレがユイナさんにハグされている写真!?


「な、なぜこれを!?」


「郵便受けに入っていたのです」


 サエか! あんにゃろ、浮気相手の嫌がらせじゃねぇんだからよ!!


「これは一体どういうことなのです!? ゆ、ゆゆ、結乃様と、こんな」


「まぁ落ち着け! 説明する!」


 あのおとなしい母さんがこんな剣幕になるとは……よほど好きなんだな、結乃さん、もといユイナさんのこと。オレもだけど。


「――というわけだ」


 お見合いのときのトメのことから生徒のカカのこと、やつらの母親だということを説明しきると、


「結婚しなさい」


「は?」


「結婚しなさい! そのトメという人と! 今すぐ! そうすればわたしと結乃様は――」


「あんたそれでも母親か!?」


「子の幸せを考えるのが母親……テンカさんも、結乃様がお養母さんになれば幸せでしょう?」


「そ、それはまぁ」


「そして親類になれるわたしも幸せ。みんな幸せで言うことなし!」


「いやいやいやいや! なんか色々間違ってるから!!」


「わたし、もう絶対にテンカさんにお見合い話なんか持ってきませんからね!」


「そ、それはありがたいが!」


 お、おとなしいはずの母さんが……強ぇ。ファン根性ってすげぇ。


 ――テンカが今年、手に入れたもの。


 自由。

 



 サユカです。もう年末です。


「あらサユカ。いつもの人たちのところへ行かなくていいの?」


「クリスマスは向こうで過ごしちゃったし、正月くらいはっ」


 たまには家族孝行しないとねっ。


「いいんだぞ? 無理せずに、家族より男をとっても」


「べ、別にそういうことじゃっ!」


「ああ、サユカも大人になったのね! 年越しそばじゃなくてお赤飯のほうがいいかしら!」


「ちょっと、変なこと言わないでよっ!」


「はっはっは、僕はハンバーグが食べたい」


「あんたは変なこと言いすぎ! 空気読みなさいよっ!! おそばか赤飯って言ってるのになんでいきなりハンバーグが出てくるのよ!?」


「僕、肉好き」


「そういうことじゃなくてっ!」


「あなた、ステキ」


「どこがっ!?」


「ステーキもいいな」


「あんたは話を聞きなさいっ」


「おやおや、気がつけばサユカに『あんた』呼ばわりされてるよ」


「まぁ、ダメよサユカ。この人を『あなた』とか『あんた』って呼んでいいのはわたしだけ」


「モテる男は辛いなぁ。チャーハン食べたい」


「あなた、さっき食べたでしょ」


「そうだった、はっはっは!」


 ああ……どこからツッコめばいいんだろう……教えてトメさん師匠。


「うちの親子はいつの間にこんな風になったのかしら……前は普通だったのに、カカすけたちに目を向けてる隙にいつの間にか、こんな」


「だってサユカ、いつの間にかツッコミになってるんだもの」


「だからボケボケカップルと呼ばれたあの頃を思い出したのさ!」


「わたしのせいかああああああっ!?」


 ――サユカが今年、手に入れたもの。


 ツッコミ力。


「――と、いうわけなんですけど。トメさんならこういうときってどうツッコみますか?」


『いきなり電話をかけてきたかと思えば……ツッコミ指南か?』


「教えてください、ししょーっ!」


『僕ならこう言う――いいからさっさと作れ』


「なるほど!」


 そして、好きな人に電話をかけられるほどの小さな勇気。




 サエです。もう年末です。


「ねーお母さん。カカちゃんに聞いたんだけど、前は年末にそばパーティしてたんだって?」


「そーそー、本家から離れたとはいえ懇意にしてくれた人は結構いたからねー。その人たちを集めて、一月一日になった瞬間にそばをすすったりしてたわー。懐かしいわー」


「もうしないの?」


「あのときは皆ともまだ仲良かったんだけど……いつの間にか用事があったり私が呼んだりしない限りは、私に近寄らなくなっちゃったんだよねー」


 日ごろの行いだねー。


「だからサエは近寄ってー」


「はいはい」


「もっとー」


「はいはい。これで寂しくない?」


「うん、ぜーんぜん」


「じゃあ今年は二人でおそば食べようね」


「うんうん、いっせーのーで、で食べるよー」


「はいはい」


「フライングはなしよー」


「はいはい」


 ――サエが今年、手に入れたもの。


 幸せ。


「すりすりすりすりすり」


「お母さん、そんなに頬を擦りつけたら肌むしれるよ」


 ちょっとウザいくらいの幸せ。




 トメです。もう年末です。


「今年の終わりを家族で過ごすって、いいもんだな……」


「トメ兄、縁側に座ってお茶をすするおじいちゃんみたいだよ?」


「あはは! それ似合ってるよ弟君!」


「ふふ、実はママより年上だったりして♪」


 それだけは無い、とか言ったら怒られそうだな。事実なのに。


「でもトメ兄の言うこともわかるよ。家族全員でこんなに一緒に居られるの、今までなかったもんね」


「父さんがいないけど?」


「あら、パパ君なら天井裏にいるよ?」


「だね。三時間前から」


「……母さん、姉。どうやってわかるんだそんなもん」


「愛の力♪」


「気配」


 どっちもわからん。


「しかし、家族がそろって何よりもいいのは――」


「にゃ? なにさトメ兄」


「カカが変なことをあまりしないことだな。母さんの前だからか、おとなしくて助かる」


 む、カカさんや。なぜにギクッとなった?


「おい、まさか母さんのいないときに、また変なことを」


「してないしてない! ねぇお姉?」


「んー……? あー……」


 何か思い出している姉。


「あれ別に変じゃないよねぇ」


「だよね!」


「うん、大丈夫大丈夫、普通普通」


 そうか、ならいいけど……とてつもなく変な部類に属する姉の判断基準じゃ信用ならんが。


「ほらほら、そんなことより! もうすぐ今年も終わるんだからさ、平和に行こうよ」


「それもそうだな」


 色々あった今年が、終わる。


 無事に。


 皆で。


 笑顔で。


「なぁ、カカ」


「ん」


「今年、何が一番楽しかった?」


 聞かれたら誰もが悩むであろう質問に――カカは即答した。


「全部!!」


 うん、今年は良い年だった。


 思い返せばどれもこれも楽しかった。


 そして、そう思えることが嬉しかった。


 この想いこそ、僕らが今年手に入れた何よりのものだろう。


 さぁ、残り少ない今年を満喫しよう。すぐに来年がやってくる。


 それを笑顔で迎えうつために、全ての人々にこの言葉を送る。


 よいお年を。




 今年最後のカカ天本編が終わりとなりました。


 そして明日。今年最後のカカラジです。

 

 何時に投稿できるかわかりませんので、念のため先にカカたちと一緒に言っておきます。


 よいお年を^^

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