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カカの天下  作者: ルシカ
673/917

カカの天下673「今年最後の詰め合わせ まえ」

 サラです。もう年末です。


 ちょっとお休みをもらって家でゆっくりしていたら、すでに仕事納めを終えて自由の身となったお父さんがおずおずと話しかけてきました。


「さ、サラ?」


「あらお父さん。どしたの?」


「年末はどうするつもりだもしよかったら家族みんなで食事とかどうだろうたまには高い店でも予約して贅沢するのも悪くないのでは――」


「バイトです」


 恥ずかしいのか緊張しているのか早口でまくし立てるお父さんを一刀両断。カツコさんと仲良くなってから口撃力は上がる一方だ。


「……お父さん、勇気、出したのに」


「はいはい、弟ちゃんと妹ちゃんがいるでしょ」


「そ、そのバイト先に行くからな!」


「はいはい、神社で巫女さんやってるからどうぞ。お守りとおみくじは絶対買ってね」


 やれやれ。不器用ながらも頑張ってるのがわかって、ちょっと可愛いじゃないの。


「よーし、お父さん安産祈願の買っちゃうぞー」


「なんでよ!?」


「もうすぐいるんだろ?」


「ちょ、え、ちょ!!」


 ――サラが今年、手に入れたもの。


 家族の絆。




 キリヤです。もう年末です。


 主にファミレス勤務、ヘルプで居酒屋『病院』をかけ持ちバイトしている私は、この時期になると忙殺されて死にそうになります。クリスマスはディナーコース中心の店に客を盗られるので暇でしたが、年末となるとそうは行きません。


「キリヤ君、おつかれ」


「はっはっは! 院長店長もお疲れっしゅ!」


「キリヤ君が噛むとはね。相当疲れてるんでしょう」


「はっはっは!」


 ヤケになって笑っていますが、この時期に昼のファミレス、夜の居酒屋なんてバイトをしていると、それはそれはバカげた仕事量になるのです。しかもバイトリーダーなどやっていると……正直、倒れそうです。


「あと少しです、今年も乗り切りましゅよ私は」


「噛んでる噛んでる。コホン、それなんですがねキリヤ君」


「なんでしょうか」


「三十一日は休みにしようと思うんです」


「なんでしゅと!?」


 実はトウジ店長にも「疲れたろ? たまにゃ休め」という言葉と共に三十一日はお休みをいただいていたのですが……つまりは大晦日、完全フリーということに。


「しかし院長店長、今年は年中無休で営業すると言っていませんでしたか? 私は構いませんよ、バイト先で年を越すのはいつものことなので」


「ああ、そうじゃないんです」


 院長店長は遠い目をして言いました。


「もうすぐ今年も終わり……忙しさを実感しながら、ふと気づいたんですよ」


「ほう」


「『病院』が年中無休って、縁起が悪くないですか?」


「…………」


 その通りです。


「縁起が悪いのヤなので、最後くらいお休みにしましょう」


「そ、そうっしゅか」


 となると、大晦日はお休みですかぁ。


 どうましょう。フリーターになってから大晦日が空いたことなど無いので、過ごし方がわかりません。


 ――キリヤが今年、手に入れたもの。


 休日。


「仕方ありませんね、トメ君にでも連絡してみましょう」


 そして、休日を共に過ごせる友人。




 タケダです。もう年末です。


「ゲホゲホゲホゲホ!!」


 ――タケダが今年、手に入れたもの。


 風邪。




 イチョウです、もう年末です。


 風邪を引いたタケダさんをお見舞いに行きたいとインドさんにお願いされましたので、ご一緒しているところです。ただいまタケダさんちへ向かって移動中です。


「インドさんは年末をどうやって過ごされるのですか?」


「カレー」


「え、ええと、やっぱりカレーですか?」


「年越しカレー」


「そ、そうですか」


「……いっちゃんは?」


「わたくしは父と弟に付き合ってさしあげようと思っています。最近はマシになってきたとはいえ、今までの悪行のせいでロクな知り合いがいませんので。わたくしが傍にいなかったとしましたら、きっと男二人でおそばをすすりながら意味もわからず泣くことになってしまうでしょう」


 ――イチョウが今年、手に入れたもの。


 毒舌。


「いっちゃん、優しいね」


「えぅ!? べ、別に他意はありませんのよ? あまりに二人が哀れでしたので」


「うん、だから優しいね」


「う、まぁ、そういうことにしておきますわ。ほら、タケダさんの家に着きましたよ」


 ピンポーン、と呼び鈴を鳴らします。


 反応なしです。


「留守でしょうか」


「……仕方ないね。いっちゃん、他で遊ぼ」


「いいのですか? そんなにあっさり」


「うん。あっさりカレーも好きだもん」


「インドさんがそう仰るならいいですけど」


「……でさ。ねぇ、わ、わわ、私の呼び方も変えてみない?」


「あらあら、それは面白いかもしれませんね。わたくしがいっちゃんですから、ええと……」


 ――インド、もといノゾミが今年、手に入れたもの。


 好きな人。


 いや。


 好きな人たち。




 タケダです。年末です。


「ゲーホゲホゲホゲホグホガホガッホォ!!」


 ――タケダが今年、手に入れたもの訂正。


 呼び鈴も聞こえないくらいの風邪。




 ゆーたです。年末です。


「今年もいっぱい踏まれたぜ!!」


 ――ゆーたが今年、手に入れたもの。


 悦び。




 セイジです、もう年末です。


「どうした姉貴。たまには三人そろって初詣、なんざらしくねぇ提案だな」


「はんっ、特別な理由なんざないよ。ただ、ね。毎年毎年、あたしらにゃ大晦日に休みがない。年始の挨拶もそこそこに店の仕込みを始めちまう」


 そうだな。給食センターに勤めているとはいえ、飲食業界の巨匠たる姉貴に休みなどほとんどない。


「ずっとそうなのは、寂しいことじゃないかと思っちまっただけさ。三人だけの姉兄弟なんだし、さ」


 なるほど。そう言われりゃ、そうだな。


 今年は何の因果か、三人で仕事をすることが多かった。あの嬢ちゃんたちのせい――いや、あの嬢ちゃんたちのおかげか。


「付き合おう。トウジだって了承するさ」


「はんっ、嫌と言ってもぶん殴って言うこと聞かすがね」


「前みたいに包丁で殴ろうとするのだけは勘弁してくれよ、さすがの俺も白刃取りなんざ何度もできねぇんだからな」


 ゲンゾウ三姉兄弟が今年、手に入れたもの。

 

 新たな絆。




 クララです、もう年末です。


「今年が……終わります」


 すっかり年末ムードな人たちを木の上から眺めながら、クララは物思いに耽ります。


 ――クララが今年、手に入れたもの。


 自分の身体、たくさんの友達、いろんな想い。


「年末……今年……」


 そして人としての、様々な知識。


「って、どんな意味でしょうか。クララわかりません」


 しかし少し足りない。




 おほほ、校長です。年末です。


「もうすぐ春が来ますわね……」


 あの桜を見れない春が来る、そう想うと切ない気持ちになってしまいます。


 でも……でも。


 先日見に行ったとき。あの木に、元気が戻っているような気がしてなりませんでした。


 まさか……


 まさか、ねぇ?


 ――校長が今年、手に入れたもの。


 失望。


「なぜかしら……クララちゃんに、会いたいわ」


 そして希望。




 もう今年も終わり……

 というわけで。今年のまとめ的なお話にしてみました。丸々一年間カカ天を書き続けて……色々と思うこともありますのでね。

 カカラジも、色々と投稿していただいて申し訳ありませんがあまり発表できそうにありません。年末大晦日スペシャルといこうと思いますので! 

 

 しっかし年末! ほんっとアホみたいに忙しいので感想返信追いついてなくてすいません!

 31日は休みとなったので、ちゃんと感想返信して、色々と思い返しながらカカラジを書きたいと思います……

 

 作業追いつかなくて来年になっちゃったらごめんね♪

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