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カカの天下  作者: ルシカ
667/917

カカの天下667「三人のサンタ」

 こんにちは、トメです。久しぶり? なんでだろう、そんな気がします。


 まぁいいや、とにかく。今日は世間一般ではクリスマスイブと呼ばれる日。家族で過ごしたり恋人同士で過ごしたり、深夜にはサンタさんを待ったりサンタさんになったり。そんな日です。


 果たして、本日の僕らは……どっちだろうか。


「おぅトメ、さすがだな。時間前に来るとは」


「テンか。おまえも結構早いじゃないか」


 待ち合わせ場所――いや、集合場所にて僕らは顔を合わせた。もちろんテンだけじゃない。


「むむ、見よサラちゃん! あそこに見えるはラブラブツーショット! イブだからって調子に乗ってやがる、邪魔しにいくぜ!」


「へい親分! おらおらー私も混ぜろー! えっほえっほ……あ、ども、てへ。恥ずかしいけど楽しいですねコレ」


 道の向こうからやってきたのは、なんか最近元気だよなーって感じのサラさんと、いつも通りなノリの姉。


「はっはっは! イブに誘われるとは本命の証……今宵、期待してもいいのですかな、トメ君?」


「僕が誘ったわけじゃない、っていうかどっから出てきた、っていうか近い近い近い!!」


「照れるなよ……くく」


「誰だおまえ」


 ニョキッと生えたと思ったらいきなり耳元で囁いてきた悪ノリなキリヤ。


「あらあら、皆さんこんにちは。私の子供君たちが、いつもお世話になってます♪」


 道中ちょっと寄り道したかったそうなので置いてきた母さんが合流。


 そして、


「わー、さすがですね皆さん。時間通りですー。私なら絶対遅刻するのにー」


 そんなことをほやほやっと言いながら現れたのは、集合場所の主サカイさん。


 そう、僕らの集合場所とは――サカイさんちの玄関だったのだ。


 数日前に僕らの手に届いた招待状。なんでもサンタと縁が無くなった僕ら大人にスバラシイ時間をプレゼントしてくれるそうな。さしずめ、お世話になってる大人への恩返しといったところだろう、嬉しいことを企画してくれる子供たちじゃないか。


「やーやーサカイちゃん。今日って結局、何すんの? カカちゃんてばタマちゃん勝手に借りてくし、そのくせ何にも教えてくれないし」


「ふふ、私も知らないんですよー。サエったら教えてくれなくてー」


「うちのクラスの問題児どもまで一緒になってると聞いたが……はてさて、何企んでるんだかな」


「あ、トメさん。クリスマスおめでとうございます、今年もよろしくお願いします」


「サラさん、それボケてんだよね?」


「はっはっは! ボケ! つまり歳ですか――ぐほぁ!?」


「なんで母さんが裏拳かましてんの」


「あらやだ。ママってばお茶目しちゃった、あは♪」


「と、歳の話題は敵がどこにいるかわからない……女性恐るべし、キリヤンまだまだ修行が足りない♪」


「男がそんなんやっても可愛いくねーよ」


「カツコンまだまだ修行が足りない♪」


「あんたは元から可愛くねーよ、ていうかなんでノッてくる?」


「サランまだまだ修行が足りない♪」


「だから可愛く――ちょっと可愛いな」


 サランラップが脳裏に浮かんだのは内緒。


「さてさて、トメンさん」


「なにサカイさん――トメン言うな」


「きゃー私も修行が足りない♪」


 流行らすな。


「まぁまぁ、皆さんとにかくお上がりくださいな。集合したら玄関へ通すようにだけ、言われてますのでー」


 雑談モードになっていた僕らは、サカイさんの言葉に従ってゾロゾロと移動を始めた。


『おじゃましまーす!』


 僕ら合わせて七人が入っても余裕な玄関、まさしく豪邸だ。いそいそと靴を脱ぎ始める僕ら……ん。


「なんか、内装変わってない?」


「ええ、改装したんですよー。イベント仕様に」


 玄関から三方向へ伸びる広い廊下。それを区切る壁が全て暗い色へと塗り替えられていた。元は綺麗な白色だったはずなんだけど。あ、天窓も布で覆われてる? 今は夕方だけど、これで電灯でも消そうものなら昼でも真っ暗に――


 あ、消えた。


「わお、真っ暗。キリヤンどきどき」


「キリヤ、酔ってんのか?」


「あ、わかります? さすがはトメ君! まだ缶ビールありますけど、お一ついかがですか?」


「あ、オレもらうわ」


「あたしも!!」


 こいつらは……少しは真っ暗になったことに疑問を抱けっての。


「あら、なんだか音が聞こえません?」


 サラさんの声にハッとなり、耳をすませる。確かに薄らと音楽が聞こえてくる、どこかで聞いたことがある、これは……


「母さんのCMテーマソングじゃん」


 そういえばカカたちってあのCMの練習してたっけ、と思い出したそのとき、黒一色だった視界にスポットライトが!


 三つの廊下の向こう側で、アイドルでも登場するかのように幾つもの明かりが踊っていた。光の中にいるのは――三人のサンタ! 鮮やかな赤い布地に大きな白いボンボンを付けまくった愛らしい衣装を見に纏った三人は、


『メリークリスマス!!』


 声を揃えて大宣言! 続いてさらに、くるりんくるっと揃ってステップ、止まりかけておっとっと。恥ずかしそうに照れて笑って、右手で可愛く頭をコツン……感嘆するほどのシンクロ率だ。


 気を取り直して深呼吸、


『いくわよっ』


 微塵もブレずに言った彼女たちは、軽快なスキップでこちらに向かって来て――僕らの目の前でシュタッとストップ。ポーズを決めてウインクしながら、指鉄砲をバッキューン!


『あなたに私をプレゼント!』


 完璧だ。


 完璧すぎるぞゲンゾウ三姉兄弟。 


「ふ、見てみろよ兄貴。俺たちの雄姿に、全員感動で声も出ねぇようだぜ」


「弟よ……当然だ」


「ふん、あたしがいるからさ」


 ミナミのおばちゃん、それ正解。もっと正しく言えばあんたら三人がいるからだが。


「おぉバランス小僧! この前はあまり喋らなかったけど元気してたかい!? って聞くまでもないね、健康そうな顔しちゃって!」


「あ、あはは……ども」


 この前っていうのは、お結び式のときだな。


 実は小学生のときから『給食のおばちゃん』として知り合いなわけで……そのときからバランス小僧と呼ばれていた。おばちゃん曰く、「あんたは栄養バランスに気を使いまくって不健康になるタイプ」だそうだ。子供を見る目がありすぎ、というかすでに予言者のレベルだと思う。


「ところでゲンゾウさんたち、なんでこんな」


 似合わないことしてるのか、と聞こうとして思いとどまる。だって三人の中年さんたち、妙に楽しそうなんだもの。「兄貴! 俺のよ、頭をコツンのとこ、可愛くないか?」とか「イチコロだぜ」とか自慢げに語り合ってるし。


「ささ! 歓迎パレードも終わったことだし、飲み物配るよー。おやっ、もう飲んでるヤツらがいるのかい!? 気が早いねぇ」


「あ、ジュースあります?」


「あるよ! って野菜美人ちゃんじゃないの、久しぶりねぇ!」


「ふふ、どうも」


 母さんまで知り合いか、ほんと顔広いなおばちゃん。あの学校の卒業生、全員覚えてんじゃないのか。


 そんなことを思っている間に、どこからともなくゲンゾウ三姉兄弟が取り出した飲み物が皆に行き渡る。


 そして――


『メリークリスマス!!』


 声を揃えた大宣言セカンドが響き渡った。


 再び光るスポットライト。その光の中には三つの影!


 くるりんくるっと揃ってステップ、止まりかけておっとっと。恥ずかしそうに照れて笑って、右手で可愛く頭をコツン……そこそこのシンクロ率だ。


 気を取り直して深呼吸、


『い、いくわよ……っ』


 ズレまくって尻すぼみになりながら、ぎこちないスキップでこちらに向かって来て――僕らの目の前でズルッとストップ。変なポーズを決めてウインクしようとして両目とも瞑りながら、指鉄砲をバッキューン!


『あ、あなたに私をプレゼント!』


 頑張ったな、タケダ、シュー君、ゆーたさん。


『明かりもついたところでカンパーイ!!』


 誰も見てないがな。


「くはぁ!! 皆で飲むビールはうめぇなぁ!」


 テンの楽しそうな声に頷く僕ら――ってあれ!?


「カカ? サエちゃん、サユカちゃんもいつの間に!!」


「んぐんぐ、皆で飲むコーラはうまいねぇ」


「そだねー」


「と、トメさんっ、かんぱーい、かんぱーい」


 これまた可愛いサンタ姿、しかし微塵も違和感無く僕らに混じっていた三人は、とことんマイペースにコーラなんぞ飲んでいる……サユカちゃんだけはなんか頑張って何度も僕のグラスと乾杯してるけど。


「お、おいカカ!」


「ん? ああトメ兄。かんぱーい」


「かんぱーい」


 グラスとグラスがカッチン。


「じゃなくて! どうなってるんだよ、この母さんのCMのダンス、おまえらが練習してたんじゃないのか?」


 僕まで巻き込んで、随分と頑張ってたはずだ。それがどうして?


「うん。色々な人に協力してもらって頑張ってたらね」

 

 んぐ、とコーラを一飲みしたカカはあっけらかんと言った。


「コレ私たちがやるよりおっさんたちがやったほうが面白い、という結論に」


 なるほど。光の速さで納得した。


「タケダたちは?」


「アレは失敗だった。だから見て見ぬフリ」


 哀れだ。フォローはしないが。だってあの二人、ただでさえ暗い廊下の隅っこでイジイジ落ち込みすぎだし……ん、二人? 


 もう一人は、


「ゆーたがそのセクシーで可愛いサンタ服着て踊ってたら、どこからどう見ても変質者みたいだよー」


「あぁ! もっと言ってくださいサエ様!! もっと見てくださいサエ様ぁ!!」


 とてつもなく嬉しそうだ。多分あの中で一人だけ楽しんでたんだろうな。


「あの……シューさん、って言いましたっけ? 俺、俺……」


「ええ、わかってます。乾杯しましょう、ふふ、ふふふふ」


 えーと、見てたら無性に暗くなりそうなアレは放っておいて。


「カカ、乾杯はいいけど……今日は一体、何をどうするんだ?」


 スバラシイ時間をプレゼント、というからには企画してるんだろう? そう意図を込めた質問

に、カカは待ってましたと言わんばかりに大きく頷いた。


「もっちろん! まずはこのくじ引きを!」


「はいはーい、皆さん一つだけとってくださーい」


 サエちゃんが取り出した数本のひもくじ。するとこちらも待ってましたとばかりに雑談に興じていたそれぞれがくじへ群がってきた。どいつもこいつも何が起こるか楽しみなんだな。


「私は鼻水ですー」


 ……は? どしたのサカイさん、とち狂った?


「ええと、くじに『鼻水』って書いてあるんですよー」


「はいっ、同じ言葉が書いてあるくじを引いた人同士で一緒になってくださいっ!」


「おーい、『鼻毛』の人いない!? あたし『鼻毛』だよ!」


「オレだ! オレこそが『鼻毛』だぜ!」


「おお! 鼻毛の友よ!」


「あの……私、『鼻血』です」 


「名前が?」


「名前はサラです!! もう、トメさんはなんなんですか!?」


 僕としてはこの一連の会話がなんだと問いたいが。あれ、僕『鼻血』だ。


 そんなこんなでペアが決まった。


 僕とサラさんの鼻血ペア。


 姉とテンの鼻毛ペア。


 母さんとサカイさんの鼻水ペア。


 そして……


「おやおや? 私だけ余りましたよ」


「キリヤ、そのくじには何て書いてあるんだ?」


「ええと、『鼻クソ』とありますが」


 カカ? と視線で聞くと、


「ああ、それハズレ」


「ハズレがあんの!?」


「うん。その人にはちょっと雑用してもらう」


 楽しみにしてた分ショックで酔いも醒めたか、呆然とするキリヤ……お? その後ろからおずおずと出てきたのは、


「あ、あの、カカちゃん?」


「俺たちのくじはないのか!?」


 先ほど醜態を曝した可哀想な二人!


「ああ、あんたらは元から鼻クソ」


 さらにトドメを刺されてしまった、哀れとしか言いようがない。


「さぁ! ペアも決まったところで進んでもらうよ! 目指すは三つの廊下の先、右から――カカサンタの部屋、サエサンタの部屋、サユカサンタの部屋へと続いています!」


「今から五分間、皆さんで相談して、それぞれ決めた部屋へと進んでくださいねー。どこへ来ても自由ですよー」


「わたし待ってますトメさんっ! あ、説明? んっと……あ、そうだわ、それでですね、サンタの部屋へ入ったら、頑張ってプレゼントをゲットしてくださいっ!」 


 ――さぁ、どうする?




 お久しぶりです!!

 いやぁ、久々なんで張り切ってしまいました。この休憩期間、もちろん休みなしに仕事でしたが、今日は何書こう明日はどんなのにしようとか考えることなく、余裕を持って過ごすことが出来ました。

 読みたい本を読んで、観たいものを観て、勉強したいことをして。リフレッシュできたように思います。

 こういう時間も、やっぱり大事だなぁとしみじみ。


 さて、そんなわけで約束どおり戻ってまいりました、

 書かないのは楽でしたが、物足りなかったのも事実なわけで。仕事から帰ってきて即行で書いてしまいました。

 カカたちとのクリスマス、どうか楽しんでいただけたら嬉しいです^^

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