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カカの天下  作者: ルシカ
664/917

カカの天下664「やぁやぁ皆様、今朝も冷えますね」

 とてもとても寒い朝。


 薄い陽光に照らされながら、どこもかしこも夜の名残を残しています。


 そんな静かな時間の中、彼女たちはどうやって目覚めるのでしょうか?


 ちょっとした朝の出来事を、覗いていきましょう。


 覗きは犯罪? 


 捕まえられるものなら捕まえてみろ。


 さぁいきましょう。最初はもちろんこのお方です。カカちゃんの部屋。


「……む」


 ゆっくりと瞼を開いたカカちゃん。


「さむ」


 かぶっていた毛布を手繰り寄せ、自分の身体にぐるぐると巻きつけていきます。


「起きないと」


 言葉とは裏腹に身体は毛布のぬくもりを手放そうとしません。それらをかき集めて丸まったカカちゃんは、そのまま、


「んしょ」


 ぽてん、と団子状態のまま落ちました。さすがはふかふか毛布、落下の衝撃などものともしません。


「んしょ……んしょ……」


 ごろん、ごろんと、毛布のおばけは器用に転がっていきます。こんなこともあろうかとドアは半開きにしていたため、スムーズに廊下へ脱出できました。


 そのまま階段へゆっくりダイブ。ぽてん、ぽてん、と驚きの柔らかさを発揮しながらカカちゃんを衝撃から守る毛布、ちょっとお値段が張っただけはあります。


「ふぅ……」


 無事に階段を下りたところで一休み、そこで、


「うぉ!?」


 そんなモノが廊下のど真ん中に落ちてたもんだからお兄さんもビックリです。


「トメ兄、おは」


「おはよう、妖怪かと思ったぞ」


「毎年のことなんだからいい加減に慣れなよ」


「毎年でっかくなってんだろうがその毛布団子」


 そう、子供の成長は早いのです。とはいえやってることは同じのようですが。


「も少しでコタツ……」


「はいはい、手伝ってやるよ」


「こらー、蹴って転がすなー」


 なんだかんだでコタツまでたどり着いたカカちゃんは無事に毛布を装備解除、ぬくぬく状態を保ったまま朝食を待つのでした。


 さてさて、ちょっと和んだところで次にいきましょうか。オチ? 日常生活にいちいちそんなモノが用意されてるわけないでしょう。次はサエちゃんですよ。


「んー……」


 鳴り響く目覚まし時計。サエちゃんは止めようと布団から手を伸ばします。


「んにゅー……」


 ぱしぱしとそれを叩きますが、目覚まし音は一向に止まる様子がありません。


「んゆー……」


 ぱしぱしぱしぱしぱしぱしぱしぱし――


「フギャー!!」


「わわわ」


 間違って官房長官の頭を叩いていたようです。


「ごめんなさい官房長官」


 身を起こしたサエちゃんはペコリと丁寧にお辞儀しました。すると官房長官も「仕方ありませんね、やれやれ」とばかりにお辞儀を返してくれました。人と猫が頭を下げあう、変な光景です。 


「さてさて、寒――」


「サーエー!! 起きたー!?」


 寒い、そう言おうとした瞬間にドカーンと開け放たれた部屋のドア。


「あらあら眠そうな顔しちゃってー。やっぱりお母さんが一緒に寝ないと、寒くてちゃんと眠れないのかしらー?」


「んと」


「まーまーそんなことはいいのよー、朝ご飯できたのよー時間なのよー! ほら、その前に朝の挨拶!」


「おはよー」


「はい、おはよー。まだまだ朝の挨拶よー!」


 その後、いつものようにホッペすりすりしてかいぐりかいぐりちゅっちゅしたサカイさんは満足そうに去っていきました。


「起きよーっと」


 そしてサエちゃんはふと気づきました。ただでさえ朝の弱い自分が、寒い時期にも関わらずあっさり布団から出られていることに。


「寒くないなー、あ」


 答えが見つかりました。


「お母さん、暑苦しいもんね」


 最高の防寒対策と言えるでしょう。


 ある意味の理想の朝を迎えている彼女を羨ましく思ったところで、最後にいきましょう。今日も今日とてぬいぐるみに囲まれて眠るサユカちゃんです。


「んー……」


 ぐっすりと眠っているサユカちゃん。そこで目覚ましが高らかに鳴り響きます!


『サユカちゃん』


「はいっ!!」


 甘くとろける最愛の人の声! そう、こっそり録音したこの声を目覚ましにすることでサユカちゃんの目覚めはいつも爽快なのです。


『ねぇねぇサユカちゃん』


「はい、いま起きますよっ!」


『お醤油とって』


「はい喜んで!」


 そう、こっそり録音したのでこんなセリフなのです。しかしサユカちゃんはニコニコしながら机の上においてあるお醤油を取り、飾ってあるトメ一号の前に差し出すのでした。


「はい、トメさんっ! もーしょうがないんだからー」


『ありがと』


「えへへ」


 照れ笑いしながら目覚ましを切ったサユカちゃんは。


「わたし……なにしてるんだろ」


 誰にもわからない疑問を抱きながら落ち込むのでした。毎朝の恒例行事だそうです。


 寒い寒い冬の朝、皆様はいかがお過ごしですか? この娘たちのような起き方をしている人もいるかもしれませんね。もしいたら、それはとても愉快なことです。


 それでは今回はこの辺で。


 はて、私が何者か、ですか?


 そうですね、前回も疑問に思った方もいらっしゃるでしょうし。


 この際はっきりいたしましょう。


 はーっはっはっは! 実は実はなんと! この俺様、通称トメ父の変装だったのさ!


 実はあんなこと言いつつ前回のナレーションも俺様だったのだ。先日の話で「やっぱりな」とか「トメ父じゃないと思ってた」とか勘違いしてたやつら、残念だったな! 忍者をなめるな、女優の夫をなめるな!


 見破ったぜーとか思いながらいい気になってた自分を恥じるがいい!


 このような変装など朝飯前だ! 今日の話も朝飯前のものばかりだったしな!


 はーっはっはっは!


 嘘です。




 おまけ。


 カツコの場合。


「朝だー!!」

 

 五分後。


「飯だー!!」


 五分後。


「身支度だー!!」


 五分後。


「仕事だー!!」


 寒くても変わりませんでした。




 ナレーションたのしー。

 はい、そんなわけで『今宵〜』の続編っぽいもんです。

 三者三様の朝をお楽しみいただけたら幸いです。

 そして話の所々にツッコミたければどうぞご自由に笑


 さてさて、私事ですが。年末の居酒屋は戦場ですね、ええ。さすがに金、土と二日連続で営業時間中フル稼働で動いてたら手も荒れてきました。洗い物でアカギレするんですよねー。

 でもこの話を三十分で書きあげた私の指はまだまだイケると思うのですがいかがでしょう。


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