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カカの天下  作者: ルシカ
660/917

カカの天下660「名探偵トメの事件簿」

 やぁこんにちは、僕はトメ。探偵さ!


「嘘つけ」


 はい、すいません。カカに怒られちゃいました。


 しかし!


 そんな風に探偵きどりしたくなるほどの証言を得てしまったのだ!


 さて諸君。近頃、僕のパンツが次々と紛失していることは知っているだろう? 理解しがたいこの事件の詳細は全く掴めず、捜査は難航していたのだが……


 証言そのいち。笠原カカ。


「トメ兄のパンツがなくなる日って、必ず私がばぁばに会う日だよ」


 この証言を聞いて――なに? 証言が一つしかないなら『そのいち』とかつけるな? 気分だ。えーコホン、この証言を聞いて僕は不可解に思った。なぜなら、この証言は僕が気づいていた事件の共通点に酷似しており、なおかつ決定的に違うものだったからだ。


 そう、僕が気づいていたのは――事件が起こる日は必ず、父さんに会う日、という点なのだ。


 しかしカカは、それだけではないという。事件当日に祖母も近くにいた? あの忍者親子が……これは偶然とは思えない。


「ねぇトメ兄。どんなに格好いいことを言っても追ってるのはパンツだよ?」


「うっさい」


 いい気分なのに邪魔するな。


 ともかくこの証言を手にした僕は、一つの仮説を組み立てた。


 ――僕が父に気を取られている隙に、祖母がうちを漁り、ブツを持っていったのではないか? つまり、これは計画的犯行だ。


 完璧な推理だ。真実はいつも一つ!


「ねぇトメ兄。どんなに格好いいことを言っても追ってるのはパンツだよ?」


「キレイに繰り返すな」


 しかしこの推理にも穴はある。


 動機、すなわち僕のパンツを持っていく理由がないということだ。


「なぁカカ。犯人はなぜ僕のパンツを持っていったのだろうか。使い道なんかないだろうに」


「とりあえずそれでサユカンは釣れると思うよ」


「釣り餌じゃないんだから」


「んじゃ撒き餌?」


「そこまで広範囲に渡るほど匂うはずはない。洗濯済みだし」


「他に共通点ないの?」


「むぅ」


 共通点……共通点かぁ……


「む、こんな時間だ。とにかくお風呂入ってきなよトメ兄」


「むぅむぅ」


 顎に手をやり唸りながらも脱衣所へ向かう。


 まずは上着を脱――ここから先のシーンは事細かに描写したら「カエレ」「キエロ」「シネ」とか言われそうだから省略しよう。


 とにかく湯船につかりながら、僕は考えた。


 考えて思い出して考えて思い出して……


 風呂から上がる直前、閃いた!


「そうか!」


 あった、もう一つの共通点。


 勢い込んで風呂から上がり、急いで身体を拭きながら、居間にいるだろうカカに聞こえるように声を張り上げる。


「カカ、わかったぞ! もう一つの共通点が!」


「ん」


 おお、脱衣所のすぐ外にいたか。ならば話は早い。


「盗まれたパンツはな、全て何かの文字の刺繍があったんだ! つまり犯人は、何かが書かれているパンツを探していたんだ! て、あれ。僕の風呂上りの着替えのパンツは?」


「パンツもう全部ないよ」


「うっそぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 無地のも全部ってことは僕の推理いきなりはずれ!? しかも風呂入ってる間に盗まれたの!? タイミングが悪すぎる。嫌がらせとしか思えない。


「むぅ、どうしよう。とりあえずはくものがない」


「私のパンツはく?」


「はいてたまるか!!」


 言っておくが僕は脱衣所にいて、カカはその扉の外から会話している。断じて丸見せのまま会話してるわけじゃないので誤解しないように。


「んーと……あ、ねぇねぇトメ兄。お父さんの下着とか、どこかにある? なんなら今はそれを代わりに」


「ヤツの私物などこの家にない」


「……あの人、つくづく家族っぽくないね」


 何をいまさら。


「くそぅ、どういうことだ。おとなしくしていれば完全犯罪となっただろうに、なぜいきなり、こんなヤケになったかのような犯行を」


「ねぇトメ兄。どんなに格好いいことを言っても追ってるのはパンツだよ?」


「だから繰り返すなっつうに」


 ヤケになった……ふむ……


「もしも、僕の推理が正しかったとしたら? 父さんとばーちゃんは何かを探している。目的は、僕が持っているパンツに書かれている文字か、もしくはそれが書かれているパンツそのもの。怪しまれないように数度に分けて僕からそれっぽいパンツを盗んでいたものの、目的のパンツが見つからず、時間がなくなり勝負に出た……?」


 なんとなく、この仮説が正しいような気がしてくる。


「どう思う? カカ」


「パンツって言葉が出るたびに萎える」


「余計なお世話だ!!」


 そんなの僕だってわかってるけど、仕方ないじゃないか。実際にパンツが全部なくなって大事件なんだから。


「時間がなくなった……それが正しかったとしたら? 間もなく訪れる、もっともわかりやすい区切りといえば、クリスマス」


「む? クリスマスプレゼントに一家に一枚、トメ兄のパンツを配って歩くのか。スゴいね、ばぁばサンタ」


「スゴすぎて困る」


 ていうかホント困る。さし当たっては今パンツがなくて困ってる。


「……仕方あるまい」


「トメ兄?」


「あの、奥の手ならぬ奥のパンツを使うしかないのか! 封印していたあのパンツを!!」


「パンツって言葉が出るたびに萎える」


「それも繰り返すな!」


 そして僕はその日、長年封印していたパンツをはくことになった。




 次の日。


 大量のパンツがいつの間にか洗濯機に放り込まれていて――封印から解き放ったパンツだけが消えていた。


 犯人の狙いはこれだったのか。


 いったい犯人の目的とは!?


 事件はまだ、終わらない……


「パンツ事件ね」


「言うな!」




 昨日に続きまして事件簿シリーズです。

 いろいろと気になるところはあるでしょうけどノーコメントでいこうと思います笑


 さて、そんなわけで事件は置いといて――作者の日常を気まぐれにほんの少し紹介する、ちょっと長いあとがきコーナー!

 

 本日、職場での会話。


「いいですよねぇ」

「なにが?」

「私は貝になりたい、いいですよねぇ、うん」

「ああ、映画の?」

「そうそう。私は貝になりたい!」

「私はタフガイになりたい」

「じゃあ私はバイ貝になりたい」

「いやいや俺はとり貝が好きだ!!」


 楽しい職場です。


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