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カカの天下  作者: ルシカ
654/917

カカの天下654「熱燗を飲みながら」

 こんばんは、トメです。ということで――


『乾杯!!』


 年末に入ったせいか週末は居酒屋が騒がしく、ゆっくり飲むことができない。そんなわけで平日の夜にも関わらず、テンと二人で飽きずに『病院』で飲んでます。


「んぐっ! やっぱ一杯目はビールだぜ!」


「しかし寒い今の時期は熱燗もうまい!」


「おう、わかってるじゃねぇかトメ! 二杯くらい飲んだらそっちにいこうぜ」


「この『アンコウの内臓ポン酢』って、あん肝ポン酢のことだよな」


「相変わらず嫌な名前を好む店だな……が、あん肝は素晴らしい。日本酒にいくとき頼もうぜ」


「おお、これって白子の天ぷらだよな! 冬は熱燗に合うメニューが増えて嬉しいねぇ」


「なぁ、『白い臓器』って品名だけでよくわかったなトメ。白子はともかく本当に天ぷらか、これ?」


「揚げ物の欄にあるだろ」


「トメ、この店に馴染んだなぁ」


 最初は食べ物の話で盛り上がり……やがて、ビールから日本酒へ移るように、世間話へと移行していく。


「そういやもうすぐクリスマスだよな。てめぇら、また何か考えてんのか?」


「や、それがな。カカたちに言われてるんだよ、何も考えるなって」


「何も考えるな? なんだそりゃ、変な言い分だな」


 そうなんだよなぁ。料理とかは後でお願いするかも、とか言われただけで、他は余計なことをするなって釘刺されてるんだ。


「何を企んでんだか……トメ、心当たりねぇのか?」


「そういえば」


「あんのか」


「クリスマスに関係するかはわからないけどさ、一昨日の夜かな? トイレいくときにカカの部屋が空いてるのが見えてさ、早く寝ろーと注意するつもりで覗いてみたら」


「覗きで警察に捕まったのか」


「だったら今ここにいる僕はなんなんだ」


「脱獄犯め! 金払え!」


「奢ってもらいたいだけだろおまえは」


「ねぇーん、とめぇーん、はらってぇーん」


「キモいキモいキモい!! しな垂れかかるな! さりげなくポケットから財布盗もうとするな!」


「けけけ、酔っ払いって楽しいよな」


 ああそうだな、誰でもたまにキャラ壊れるもんな。


「まま、一杯……んで、覗いたらどしたって?」


「っとと、サンキュ。いやな? なんか、すごい機械っぽい音で『ツー、ツー、ツー』って言う練習してたんだよ」


「あー」


「クリスマスに関係あると思うか?」


「ねぇな」


「ハッキリ言うなぁ」


「んぐ、ぷは……昨日の昼休みに小ネタとして使ってたから、それはない」


 そうかぁ……


「あと、最近。僕のパンツがやたらとなくなるんだが」


「知らねぇよ」


「知ってたら怖いよ。でもな、なくなる日には共通点があるんだ」


「どんな」


「パンツが紛失するのは、必ず父さんと会った日なんだよなぁ」


「……おい、いま酒がまずくなる想像しちまっただろが」


「悪い。偶然だとは思うんだが。まさかあのバカが……でもバカだしなぁ」


 何をするかわかんないんだよなぁ。


「なぁトメ。おまえって父親のことを喋るときはいつも悪口だよな」


「おまえだってそうだろ」


「ああ、オレも父親嫌いだからな。でもな、このままじゃダメだと思ってんだよ」


 ……ふむ。


「偉大な父は世界にごまんといる。だから父=ダメ人間、という公式にはならないはずなんだ」


 確かに、そう決め付けるのはよくないけど。


「というわけでトメ。ちょっと父を称える言葉をさがしてみようぜ」


「言葉をさがすって――ああ、携帯で検索してみるのか」


 どうせ目的のない飲み会だ、やることが決まったらやるしかない。どれどれ……


「お、なぁトメ。これなんかどうだ? ことわざなんだが、『父の恩は山より高く母の徳は海より深し』だってよ」


「母はともかく、父に恩なんてあったかな……」


「ならこれはどうだ。『子供の楽しみに対する敵はいつでも父か教師である』だとさ。永井荷風さんのお言葉だ。教師としては見逃せねぇな、その通りとも思うし」


 カカにとって父は敵だろうけど、この言葉の意味を考えると……父親役は僕、ってことになるのかなぁ。でも僕はよく一緒に楽しんでるし、敵でもないよな?


「あー、『一人の父は、百人の校長に勝る』とはサミュエル・ジョンソンさんの言葉だ。かっけぇ名前の人だな」


「誰かわからん」


 そして一瞬、あの校長先生が百人そろって『おほほ』と合唱している姿が浮かんだ。こえぇ。


「む、『子どもは大人の父である』って深い言葉だな。ワーグナーって人、なんか聞いたことあるような」


 あいにくと学業から離れて久しいもんでな、僕も知らない。学者さんだったかな?


「しかし、なるほど。テンの言う通り、世界には偉大な父がたくさんいるわけだ」


 酔っ払いでもたまには建設的な会話ができるもんなんだな。うちの父も少しは見直せるように、いいところでも見つけてみるか……


「でもな、このままじゃダメだと思うんだ」


「は?」


 なぜここで先ほどのセリフを繰り返す?


「この『父』という言葉を『乳』に変えてみろ!」


 乳……だと?


『乳の恩は山より高く母の徳は海より深し』


 とっても胸がおっきいお母さんが浮かんだ。


『子供の楽しみに対する敵はいつでも乳か教師である』


 乳つえぇ!


『一人の乳は、百人の校長に勝る』


 乳こえぇ!!


『子どもは大人の乳である』


 わけわかんねぇ!!


「ところでトメはどんくらいの乳が好きだ?」


「なんでそんなに話が飛ぶ!! 父はどこいった!?」


「あん? 乳なら一応ここにあるぞ、揉むか?」


「揉むわけあるか!!」


「けけけ。ま、一杯つげ」


「……はいはい」


「一回揉め」


「ええかげんにせい」


「じゃーオレが揉む」


「ええかげんにせい!!」


 結論。


 酔っ払いって、やっぱ酔っ払いだよね。


 楽しいのはいいんだけどな……言っとくが、揉んでないからな。




 テンカ先生の出番が少ないとの苦情がきたのでここらで一発飲み話をポン。


 ツッコミどころ色々あるかもですがノーコメント。

 今後をお楽しみに^^

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