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カカの天下  作者: ルシカ
649/917

カカの天下649「翻訳可能」

 おはようございます、トメです。


 今日は最近じゃ珍しいくらいのいい天気。寒い寒いと文句を言って布団から出にくかった僕も、比較的すんなり起きることができました。


 爽快的な気分で朝食を作り、いつもの時間になっても珍しく起きてこないカカの部屋をノックノック。しかし返答なし。気持ちよすぎて逆に寝てるんでしょうかね? 僕はそう思ってカカの部屋の扉を開けて、


「…………」


 とてつもなく不快そうにベッドから身を起こしている、カカとご対面しました。


 ご機嫌ななめ、どころか急降下? なぜ。


「あの、カカ? おはよう」


「…………」


「お、おーい。返事してくれないとお兄さん寂しいな」


「…………っ」


 あれ、口を動かしてる。一応は小声で何か言ってるのか?


「どうしたんだよ」


 その声を聞き取ろうと近づき、耳を寄せてみると、


「ぶぁっくしょっいっ!!」


「声でかいし近いし汚いし!?」


 耳元で盛大にくしゃみをかまされ飛び退くと、カカはギロリと悪い目つきをこちらにむけ、


「ち――げほげほっ! ちげほ! ぢげほげほげほ!!」


 今度は盛大に咳を始めた、っておいおい。


「まさか風邪か?」


「ちごほっ」


 にしても変な咳だ。最初の『ち』やら『ぢ』ってどこから出てきたんだ。


「うううう……ちげほっ」


「ダメだなこりゃ。おとなしく寝てな」


 幸いにも今日は土曜、学校も会社も休み――お? ぐいっと引っ張られる僕の服。カカが掴んでる。


「うううう」


「なんだよ、行ってほしくないのか?」


 寂しいのか、可愛いやつめ。


「ち……ち……」


「ち?」


「ぢぐじょーい……」


 伊達に長年一緒にいるわけではない。カカの言いたいことは理解した。


 先ほどカカは盛大なくしゃみをかました。だから――「はっくしょい、ちくしょい!!」というアレを言いたかったのだ。


 たったそれだけのために僕を引き止めたのだ。


 たったそれだけのために咳をしまくってまで声に出そうとしていたのだ。


 変なやつ。


「はいはい、言いたいことはわかった。なんか胃に優しいもん作ってきてやるから待ってろ」


「どべびぃー……」


 トメ兄ね。


「今度はなんだ……あー、何言ってるのかわかるけどわからんから鼻かめ。ほれティッシュ」


 ちーん、と定番の音を聞かせてくれたあと、


「それで、なんの用だったんだ」


「……おはよ」


「それだけか?」


「返事、しでながっだ……ぐじゅ」


 律儀なやつだ、ここは可愛い。


「はいはい、それじゃ行ってくるぞ」


「ぶぁっくしょい!!」


「くしゃみで返事するのは百歩譲っていいとして、もう少し可愛いくしゃみできないもんかね」


「ちげごほげほ!! ちぐげほ!」


「ちくしょーとか言わなくていいから! おとなしくしてろ」


「うううう、ぎぶ!!」


 ギブ?


 ああ、義務か。


 ……義務か?


 まぁいいや、僕がいなくなれば変な意地も失くすだろう。そそくさとカカの部屋を後にして、台所へ向かう。


 さっき作った朝食はラップして冷蔵庫に置いて、と。適当な野菜が余ってるし、玉子もあるからおじやにしよう。


 そんなわけで調理中……ん、居間のほうから着信音が。そういや起きたときに携帯あそこに置いたんだっけ。コンロを弱火にして、音に急かされるようにそちらに向かう。


 テーブルの上に放置されていた携帯を手にとってみると、画面には会社の番号が。


 休日出勤要請か?


 そういえば昨日、機械がトラブってたような。


「しーらないっと」


 音が鳴り止んだと同時にマナーモード。そしてテーブルにポイ。


 さーておじやおじや、っと。




 数分後。


 お盆に朝食セットをのせた僕は、再びカカの部屋を訪問した。


「ほれ、おじやできたぞー」


「げほげほげほっ!」


「はいはい、そんな無理してオヤジ狩りとかボケなくていいから」


「げほっ……」


「ほら食え。あーん、とかいるか?」


「げほ」


「いるのかよ。風邪ひくと弱いなーおまえは。ほれ、あーん」


「ぶあっくしょい!!」


「口だけ開けろ! 返事するな!」


 ようやくわかってくれたらしい。くぁ、と雛鳥のように開いた口にフーフーと冷ましながら雑炊を放り込んでいく。


「なんとなく思ったけど、僕らって昔からやってることは変わらないよな」


「げほ」


「そうそう、おまえが風邪ひいて、僕が看病して……でもたまには逆はないのかね?」


「げほげほ」


「ああ、そういやあったな変な看病されたことが。看病というかお供え物か。や、あんなのじゃなくてさ、今僕がやってるみたいな、心温まる感じの」


「けほけほ」


「まぁ、確かに僕はあんまり風邪ひかないけどさ。もしものときの話だよ」


「ぶぁっくしょい!!」


「そもそも料理できないから無理? 教えてやるから覚えろよ」


「ぶぁっくしゅ!」


「面倒? いざサエちゃんが風邪ひいたら教えろとか言うくせに」


「はっくしゅ!」


「あ、やっぱやるの? サエちゃん絡むと強いなおまえは。じゃあ教えるよ」


「ぢぎじょー!」


「お、やっと言えたな。ちょうどおじやも食べ終わったし、よかったよかった」


 お盆の上を片付け、部屋を出ようとする。


「……とめにーちゃん」


 昔の呼び方に少し驚きつつも振り返る。


「……あの」


 カカが、真剣な目をしていた。


「なんだ?」


「……いつも」


 熱か羞恥か、顔を真っ赤にして。


 少しの間、躊躇していたけど。


 カカは思い切ったかのように口を開いた。


「ぶぁっくしょい!!」


「寝ろ」


「……ぁぃ」


 残念そうに俯き、もそもそと布団に入っていくカカ。


 それに、


「どういたしまして」


 そう声をかけると、カカは動きを止めて、


「ん」


 唸るように返事をして、しっかりと布団をかぶるのだった。 




 二日続けてしんみりもなーと思ったのですが、昔のカカと現在のカカで甘えた感じを出してみたらどうだろう? とも思ったので、こんなん書いてみました。

 いかがでしたでしょうか? 


 さてさて、もうすぐカカラジなのですが……

 

 年末の居酒屋って……いっそがしぃですねぇ(超私事


 感想返す時間ががが!

 ほんと申し訳ない! 

 でも頑張りますのでもうちょっとお待ちを!


 明日中にカカラジ書ききれるかなぁ……ちょと不安かも。

 遅れちゃったらごめんね♪ 

 ではでは皆さん風邪にご注意をー。

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