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カカの天下  作者: ルシカ
648/917

カカの天下648「欠けた三角」

「……はぁ」


 トメです。突然ため息なんか吐いてすいません。


「まだあったんだな、これ」


 自室の机の中を整理していたときに見つけてしまった、そのシルバーペンダント。


 角が一つ欠けた銀の正三角形が、薄らと光る。


「捨てられないんだよなぁ、情けないことながら」


 それと同時に光る思い出。


 そうだな、光っていた時期は確かにあった。でもこの綺麗な三角形が欠けたのと同時に、いろいろなモノも欠けていった。


「なんで欠けたんだっけ。ああ、たしか」


 思い出す。


 あれは僕が高校生だったころ。


 気の合う友達もそれなりにいて、今ほど愉快なやつらが集まらなくとも楽しい日々を送っていて、僕の隣にはアイツがいた、あのころ。




「おい笠原、笠原!」


「なんだよ……僕は眠いんだよ」


 毎日毎日寝るまでの間は全力で懐いてくるカカの世話に疲れ果てていた僕は、高校の休み時間といえば机に突っ伏して眠るのが日課となっていた。


「そんなこと言ってていいのか、来てるぜ今日も」


「……どっちが」


 思い当たるのは二人いた。


 来てくれて嬉しいほうと、来てくれてウギャアなほうだ。


 前者だったらいいなぁと希望を抱いているうちに教室のドアが吹っ飛んだ。


「弟よー!!」


 どうやら後者だったらしい。うぎゃあ。


「なぁ、姉」


「よう弟! 元気か!」


「あんたの顔みたら元気なくなったよ」


「それはよかった!」


 人の話聞けよ。


「なぁ姉。何度も言うが」


「何度でもツッコんでくれていいよん。それが君だ」


「なら言われるまでもなくそうするよ。あんたは大学生だよな?」


「おうよ」


「ここは高校だよな」


「おうよ」


「なんでいるんだ」


「……?」


「なんで不思議そうに首傾げるんだよ!?」


「そんなに怒んないでよ、手土産にカカちゃん持ってきたから」


 背負われていたらしく見えなかったカカが、姉の肩口からひょこっと顔を出した。


「とめにーちゃん! にゃー」


 ひらひらと手を振るカカ。


「にゃー」


 思わず振り替えしてしまう僕。


「……はっ!? じゃなくて! なんでカカまでいるんだ!」


「幼稚園から拉致ってきたから」


「なんで拉致るんだよ!?」


「そんなに喜ぶなよぅ」


「ああもう会話が成立しない!」


「とめにーちゃん、にゃー」


「にゃー!!」


 やけになってブンブン腕を降るとカカは楽しそうに振り返してくれる! なんか楽しくて確かに土産にはなったかもしれんが色々と問題あるだろう!


「まぁまぁ笠原」


「なんだよさっき起こしてくれた友人A」


「おまえこそなんだよその説明的な口調は……いいけどさ。ともかくお姉さんは心配なんだよ、おまえに彼女ができて」


「「ぐっ」」


 そろって言葉に詰まる僕ら姉弟。


「ち、違うもんね! あたしは別に!」


「見てくれよーお姉さん。こいつさ、彼女にプレゼントもらったんだぜ、ほら」


「わ、ばか」


 友人Aが襟元から手を突っ込んでくる。その拍子に服の下に隠してつけていたペンダントが表に出てきてしまった。


「三角形のペンダント、これよこれ! しかも聞いてくれよ。これさ、にくいことに――」


 ん、姉? ペンダントを持って……


「ふん」


 パキ。


「折っちゃった」


「なにしてくれんだ姉ええええええええええええ!!」


 彼女からの初めてのプレゼントをあっさり素手で折りやがったコンチクショウは、バツの悪そうな顔で、しかし謝ることもなく、


「うっさい! そんなのあたしだって買ってやるもん! バイトしてくるから待ってろバーカ!」


「とめにーちゃん、にゃー!」


 わけのわからないことを言って去っていく姉、そして相変わらず手を振り続けているカカ。


 そんな二人は目に入らず、僕はただ、欠けたペンダントだけを手に立ち尽くしていた。


「なぁ、トメ」


「……なんだ友人A」


「これは俺のせいだ。だからこれだけは言わせてくれ」


「……なに」


「ざまぁみろ」


 とりあえずそいつを殴った。さらば友人A。二度と会うこともないだろう。出番的な意味で。



「それが、彼女と別れるきっかけ」


 乾いた笑いがこぼれる。


「――だったら、よかったんだけどな」


 それなら話は簡単だった。


 いいや、特に複雑なことはない。現実も極めて単純だった。


 複雑だったのは、僕の心だけ。


「……しまっとこ」


 捨てられない。


 捨てることはできない。


 欠けた三角形と、欠けた関係。片方を失うと、もう片方も同じ運命を辿るような気がするから。


 もっとも、もう片方のほうはすでに無くなっているかもしれないが。


「それにしても、あのころの姉」


 バカだったなぁ。


「あのころのカカ」


 可愛かったなぁ。


「あのころの僕」


 ほんと、バカだったなぁ。




 これでどうだ!!

 誰かさんとの約束、トメと姉の学生時代を書いてみました。ついでにちょっと過去編の冒頭を……

 

 すぐには突入しませんが、これからちょこちょこと過去の話を公開していきたいと思います^^


 そうそう、もうすぐカカラジですが。

 

 ちょっとした情報をば。CM枠一つと自由枠なおたよりが少ないので、それを送れば採用される可能性が多いかもしれません。

 もし何か思いつくことがあれば遠慮なくどしどし送ってくれると嬉しいです^^

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