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カカの天下  作者: ルシカ
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カカの天下647「トメの一人遊び2」

 こんにちは、トメです。


 忙しい年末を控え、会社から有給休暇を消化しろと言われました。そんなわけで平日にも関わらず休みをもらってしまったのですが……


「ひま」


 カカを学校へ送り出してからというもの、家事を終わらせてしまうとすることがありません。


「暇をもて余した主婦か僕は」


 一人でツッコミをいれても、本当にそうなんじゃないかと思えて笑えません。ちくしょー。


「誰か他に暇な人はいないものか」


 キリヤにでもメールしてみるか。


『いま暇か?』


 ぽちっと送信。おもしろみがない? 男のメールなんてこんなもんだ。


「あれ、もう返信きた。暇なのか」


 そのメールを覗いてみると。


『いま無敵中です』


 脳裏にスターなアイテムをとって光りながら爆走するキリヤの姿が浮かんだ。帽子をかぶったアレね、異様に高くジャンプしながら亀とかなぎ倒す感じのアレね。


「気になるな……電話してみよ」


 数回コールするまでもなくキリヤが出た。


「あ、もしもし。無敵中ってどういうことだ?」


『はい、ただいま満席となっております』


 なんだこの噛み合わない会話。


「あーっと?」


『タクヤ君待ってください。A5卓様にはお子様がいらっしゃるでしょう、ならばそのオーダーを通す前に一度、お子様が食べられるのでしたらにんにくをお抜きしましょうか? と確認を取りなさい。にんにくの強い料理が二つも入っています。お子様に刺激物はよくありません』


『は、はい、わかりました! でも、キリヤさん、よくオーダーがわかりましたね、ドリンクばっかり作っててホールにもほとんど出てないのに』


『ホールにはつい先ほど一度出たのでお客様のご様子は全て覚えました。店員がオーダーを取る声はここにいても聞こえます。さ、速く動きなさい』


『は、はい!!』


『こういうわけですトメ君』


 なるほど、店が満席状態かつ自分は無敵状態というわけだ。


「忙しいときに悪いな、でも電話してて大丈夫なのか?」


『ええ、なにせ無敵なので』


『おいキリヤ!! てめぇこんなときに何して――』


『ドリンクお願いします! A1卓様にグレープフルーツジュースとオレンジジュースツー、ホットコーヒースリー。A3卓様に生ビールツー、A4卓様に瓶ビール梅酒お湯割りカシオレカシグレオールワン、B2卓様は常連のお客様なのでホットコーヒーに砂糖なしミルク三つです。B1卓様にはアイスコーヒーツーをこちらに用意してあるので、間もなく出るお料理と同時にお願いします』


『……おいキリヤ、そんな伝票ねぇぞ』


『先ほどホールを回ったときに五卓様同時に聞いたので、書く暇がありませんでした。先に作ってしまったほうがいいと判断しましたので。配膳してからすぐに書きますよ』


『……全部、暗記したのか』


『それが何か?』


『……なんでもない』


『ならば配膳してください』


『……おう』


『そういうわけですトメ君』


 なるほど、どうだ自分は無敵だろうと言いたいわけだ。


 確かにすげぇ。


「ああ、邪魔して悪かった」


『はっはっは。飲食業とはどれだけ忙しいときにもお客様からお電話をいただくもの、この程度のことで文句を言っていては自身のスキルアップなどできません』


 スキルアップ、かぁ。


「今度またラーメン食おうな」


『喜んで、では』


 うーん、普段はおちゃらけていても仕事ぶりだけは神だな。僕も見習ってスキルアップに励むか……確か料理の本あったよな。食材結構あるし、暇だし……


「でもその前に、と」


 なんだか寂しいので、もう少し誰かと時間潰したいなー、なんて。


 テンは明らかに授業中だろうし……カカたちもしかり。待てよ、いま昼どきだよな、だからキリヤもあんなに忙しかったんだろうし……でも給食中だろうな。


 あとはサラさんか。メールしてみよ、ぽちっと送信。


『やほ。いま暇?』


 なんだかナンパなメールだなぁ、なんてちょっと自己嫌悪。お、返信きた。


『いま花屋でお悔やみ中です、すいません!』


 葬式?


 花屋で? 


 つまり、姉が!?


 やったぁ!!


 じゃなくて。


「なるほど、葬式用の花の準備で忙しいってことか」


 結局はお仕事中なんだなぁ。


 じゃあ……ちょっと恥ずかしいけど、母さんはどだろ。同じようなメールをぽちっと送信。


 するとこれまたすぐに返信が。


『ただいま演技で女子高生中』


 なんと、返信が変身だった!! しかも――ええええ!?


『いやいやいやいやさすがに無茶だろう!?』


 即変身! じゃなくて返信! すると向こうからも変身! じゃなくて返信間違えすぎ!! 僕動揺しすぎ!


『ママもそう思ってね、抗議してるところだよ。なんか監督さんがどうしても着てほしいみたいでね? 絶対に売れるとかまだまだイケるとか言われてるんだけど、これ以上言ったらパパ君の手裏剣が飛んでくるからアブナイね、うふふ♪』


 や……そっちもアブナイですけど、うちの母さんが女子高生姿って、そっちこそアブナイビデオみたいになっちゃいますから。頑張れ母さん、死人を出すな?


「しかし皆、仕事忙しいんだなぁ。母さんは来年まで帰ってこれないみたいだし……僕だけ暇で、何か申し訳ないような。お?」


 メールだ、カカから? 昼休みか。


『ただいま授業中』


 別におまえには聞いてねーよ。


『うっそーん。本気にした?』


 したからどうだっていうんだよ。


『トメ兄は暇中?』


 余計なお世話だよ正解だよ。


 ……という感じの返信をしてみた。


 すると。


「電話? えと――もしもし?」


『あ、あのっ! トメさんですか!?』


「はいはいトメさんですが」


 サユカちゃんか。


『あの、寂しくて死んでしまうって本当ですかっ!?』


 僕、そんなにか弱いウサギだっけ。


『あのあの、わたし今から学校抜け出して会いにいきますから死なないでっ!』


「いあいあいあ死にません死にません。カカが何言ったか知らないけど大丈夫ですから」


『本当ですか? あの、学校終わったらすぐに駆けつけますので』


 じーん……なんか嬉しい。


「じゃ、夕飯でも食べてく?」


『いいんですかっ!?』


「うん、美味しいの作っておくよ」


『わ、ありがとうございますっ! でも、その、ご迷惑じゃ……?』


 嬉しいこと言ってくれたお礼だよ。


「全然構わないよ。楽しみにしてな」


『はいっ!!』


 ちょうどスキルアップを、と思ってたところだし。


 いっちょ、やりますか!


『あぁ、もうすぐ授業です。でも、もうちょっとお話しましょうっ』


 そんな健気なことを言ってくれるサユカちゃん。しかし、


『……これで今夜のうちの夕飯は豪華に。サエちゃん頭いー』


『ふふふー、私もご相伴に預かるのだー』


 聞こえてるぞ、サユカちゃんの後ろにいるだろう二人!


 でも人数分作るけどね。


 今日のメニューは――牛すじカレー! すじ肉は柔らかくなるまで時間かかるからな、じっくり作るにはもってこいだし、何よりカレーといえば子供の大好物の代名詞。間違いはあるまい。


 さてさて、やつらのほっぺた落とすぞー!


 ところで。


 僕って……寂しいのか、恵まれてるのか、どっちなんだろう?


 


 あの話の続編が帰ってきた!

 そして皆、声をそろえて言うだろう。

「てめぇ恵まれすぎだ、ざけんじゃねぇ」と。


 どうも、相変わらずトメロリコン疑惑に拍車をかける話を書いてしまったルシカです。でもトメ本人はロリコンのつもりはないんです、単に寂しいだけで……他に知り合いがいないだけで……


 あと、またもや感想の返信ができない状態ですが(時間的な理由で

 絶対に返信しますので、懲りずにいろいろ書いてくださいね^^;

 トメへの脅迫も可。



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