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カカの天下  作者: ルシカ
646/917

カカの天下646「クララちゃんの本気」

 こんにちは、サエですー。


 最近寒いですよねー。いっつも外にいるクララちゃんもきっと寒いと思って、今日は暖かい我が家にご招待してみましたー。


「ここだけ春です!!」


「あれー? 今まで暖房がある家に入ったことなかったの?」


「あったのかもしれませんけど気づきませんでした。クララ寒いの平気ですし」


 やっぱりねー。寒くなってもワンピース一枚なんていう姿でいるからおかしいと思ったー。ワンピースの色は枯れ木色になっちゃってるんだけど。


「なぜこんなに暖かいのですか?」


「これだよー、このエアコンさんが暖かい風をくれるの」


「エアコンですか! エアコン……何かの略ですか? ツアコンとかリモコンとかみたいな!」


「うん、そうだと思う」


「何の略なのでしょうか」


「エアは、エアー。風だと思うけど」


「コンはなんでしょう。コンコン」


「入ってまーす」


「トイレのことですか!? クララわかりました。つまりこれは風のトイレ! この温かい風は、人が用を足すと匂う生暖かい風と同じなのですね!」


「絶対に違うと思うよー」


 そんな発想できる人いないと思うし。そうだとしたらすごく嫌だし。


「じゃあコンってなんですか!」


「コン……根性?」


「根性! 熱い根性ですね! だから冬でもこんなに暖かいのですか、納得です!」


 納得してくれてよかったー。多分違うけど。


「サエおねーちゃん、エアコンさんが風を吹かなくなりました」


「あ、きっと部屋が完全に暖まっちゃったからだねー」


「クララ、もっと根性の風を浴びたいです!」


「じゃー設定温度を上げてみよっか。リモコンリモコン……ぽち」


 十秒後……二十秒後……


「ウンともスンとも言わないです」


「ほんとだねー」


「もしもーし! 入ってますかー。コンコン!」


「クララちゃん、だからトイレじゃなくてねー」


 しかも結構遠慮なくゴンゴン叩いてない? あ。


「なんだか変な音がします! ごぃんごぃんって」


「もう、クララちゃんが叩きすぎたせいで機嫌が悪くなっちゃったのかも」


「クララしょっくです! どうしましょう!」


「うーん、パコちゃんと同じように名前をつけてあげたら機嫌直してくれるかなー」


 エアコンだから……


「ねぇねぇ、クララちゃん。この子の名前、アッコちゃんとアコンちゃんのどっちがいいと思う?」


「アッコちゃんがいいです!」


「よし決定だー。ねぇねぇアッコちゃん、機嫌なおしてー?」


 呼びかけてもアッコちゃんはごぃんごぃんと重い音をたてるばかり。


「直してくれないねー」


「サエおねーちゃん、もしかしてアッコちゃんは風邪を引いたんじゃないですか? 最近流行ってるみたいですし」


「そうかも!」


 いつも風を吹いてばっかりだから、風邪を引いてもおかしくないかも!


「じゃ、どうしよー。悪化する前になんとかしないとー」


「サエおねーちゃんは風邪を引いたときはどうしますか?」


「えっと、布団で横になるねー」


「わかりました。アッコちゃんを布団で横にしましょう!」


「で、でもアッコちゃん、あんな高いところにあるのにー」


 設置してある場所、私じゃとても手が届かないしー。


「しかもすごく硬く固定されてるんだよー」


「クララに任せるです!」


 クララちゃんの目がキラリと光る!


「クララジャンプです!!」


 そしてその小さな身体は、二メートル以上の跳躍を見せ! 


「クララ手づかみです!」


 がっし、と音がはっきり聞こえるほどに強く鷲掴み!


「クララど根性です!!」


 メキメキメキ、と壁の一部と共にエアコンを引き剥がした!!


 ズダン!! と荒々しく着地したクララちゃんは、引き剥がしたエアコン――アッコちゃんを担ぎながら、とてもやりきった顔で一息ついた。


「く、クララちゃんって力が強いんだねー」


「大自然の力をなめてはいけません! さ、布団はどこですか!?」


「こっちー」


 使ってない部屋にクララちゃんとアッコちゃんを案内する。そして布団を持ってきて、敷いて、そこにアッコちゃんを寝かせて……壁の一部も引っ付いてるけど、細長いから簡単に布団を被せることができた。それにしてもなんかバチバチいってるのは、やっぱり体調が悪いからかな?


「それで、次はどうしますか!?」


「私だったら、お水飲むかなー」


 水分とらないとねー。


「わかりました、お水汲んできます!」


 たったかたー! と台所に駆け込むクララちゃん。


 そして間もなくコップを持ってきて……


「クララ躓きました!」


 転んだ拍子にお水がばら撒かれて、私とアッコちゃんとクララちゃんにかかって――


「しびびびびびび」


「クララらららびびびびです」


 なんか、ビリビリっときて――




 ……こんばんは、サカイです。


 仕事を終えて家に、帰ってきたのですが。


「布団の上に、サエ、エアコン、クララちゃん」


 人生でもそうそう見れない川の字ですねー。


「きゅー……」


「あらあら可愛い寝言ねーサエ。目を回してるけど」


 そのあと、二人を起こして事情を聞いてみたんだけど。


 とりあえずエアコンは風邪を引かないことはわかってくれたんだけど。


 ショートしている機械を水で濡らすと感電するから危険だということも理解してくれたんだけど。


 機械と人を一緒に考えてはダメということだけは、わかってくれなかったみたいだわー。人みたいな木があるんだから機械も――って、なんのことかしら?

 

 そんな誤解も可愛いから、別にいいんですけどねー。




 最近普通の話が続いたので、異様な話を書いてみました。

 はい、色々とアレですね。


 この作品にはコメディ補正というものがかかっています。一見、阿呆な行動に見えますが……実際にやると危険極まりないので真似しないでください。

 できない? ならいいです。

 

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