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カカの天下  作者: ルシカ
644/917

カカの天下644「いーしやーきいもー」

 こんにちは、カカです。


『いーしやーきいもー、おいもー』


 誰もが一度は聞いたことのあるこのフレーズ。最近あんまり見なくなった焼きイモ屋さんのトラックを、慌ててトメ兄が追いかけたのがさっきです。


 その戦果を頬ばっているのが今です。


「んまー」


「んまー」


 トメ兄と二人でもしゃもしゃ食べてます。


 美味しいおイモを食べながら、なんとなく考えてみます。


 もしも……石焼きイモが、焼かれるほうじゃなくて焼くほうだったら。

 

 イモがせっせと石を焼く。


 イモ自体は生のまま。


 却下!


 もしゃもしゃ。


 もしも……石焼きイモが、石焼きイボだったら。


 石で焼かれるイボ……


 想像するだけで熱い!! 痛い! 


 でもそんなの関係ねぇ。


 もしゃもしゃ。


 もしも……石焼きイモが腹黒だったら。


 腹、つまり中が黒い。


 焦げてるやん。


 もしゃもしゃ。


 もしも……石焼きイモが、床焼きイモだったら。


 床に落ちただけやん。


 汚いやん。


 もしゃもしゃ。


 もしも……石焼きイモが、意思焼きイモだったら、


『うおおお! 俺の意思が燃えるぜ!! ヒャッフー!!』


 イモのくせに喋るな暑苦しい。でも冬にはそれくらいがちょうどいいか。


 もしゃもしゃ。


 もしも……石焼きイモが、騎士焼きイモだったら。


『ふ。我こそは潤いの騎士、ビタミン!』


『俺は電解の騎士、カリウムだぜ』


『私は力の騎士、タンパクなるぞ!』


『生命の騎士、エネルギーを忘れてもらっては困る』


『ビタミンの兄弟騎士、ナイアシンと申す』


『五人揃って、騎士焼きイモ!!』


 なんかコメントしづらい。


『ならば、五人揃ってイモレンジャー!』


 とてもコメントしづらい。


 もしゃもしゃ。


 もしも……石焼きイモが、今日の夕飯でも出たら。


 飽きる。


 もしゃもしゃ。


「カカ、いま何考えてる?」


「いろいろ」


「そうか。それはそうとカカ」


「なんぞや」


「買いすぎたから、今日の夕飯もこれな」


「騎士焼きイモのバカ!」


「何言ってる」


「イモレンジャーめ!!」


 もしゃもしゃ!




 おまけ。


 一緒に外を散歩していたニシカワとアヤ。そこへ来るのは先ほど笠原家の前を通ったトラック。


『いーしやーきいもー、おいも』


「にしやきイモ!? 買わねば!」


「なんであんたは毎年そうやって同じ聞き間違いして飛び出そうとすんのよ!」


「だってにしが! 西が焼かれているのだ! 急げアヤ坊!」


「わけわかんないってば、ってコラ! 慌てすぎて財布から小銭落としてるわよ!」


「はやく、はやく買わないとぉぉぉぉ! にぃぃぃぃしぃぃぃぃぃ!!」


「でもニッシーが向かってるその方角は東ね」


「じゃいいや」


「いいの!?」


「だって西じゃないし」


「……もう何度も聞いてるんだけどさ、なんでニッシーとそう西にこだわるわけ?」


「なんとなくーとかニシカワたる宿命とか、いつも適当に答えてた気がするけど……最近その理由がわかった気がするんだよ」


「へぇ、それはおもしろいわね。なんでなの?」


「きっとね、僕は何か、夢中になれるものがほしかったんだ。だからなんでもよかった。そんなときに自分の苗字の『西』って文字がたまたま目に入って、コレだ! って思ってしまったんだよ」


「……へぇ」


「変かな」


 うん、と頷く人は多分たくさんいるだろう。


「う、ううん? いいんじゃないの、そんなのも……それに……何かに夢中になってる人って……その……ちょっと、格好いいし、なんて」


「ん? アヤ坊、聞こえなかったんだけど、後半なんて言った?」


「ち、ちち、ちょっとよ! ちょっと!!」


「なにが?」


「うっさい! ニッシーなんか東にいっちゃえ!」


「僕を殺す気か!?」


「焼きイモ買ってこいってことよ!」


 ハイハイ焼きイモだけじゃなくて色々とごちそうさま、もういりません、という人も多分たくさんいるだろう。


 でもそんなの関係ねぇ。




 皆さんの予想に反して、やつらは微塵も出てきません。

 だって出すぎだし。


 出てほしかった? ネタが古い?

 でもそんなの関係ねぇ。

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