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カカの天下  作者: ルシカ
640/917

カカの天下640「サユカの任務、貢がせ編」

 ここ、こんにちは、サユカですっ!


 ちょっとまずいです、かなりやばいです、すごく危険です!


 何がかといいますと……今ですね、トメさんといつもの和菓子屋さんでお茶してるのですが……なんとっ!


 財布を忘れましたー!!


「どうしたの、サユカちゃん」


「いいえぇ、なんでもないですっ!」


 どうしましょう……楽しいはずのトメさんとの会話もまったく耳に入ってきません。なぜわたしはいつもすんなりトメさんとお喋りできないんでしょうか。会ったばかりの頃に戻ったかのように焦りまくりです。


 だって……このままだとっ!


 わたしが財布持ってない→トメさんが払う→トメさんに金のかかる女だと思われる→サユカしょっくです! →ショック死。


 こうなってしまいますっ!


 なんとかしないと……考えて、考えるのよサユカ。


 この場合、わたしがお金を持っていない以上はトメさんに払ってもらうしかない。ならば考えることは一つ、いかにわたしの印象を悪くしないままお金を出してもらえるか、ということねっ!


 そうね……ドラマとか漫画で、よく男の人が喜んで女性に貢いでいる場面があったわよね。あれは、そう、確かお色気とかで誘惑してたわ! 女性にメロメロになった男の人が「僕が出すよ、いいや出させてください」と頼みこむ、これだわっ!


「サユカちゃん? 本当にどうしたの」


「えっと」


 すいません、トメさん。


 今から誘惑してみます。


 引っかかってくださいねっ!


「うっふんっ!!」


「……はい?」


「あっはん!!」


「サユカちゃん、大丈夫? 頭」


 引っかからないわっ!! さすがはトメさん、ガードが固いわね。


 わたしに何が足りないの……? あ、そういえば。


「ちょっとお手洗いにいってきますっ!」


「ああ、それ我慢してたから変だったのか」


「違いますっ!!」


 トイレに駆け込み、個室に入る。


 思い出した――ドラマでも漫画でも、女性は頬を赤らめていたわっ! あれが色っぽくする秘訣なのねっ!


 というわけで頬を染めるために、その場で足踏みダッシュ!


 個室だからどうせ誰も見てないわ。ダッシュダッシュダッシュ!! だだだだ!!


 はぁ……はぁ……いい感じに身体が温まったわ。これなら頬も染まってお色気満点ねっ!


 鏡で自分の頬を確認したわたしは、満足げに頷いてトメさんとの席へ戻った。


「おやサユカちゃん、おかえりなさい」


「ゼーハーゼーハーゼーハー」


 走りすぎた。作戦失敗。


「なんでそんな息切らせてんの」


「ぜぇ……いいえ、ちょっと……はぁ……」


 うぅ、お色気どころじゃないわ。うえ気持ちわる。こ、こうなったら……あ。


 ふと向こうの席に座っている二人と目が合う。


 イチョウさんと、ヤナツ。


 わたしの脳裏に、あの二人にお金を借りるという選択視が閃いたわ! とにかく今はトメさんの評価が下がりさえしなければそれでいいのよっ!


「トメさん!」


 早速トメさんに言わないと!


「ゼーハーゼーハーゼーハー!!」


「落ち着け」


「ハー……はい。あの、友達があそこにいたので、ちょっと行ってきていいですか?」


「うん、いってらっしゃい」


 よかったぁ。わたしは息を整えながらも早足でイチョウさんたちのテーブルへ向かった。


「イチョウさん!」


「サユカさん、奇遇ですわね。もしやもしやデートでしょうか?」


「そうよっ!」


「まぁ」


 トメさんがどう思ってるかわからないけど、わたし的にはデートだからいいわよね。


「あれ、おまえってタケダが好きなんじゃねぇの?」


「もっぺん海まで流されたいの?」


「なな、なんだよぅ。よくわかんないけど悪かったよぅ」


 そんなことはどうでもいいのよっ!


「イチョウさん!」


「は、はい」


「金出せっ!」


「ひ、恐喝ですか!?」


「そんなわけないじゃないっ」


「まてサユカ、今のはそうとしか聞こえなかったぞ」


 海の藻屑の声なんか聞こえないわ。


「いまね、その、確かにデートなんだけど」


「わぁ、とても羨ましいです」


「きゃは、やーんそんな、デートって言っても一緒にお茶してるだけだし、でもでも羨ましい? えへへ、わたしもすんごく幸せで」


「その話長いか?」


「あんたの人生よりは短いわよっ」


 って、確かに惚気てる場合じゃなかったわ。


「実はお財布忘れちゃったのっ! でもあの人に格好悪いところ見せたくなくて……お願い、明日には返すからお金貸して!」


「ぎく」


 ……ぎく、ってなに、イチョウさん。


「どうしたんだよ妹、姉貴に小遣いもらったばっかだろ? 貸してやれよ」


「ええと、ヤナツさん?」


「なんだよ」


「か、金出せ!」


「なんで!?」


「その……わたくしも、お財布を忘れまして」


 仲間がいたわ。なんて嬉しくないのかしら。


「ということですので、ヤナツさん、わたくしの分のお勘定もお願いしていいですか?」


「わざとじゃないのか、まったく……俺が財布を忘れてたらどうなってたか」


 ぶちぶち言いながら財布を開くヤナツ。なんだ、こいつ結構いいヤツじゃないのっ。


「……あ、お金忘れた」


 こいつ結構だめなヤツじゃないのっ。


「うう、どうすれば――あ、トメさん!」


 こっちに来ちゃったわ!


「お、なんだ。知り合いってその二人か。運動会のときの」


「どうもその節は大変ご迷惑をおかけいたしました」


「……よう」


 ちゃんと挨拶しなさいよヤナツ!


「ん。ところでサユカちゃん?」


「はいっ」


「僕、財布忘れたんだけど」


 ぎゃー!!


「なんて、うっそーん……なんで三人ともコケるのさ」


 も、もうトメさんたらお茶目なんだからっ! そこが好き!


 


 結局、そのときはお金が無いと言うイチョウさんとヤナツのお金を立て替えるついでにと、わたしの分もまとめて払っちゃおうとトメさんは言ってくれたわ。おかげでわたしが財布を忘れたことはバレなくてすんだの。イチョウさんに一つ貸しね。


 それにしてもトメさんてば、なんて優しい人なのかしら、なんて太っ腹な人なのかしら。


 そこが大好き。

 



 短いペースでサユカン任務発動! 連続任務の希望があったから書いてみましたが……さすがにバランス的にもう一発はいけません笑


 ちなみに。一応は和解したイチョウさん&ヤナツコンビですが、イチョウさんのヤナツに対する呼び方は元からこうですのでお気になさらず。


 初雪の話を書いてしまおうかと思ってたら降ったのはまだ一部の各地だと気づき、やめたのは内緒。

 だってこっち降ってるもん……寒いもん……うう。

 酒を(ぉぃ


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