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カカの天下  作者: ルシカ
639/917

カカの天下639「もうすぐそんな季節ねぇ」

 ねえねえ、カカですけど。ちょっと聞いてくださいよ。


 人って、いきなり意外なもの見ると驚いたりするじゃないですか。


 でも、あまりにも意外すぎるものだと変な顔で固まっちゃうと思うんですよ、今の私みたいに。


 そう、話は二分ほど前に遡ります。




 私は自宅のトイレに入ろうとして、鍵が閉まってることに気づいた。


「トメ兄?」


「は、入ってまーす」


「入ってるんじゃなくて出してるんでしょ」


 トイレとはそういうもんだ。


「それもそうだな、はは」


 ……あれ? いつもだったらツッコミくるのに。


「どうしたの、トメ兄。何かあったの?」


「や、実はな」


「うん」


「人がトイレで大きい方をしてるっていうのに、妹が話しかけてくるんだ」


「それは大変だ」


「だろう?」


「そして大便だ」


「そうなんだよ」


「じゃあ開けるね」


「なんで!?」


 や、だって大便でしょ? ちょっかい出さないと。


「このトイレの扉、鍵かかってても開けるコツあるんだよね」


「わ、バカ! やめろよ」


「大丈夫だって、ちょっと写真に撮ってサユカンに見せるだけ――」


 カチャ、とトイレの扉を開けるとそこには。


 サンタがいた。


 


 そんなわけで、変な顔して固まってるわけですが。


「ほっほっほ、バレてしまったのう」


「……ばぁば?」


「そうです、私が、変なおばあちゃんです」


 どっかで聞いたことあるな、このセリフ。や、それはともかく。


「さっきまでトメ兄の声じゃなかった?」


「声マネなんぞ遊びの一種じゃ」


 忍者の親すげぇ。詐欺しほうだいだ。


「……それで、なんでこんなところでトイレの大きい方してるの?」


「もよおしたんじゃ」


 そりゃそうか。


「もう終わった後だったからよかったものの、最中だったらどうするんじゃまったく」


「それは勘弁だね。でもさ……なんでここにいるの」


「ぐ」


 まさかまたトメ兄のパンツを?


「まぁまぁ、こんなところで立ち話もなんじゃ。部屋にいこうではないか」


 たしかにこんなところだね、トイレだし。


 というわけで、私たちは居間へと移動して一緒にお茶を飲むことになった……あれ? トメ兄いつの間にか出かけてたのか。気づかなかった。


「はぁ……茶がうまいのう」


 おお、やはり本物のおばあちゃんは違う。なんてハマッてるセリフなんだろう。


「私もズズズ……んま。おやつの栗ようかんどうぞ」


「かたじけない」


「ねね、ばぁばってさ、あんまり人のいるとこに下りてこないんだよね?」


「トメに聞いたのかの? そうじゃが」


「なんで?」


「……わしはの、人と触れ合うのはあまり得意じゃないのじゃよ」


「触れないの? やっぱり死んでるんだ!!」


「そんなわけなかろうが。幽霊と違うぞい」


 そか、そうだよね。ほら、私の中じゃつい最近まで死んでたから。


「わしはの……人の温もりが苦手なのじゃ。冷たい人間なのじゃ」


「死体だから!?」


「違うと言うとろうが。心の温度の話じゃ」


 なるほど。


「でもばぁば、普通に私と喋ってるじゃん」


「これくらいは、の。ただの、わしは根のほうで非情な人間なのじゃよ」


「じゃあ私と一緒じゃん」


「何を言うか。全然違うじゃろうに」


「だって私よく言われるよ、非常識だって」


「……いや、非情と非常識は違うじゃろ」


「ばぁばが非常識なのは違わないでしょ」


 押し黙るばぁば。


 だって私が正しい。現代で声マネやらシュバッとやら披露する忍者の、どこが非常識じゃないというのか。


「ね、おそろい」


「む……おそろいか」


「そう、おそろい」


 おそろい、としみじみ呟くばぁばが、ちょっと可愛かった。


「ほらほら、難しい顔してないで笑って笑って。もっとお話しようよ」


「むぅ……そうだの」


「私全然覚えてないんだけどさ、じぃじってもう死んじゃったんだよね」


「ああ、かなり昔にな」


「どうして死んだの?」


「戦じゃ」


「戦争?」


「いや、合戦で」


「いつの人!?」


 それから三十分ほどだけど、ばぁばと喋った。


 ばぁばは自分をおもしろくない人間だとか言ってたけど、充分に楽しかった。そもそもトイレから現れるサンタという時点でおもしろすぎるのに何を言ってるんだろね? 覚えないけど昔の私っておばあちゃんっ子だったのかな……久々に喋るはずなのに、すらすら話すことができた。


 そして、トメ兄が帰ってくる直前。人と触れ合うのが苦手と言っていたばぁばは、また来ようかの、と照れくさそうに笑ってくれた。




 そして。


「あっれー? 僕のパンツがまた減ってる」


 深まる謎。ほんと何しに来てるんだろばぁば。




 おばあちゃん、またもや登場です。そろそろサンタの季節ですからね、ていうか寒いったらありゃしない。さっき雪降ってましたよ雪!!

 あーさぶ。電気代節約のために意地で我慢できるうちは暖房つけない派の私としては寒さ的にも頑張り時です。数日すれば身体が慣れるんですよねぇ、なんとなく。

 あと風邪やらインフルやら流行ってるみたいですし、皆さん気をつけましょうね。

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