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カカの天下  作者: ルシカ
637/917

カカの天下637「カカとしりとり、レベル4」

「しりとりしよう」


「おう、いいぞ」


 こんにちは、トメです。


 今日も今日とて特になんでもない日。居間でのんびりしてるとき、ふと思いついたように呟いたカカの言葉から、しりとりをすることになりました。


「普通のしりとりか?」


「や、それはおもしろくない」


 やっぱりか。


「今日のしりとりはね、動きでするの」


 ……なんのこっちゃ。


「例えばね、トメ兄がしりとりで、『ゴリラ』って答えようとするでしょ」


「ふむ」


「そしたらトメ兄はゴリラの物真似をするの。うほうほーって」


「ほう」


「で、真似をするだけで、答えが『ゴリラ』ってことは言わないの」


「……ん?」


「それで、私がそれを『ゴリラ』って当てることができたら、私の勝ち」


「おい」


「私がわからなかったらトメ兄は答えを言って、次は私が『ラ』から始まる答えを考えるの。『ラッパ』ならラッパの真似をして、トメ兄がそれを当てることができたら勝ち。これの繰り返し。どう?」


 どうもこうも……


 もはやしりとりじゃないし。


「でも……暇だし、それでいっか」


「よーし。まずは私がやるから、当ててよ?」


「わかった」


 二人して立ち上がって向かい合う。要は、カカが何の真似してるか当てればいいんだよな。


「まずは定番、しりとりの『り』から始まる言葉ね」


「おっしゃ」


「いくよー」


 カカはその場にしゃがみ込んだ。


「……え、それだけ?」


「うん」


 しゃがみ込んで、丸まってるだけだぞ。


 え、これ、なに?


「わからん」


「ギブアップね。正解は『りんご』だよ」


「わかるか!!」


「え、だって丸まってたじゃん」


「この世に丸いものがいくつあると思ってるんだ!」


「いいからいいから。次はトメ兄の番だよ。りんごの『ご』ね」


 むぅ……や、逆に考えよう。とてつもなく当てにくいのは向こうも同じ。だらだらと続けるには最適の暇つぶしじゃないのか、これは。


「えーと」


 ともかく『ご』だな。『ゴリラ』はさっき例に出したからつまんないし……よし。


 僕は背筋を伸ばしたまま腰を曲げて、壁に背をつけ、寄りかかる。足も伸ばしたままなので、僕の身体は『く』の字のまま壁に押し付けられた。


「……それだけ?」


「おう」


「ご……ご……ご?」


 ごごごごご。


 特に空気が重みを増しているわけでもない。カカの背後のイメージである。なんかこう、漫画的に『?』マークと一緒に『ご』って文字がいっぱい浮いてるみたいな感じ。


「ごー……降参!!」


「答えは『五時』だ」


 時計の針な。


「わかるかー!!」


 そうだろうそうだろう。さっきの『りんご』もそうだった。レベルたけーよこれ。


「ほれほれ、次はカカだぞ」


「よーし、絶対わかんないかんね」


 カカはその場に座り、ついさっきまでしていたように、ズズズとお茶を飲み始めた。


「あれ、しりとりやめたのか?」


「やめてないよ」


 ということは、これが答え……でも、いつも通りだし……


「降参」


「ふ、『じじい』だよ」


「いつも通りじゃないか! いつもじじいなのかおまえは!」


「トメ兄だって似たようなものでしょ!」


 く、のんびり緑茶をすすって「はー極楽」とか呟くのがじじくさいというのならば、反論はできん…… 


「次トメ兄ね! 今度は当ててやる!」


「よし、『い』だな」


 僕はその場で立ったまま、じっとしていた。


 それだけである。


「……え、しりとりやめたの?」


「やめてないぞ」


「え、でも何もしてないし……むー、い、い、い、い」


 いいいいいいいいいいいいいい!


 変な鳴き声。あ、別にカカがこれ叫んだわけじゃないよ? カカの背後のイメージね。


「わかんない!! 答えは!?」


「『息』」


「わかるか! いつも通りじゃん!」


 や、だってねぇ。仕方ないじゃん?


「じゃあ私だね、これはどうだ――」




 一分後。


「わかったぞカカ、それ『吸血鬼』だ!」 


「ぶっぶー! 答えは『キシャァァ!』だよ!」


「擬音とかズルくね!?」




 数分後。


「わかったよトメ兄、それ『待ち合わせ』でしょ!」


「ブー。『間に合った』でした」


「似たようなもんじゃん!」


「さっきのおまえの『貝』と『牡蠣』だって似たようなもんだっただろ!?」




 一時間後。


「……なにやってんの、弟と妹よ」


 対決中に姉が訪問してきた。


 そのときの僕らはすでに順にやるのが面倒になっていて、互いに同じ頭文字の動きを見せ合っていた。最初に当てたほうが勝ちだ。


 僕はかっちんこっちん動き、カカはタコみたいな口をしながらくるくる回ってる。


「……もう一度聞くけど、なにやってんの?」


「いま勝負中!」


「ねぇお姉、私たちのこれ、何に見える?」


「ばか」


 姉に言われた!!


「違うの! 『す』から始まる言葉!」


「すごいばか」


 姉に言われた!!


「違うよ!!」


「そうだ、違うぞ姉!」


「……じゃ、なにさ」


「僕はするめイカだ!」


「私は酢飯だよ!」


「どこが」


「するめイカってかたいから、硬い動きしてたろ」


「酢飯ってすっぱいし寿司にも使われるから、すっぱい顔して握られるっぽい動きしてたでしょ」


「やっぱあんたらすごいばかだ」


 姉に言われた!!


 でも、仕方がない気もする。とりあえず暇は潰せたのでめでたしめでたし。




 地味に長く続いているしりとりシリーズ、四話目です。

 ええ、もうしりとりかどうかあやしいです。

 でもまー単なる暇つぶしですのでね。


 ――お客さん、もしお暇で相手がいるなら、やってみたらどうっすか?

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