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カカの天下  作者: ルシカ
627/917

カカの天下627「黒い画面と黒い人」

 こんにちはー、サカイです。うふふー。


 今日はですねー、サエに頼まれてパソコンの使い方を教えることになっているのですよー。もー楽しみで楽しみでー!


「お母さん、聞いてよー」


「はいはいー?」


「パコちゃん動かなくなっちゃった」


 パコちゃんですってよ奥さん! うちの子ったら可愛いと思いません!? あなたなんかより!


「どうしよー……」


「ほらほら、こんなときのために説明書もらったでしょー」


 サエの誕生日のとき、誰かは知りませんが『パコちゃんの説明書』というものをプレゼントしてくれました。おそらくはサエの機械オンチを知っている学校の友達か……ぐっじょぶです。だってその内容がとーっても素晴らしいんですから!


「うん……えっと、パコちゃんが停止した場合は……」


 サエと一緒に手書きっぽい説明書を覗き込みます。


 Q、パコちゃんが停止しました。  


 A、パコちゃんは拗ねてます。しかし、「きゅぅーん」とおねだりする子犬のような声を出してください。


「ほらほら、サエ。椅子から立って」


 椅子をずらして、机の上にあるパコちゃんの真正面にサエを立たせます。


「さ、やってー!」


「えと、きゅぅーん」


「ポーズつきで!」


「え、えっと。子犬のポーズ……」


「はい、犬耳」


「なんでこんなものをー」


「いいからいいから尻尾もつけてー。ほら、さんはい」


「きゅぅーん、きゅぅーん」


 …………!!


 ええと、ビデオビデオ、鼻血鼻血、ティッシュティッシュ。


「お母さんどしたのー」


「ううん、心配いらないわサエ。お母さんさっきレバーいっぱい食べておいたから」


 いくら流しても大丈夫ですよーだばだばだば。


「そっかー。でもパソコンは暗い画面のままなんだけどー」


 それはね、サエ。お母さんが予め保存しておいた真っ黒な画面を開いているだけなのよ? ペイントプログラムを最小化すればすぐに直るの。でも教えないの。ふふふー。


 ……気のせいですかねー。画面よりもあんたのほうが黒いっていう声が聞こえたような。


「ねーねー、どうするの? お母さん」


「あ、はいはいー。ほら、説明書をよく読んでみなさいな。続きがあるでしょ?」


「ほんとだ」


 ――それでもダメなら、できる限り可愛くおねだりしてみましょう。


「ねーパコちゃん。お願い、仲良くしよー?」


「サエ、もっと可愛く」


「ねーねーパコちゃん。私とあそぼ?」


「サエ、ポーズ」


「ねーねーパコちゃん。私とあそぼ? きゃらーん♪」


 きゃらーんっていうのはポーズをキメたときの効果音ですよー。どんな可愛らしいポーズかは語感でなんとなく想像しましょー。


「サエ、自分のこと名前で呼んで」


「ねーねーパコちゃん。サエとあそぼ? きゃらりん♪」


「さ、サエ、赤ちゃん言葉いってみよう」


「ねーねーパコたん、サエとあそびまちょ? きゃらりらりん♪」


「も……もうちょっと言葉増やしてみようか」


「ねぇねぇパコたん、サエね、さびちぃの。わたちといっちょにあそびまちょー、きゅぅーん。きゃらりらりんぽん、しゃらららーん♪」


 しゃらららーんですよあなた!! 


 もうダメです!! パソコンなんぞに可愛らしく必死に話しかけるこの娘の滑稽さと可愛らしさといったらもうもうもう!! これ以上エスカレートさせたら私死んでしまいます!! 殺人事件です!! 死因は萌え死に!! 凶器は萌え! 犯人は罰としてアイドルデビューの刑です!!


「あ、なおったー」


 サエの死角でマウスを操作して黒画面を最小化。ぐっばい私のしゃらららーん……ビデオに撮ったからもう充分です。これさえあれば元気になれるし、ダビングすればカカちゃんへの取引材料にもなりますし。


「これで普通に使えるねー」


「待ってサエ」


「鼻血ふきなよ」


「うん……よし鼻詰めた。えっとね、操作するときに注意する点があるの」


「なにー?」


「ほら、説明書のここにもあるでしょ」


 Q、パコちゃんの機嫌をとりたいのですが。


 A、矢印キーを押すとき、その方向へお尻を振りましょう。


「やってみて」


「こ、こうかな」


 サエの小さいお尻が右にくい、左にくい。


 くい、くい、くい。


 ふり、ふり、ふり。


「死んでもいいですか?」


「なに言ってるのお母さん」


 い、いやー、そろそろ出血多量の領域に……


「あ、あとね、サエ。キーボードを打つときは効果音をつけるといいのよー」


「わかったー」


 何も知らない子ってすごいねー。


「ぴ、ぽ、ぱ」


 私の心も打たれてます。


「きゅん、きゅん、きゅーん」


 私の心もきゅんきゅんです。


「ぴちゅーん、ぱちゅーん」


 私の脳もぴちゅーんです。


 はぁ……サエのお母さんでよかった。サエが機械オンチでよかった。


 私は今日も幸せです。


 ……どう? サツマさん。あなたの分まで幸せになっちゃうからね。羨ましいなら……ビデオの中に少しくらいなら、映ってもいいですよ。ふふ。クリックかちっとな。 


「わ、また真っ暗になっちゃったー!!」


 とりあえず、おねだりもっかい見よ。


 


 サカイさんがサエちゃんにパソコンを教えている話が見たい! というリクエストをいくつかいただきまして。

 シニア船さんにいただいた誕プレも加えて書いてみました。


 なんかこんなのをうきうきしながら書いてる自分を振り返るとちょっとキモいなぁなんて思ったり。

 ま、喜んでくれる人がいるなら……


 いるよね!?


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