カカの天下620「もぐもぐタイム」
こんにちは、トメです。もぐもぐ。
何がもぐもぐかというと、現在カカと二人で夕食中だからです。もぐもぐ。
「ねぇトメ兄。この玉子焼き、なに? 出血してるよ」
「ああ。前に姉がさ、居酒屋の『病院』で食べためんたい出し巻き玉子がめっちゃ美味しかったーってうるさかったから、適当に作ってみた」
「この赤いの、めんたいこ?」
「そそ」
「そか。それにしても玉子焼きの形がぐちゃぐちゃだね」
「めんたいこ入れるとうまくいかなくてさぁ」
職人さんはすごいねぇ。もぐもぐ。
「食べにくかったらご飯にかけてみ」
「そうする。お醤油とって」
「ほれ」
「ん」
もぐもぐ……
「んま」
「な。めんたいこに玉子の組み合わせっていけるよな」
「おかわりしちゃお」
「おぅ、たくさん食え」
もぐもぐ。
「あ、お母さんのCMだ」
「シャンプーのやつか。四十代でもこの艶やかさ……って、母さんがやっちゃ意味ないよな」
「元から綺麗だもんね、髪も本人も。異常に」
「同じもんを一般人が期待するのは間違ってるだろう。ま、人気は出るだろうけど」
「そういえば、ふと思ったんだけど。お父さんとお母さんってどうやって知り合ったのかな?」
「ああ、結構おもしろい話が聞けるぞ。今度聞いてみ」
「うん」
もぐもぐ。お、CM終わった。
『さて、ここでクイズです!』
「トメ兄、答えてみ」
「よしきた」
『あなたが生きてる意味って、なーんだ?』
「クイズって軽さの問題じゃねーだろ」
もぐもぐ。
「おかわり」
「食うのはやいな」
もぐもぐ。
「あ、そうだ。サンマ! 今度サンマ買ってきて」
「旬だしおいしいからいいけど、なんでさ」
「こないだね、サユカンに綺麗な食べ方教えてもらったの。やってみたい」
「わかったよ」
もぐもぐ。
『次のクイズです!』
「カカ、やってみ」
「よしきた」
『あなたが死ぬと、どうなるでしょう?』
「地球も死ぬ」
「そいつぁ大変だ……チャンネル変えていいか? もうヤだこのクイズ」
「許可」
もぐもぐ。ん、カカが立ち上がった。
「ちょっとトイレいくね」
「ん」
てってって……
「よし、隙あり」
さささっと。
「……ただいま。ん、あれ?」
そ知らぬ顔でもぐもぐ。
「おかずが増えてる! ハムフライだ!」
にやり。
「うわ何この嬉しさ」
「ふふん、日々サプライズは必要だよな」
「わーい。ソースちょうだい」
「ほれ」
もぐもぐ。
「んまんまサクサク」
「安いわりにうまいんだよな、あそこのスーパーのハムフライ。一つ78円でこれだぞ?」
「なんで77円じゃないんだろう? 私だったらそうするなぁ」
「知らんよ」
「んむ、ご飯すすむ。おかわり」
「はいよ。僕もしよっと」
もぐもぐもぐもぐ……
「で、カカさんや」
「なんだいトメさんや」
「オチは?」
「ないよ」
「そうか」
ごちそうさまでした。
箸休めにこんな話を、と言いつつ箸を動かす描写しかないとはこれいかに。
オチがない、というオチです。
あ、明日の昼12時でサエちゃんのプレゼントを〆切りますのであしからず^^