カカの天下619「結婚とは何なのだろう」
ただいまーっと、トメです。
仕事から帰ってきた僕は適当に着替え、居間へと戻ってきたのですが……
「……ぱり」
えーと。
「……ぽり」
なんか、テーブルに肩肘つきながら煎餅かじりつつボケーっとテレビを眺めてる小学生がいます。多分うちの妹だと思うんですが、なんか背中が煤けている風にも見えます。
見ているテレビの内容は――
『先輩! 仕事やめるって本当ですか!?』
『……ああ』
『やめてください!』
『んだとてめぇ』
『いえ、やめることをやめてください!』
『わかりにくい言い方はやめろ!』
『二人共もうやめて!!』
わけわからん。
「なぁカカ。何をたそがれてるんだ?」
「私たち……結婚したんだよねぇ」
「……さも僕とアナタが結婚したみたいな言い方はやめてくれませんか?」
「なんで一緒に暮らしてるのがトメ兄なんだろ」
「要望に応えてくれてありがとう、とても不愉快だ」
まったくこのお子様は……や、たしかに皆で結婚って言ってたから、僕とも一応結婚したことになるかもしれないけどさ。
「お、結婚特集だ」
「テレビか?」
見てみると、先ほどの妙なドラマは終わっていた。
『本日はですね、世に残る結婚の名言! これを紹介していきたいと思います!』
ほう、これまた都合のいい番組で。
『えー、まず一つ目。結婚とは、二人三脚である』
「これはもうやった」
カカの言葉に頷く。この格言を作った人も、よもや本当に二人三脚しているヤツらがいるとは思うまい。
『結婚とは、人生の墓場である』
「死んでくる」
「待てぇい!!」
本当に墓場に入られたらたまらんぞ!
「冗談冗談」
「おまえは本気で墓場行きそうで怖いんだよ……」
『それでは次の名言です――あらゆる真面目なことのなかで、結婚というやつが一番ふざけている。byボーマルシュ』
「じゃ私にぴったりじゃん」
「そだな」
カカは常にふざけてるしな。
『結婚とは、その主人公が第一章で死んでしまう小説のようなものであるby作者不明』
「死んでくる」
「だから待てや!!」
世の偉人たちはツッコミがいのある言葉ばかり残すなぁ。
『男と女とが結婚したときには、彼らの小説は終わりを告げ、彼らの歴史が始まる。byロミュビルュス』
「じゃあこれ最終回?」
「いやいやいやいや!!」
最終回とか言っちゃダメですから!!
『よい結婚はあるけれども、楽しい結婚はめったにない。byラ・ロシュフコー』
おぉ、これは。
「私たち、楽しい結婚ができたよね」
「ああ、確かに楽しかった」
「うん……楽しかった」
「あぁ……」
「皆、笑ってたもんね……」
「うん……」
「ご愛読、ありがとうございました」
「だから最終回にすんなよ!!」
続くよ!? まだまだ続くよ!!
『すべての悲劇というものは死によって終わり、すべての人生劇は結婚をもって終わる。byバイロン』
「……ねぇ」
「終わらないってばさ!」
おのれバイロン。誰だか知らんが強そうな名前だな。
『女房は死んだ、俺は自由だ! byボードレール』
「死ねトメ兄!」
「なんで僕が女房役なんだよ!!」
この人もなんつーこと言うんだ。家庭にもいろいろあるだろうけどさ!
『恋は人を盲目にするが、結婚は視力を戻してくれる。byリヒテンベルグ』
「結婚って目にいいんだ」
「違う違う違う」
眼科いって結婚を奨められたらビビるよな。
『その女性がもし男であったならきっと友達に選んだろう、と思われるような女でなければ妻に選んではいけない。byジュベール』
「おー……これはなんだか私とサエちゃんにぴったりっぽい」
「この人はそんなつもりないだろうけどな」
『結婚は、デザートより前菜が美味しいコース料理である。byオーマリー』
「お腹すいたね」
「そだな」
さて、夕食にするかな。
サブタイのわりにライトな内容、いかがだったでしょうか。
短く感じますか? 実はこれが基本の長さです。〜編とかやるたびにその後で「こんなにあっさりしてたっけ」と再確認しますね笑
結婚とは――
んー。
したことないからわかりません^^;