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カカの天下  作者: ルシカ
617/917

カカの天下617「お結び式 挙式しまーす」

 カカです。


 今日は私とサエちゃんのお誕生日パーティ結婚式風、ということで、皆と楽しくわいわいとやってます。


『それでは次は――おお?』


 シュバッ! という無駄に格好いい音と共に、どこからともなく降ってきたのは……お父さんとお母さん!!


「遅くなってごめんね!」


「俺様ただいま参上!」


「馬がほざくな」


 トメ兄の言葉に頷く。お父さんはあくまで私に顔を見せたくないのか、私が運動会で怪獣アネゴンの頭部に使った馬の被りものを装着していた。ダサい。


「きゃー! カカ君てば可愛い! 結婚して!」


「か、母さん! 俺というものがありながら」


「馬がほざくな♪」


「ぶひぃぃぃぃん!!」


「それ豚だろ」


 ダメージを受けてるお父さんを尻目に私はお母さんに抱きしめられてかいぐりかいぐりああああドレスがドレスがぁぁぁぁでも柔らかくてあったかくていい匂いぃぃぃ――おろ?


「あら?」


 お母さんの抱きしめ攻撃から引っ張り出された私はくるくる回りながらサエちゃんの胸に?


「おれの女に手を出すなー」


「さ、サエちゃん……!」


「手を出すなら、お金」


「サエちゃぁぁぁぁぁぁん!!」


 本当にお金に困ってるの? なら貸すよ? 五千円くらいなら持ってるから!!


「サエ君もかーわいー」


 あ、サエちゃんもお母さんの抱きしめ攻撃に!


「おろー?」


 と思ったら私と同じように引っ張り出されてくるくる回りながら、今度はサカイさんの胸に。


「俺の女に手を出すなー!!」


 待てぃ、私の女だ!


「全部あたしのだ!」


「お姉関係ないでしょ!!」


「クララも混ぜるです! 俺の女はどこですか!?」


「知らないよ!!」


「タマちゃんです!」


「なんで自己紹介してるのー?」


 そんな女同士の合戦を繰り広げている後ろでは、


「なぁ馬父」


「それだと馬の乳のように聞こえるな。吸うか?」


「吸うか!! そのボロいの、なんだ?」


「ああ、なんだか東京湾辺りで樽に詰められて浮いてたのを道中で見かけたから助けてきた」


「ヤナツゥゥゥゥゥゥ!!」


「おおサラさん。よかったな……しかし父さん。樽詰めされてたのによくわかったな?」


「顔だけ出てたのだよ」


「うわ、惨いわねっ!」


「……俺……二度と、苛めしない……だって、したら……死ぬもん」


「うん……うん……怖かったね……生きててよかったね……」


「おぉ、そういえばトメよ。ふっふっふ」


「なんだよその意味深な笑いは」


 こんなやり取りがされていた。すると、いきなり私の携帯からメール着信音が聞こえてきて、


「んしょっと」


「なぁカカ。てめぇ今どっから携帯出しやがった?」


「ん、ほら。このドレスごわごわしてるから挟むとこいっぱいあるんだよ」


「んなもん挟むなよ、せっかく綺麗なドレスなのによ」


「テンカ先生みたいに胸で挟めればいいんだけど」


「……オレは無理だ」


「残念です」


「うっせぇ!」


 怒られちった。さて、メールのほうは?


『このボロクズを拾ったおかげで、より長く背中に当たる母さんのおっぱいを堪能できたぜへへへ』


 …………


「む? トメよ。メールはきておらんのか?」


「ん、きてないぞ。カカにはきたみたいだけど」


 ピキ、と固まる馬。


 ぎ、ぎ、ぎ、とこちらを向く馬。


「間違エチャッタ♪」


 私はニッコリ微笑んだ。


「死ね」


 馬は消えた。でも多分死んでない。隠れて泣いてるだけだ。残念だ。


『さてさて、ちょうどよく皆揃ったことですし、そろそろ挙式のほうに移りたいと思います』


 おーパチパチパチ! ナイスだよキリヤン、どこぞの最低馬がいなくなったときに「ちょうどよく」って言うあたりがシビれるね。


『えー、新婦のご要望により、まずは指輪交換ならぬプレゼント交換からです! 新郎、プレゼントをどうぞ』


 よしよし、まずはサエちゃんのをもらわないとね。私のプレゼントは最後じゃないと。


「ちょっと待ってねー。お母さーん!」


 む、サエちゃんはサカイさんと、ごにょごにょ何やら相談中……


 やがて私のほうへと振り向いたサエちゃんは申し訳なさそうに頭を下げた。


「ごめんねカカちゃん、私のプレゼント、間に合わなかったみたいなのー。もうちょっとしたら渡せると思うから、待ってくれる?」


「うん、いいよ」


 私にとっては今の時点でもう幸せなわけで。それをさらに幸せにしてくれるっていうなら、どれだけでも待つよん。


「ごめんねー。その代わり、絶対に最高のプレゼントだから期待しててー」


 おー、最高ですか。私にとって最高っていったら相当なもんよ? 期待期待。


『ふむ、どうやらサエちゃんのプレゼントはまだ先になるようですね。それでは――カカちゃんのプレゼントに移りたいと思います!』


 そして、私のプレゼントも最高で、相当なもんよ?


『それでは皆さん、入り口のほうへ移動!!』


 は? と首を傾げる一同。


「カカちゃん、どういうことー?」


「えへへ、今から最高のプレゼントをあげるんだよ!」




『それでは新郎新婦、入場!!』


 再び始まった、この言葉。 


 トメ兄たちはチャペルまで借りて誓いの言葉とかを演出してくれるつもりだったんだけど、そこに私は待ったをかけた。


「カカちゃん、これ……」


「へへ」


 ――だって、普通の聖堂じゃ狭すぎて入場できないもんね。


「サエちゃん、この間の運動会で出来なかったでしょ? 二人三脚」


 私の足とサエちゃんの足、そしてサカイさんの足はぴったりと紐で結ばれていた。


「だからやろう? 今、親子で。短い距離だし、障害物もないけど……これが私のプレゼント」


 どうかな? 私としては最高のタイミングでの贈り物だと思うんだけど。 


「カカちゃーんー……あぁたって子はぁー……はぁぅー……おばさん感動だよぅー!」


「サカイさんも喜んでくれた?」


「いま感動の鼻血を抑えるので精一杯だからちょーっと話しかけないでー!! うぅぅぅー!」


 よし。愛は鼻から出る、でお馴染みのサカイさんから最高の言葉いただきました!


「でさ……なんで僕たちも繋がれてるんだ?」


「ん? 私は、私とサエちゃんだけの結婚式をしたい、なんて一言も口にしてないよ?」


 なんだか皆、勘違いしてたみたいで。楽しかったから放っておいたけど。


「しっかし、こりゃやりすぎじゃねぇか?」


「こ、転びそうです。コロちゃんになってしまいます」


「サラさん、味しめたね。まー隣があたしだから大丈夫さ」


「お、俺、一緒にやっていいのかな? 元はと言えば俺のせいで……」


「ふふ、そこの君? 仲間はずれなんて寂しいこと、させないから安心なさいな♪」


「しくしく……しくしく……」


「あの、ユイナさんっ! なんか仲間はずれにされてる人のっぽい泣き声が聞こえるんですけどっ! 気のせいですかっ!? あ、気のせいですか、わかりました」


「おまえらあしながい!!」


「タマ様! タマ様が短いんですよ――あ痛っ! 痛い痛い!」


 皆で足を結んで横一列。


 長い長い、横一列。


「さ、始めようか!」


「なぁカカ。本当にこのままやるのか」 


「結婚式って、ずっと一緒にいようってことでしょ? じゃあ皆でしようよ」


 変かな? こう思うのって。


 結婚式は、そういうものじゃない?


 もっと別の意味があるもの?


 でも、いいよね。


 どうせニセモノなんだもの。


 だったら本物よりも、欲張ったっていいよね!


「さて、適当に作ったあの台座までの数メートルだけど……僕らはちゃんと歩けるのか? こういう時はどうすればいいよ、先生」


「あん? オレかよ」


「頭がいいはずの学校の先生に任した」


「そうだな……一番端のやつ!」


「あ、ほらタマ様。はーいって」


「あい?」


 端は一番失敗しにくいから、一番危なっかしいタマちゃんをそこに配置してある。


「右って言え!」


「ひだりー!」


「ケンカ売ってんのか!? まぁいい。隣のやつ、今のと逆の方向を言え」


「え、あ、タマ様の隣、僕? は、はい! み……右」


「その隣のやつ、逆の言え」


「あたしか。ヒッダーリィ!!」


「いい発音だな姐さん。じゃ、その隣も同じように言ってけ」


 テンカ先生お姉から反対側まで順に「右」「左」「右!」と続いていく。 


「よし。今自分が言った足が、最初に歩き出す足だ! 間違えんなよ!」


 えっと……あ、そうか。なるほど、確かにこれで歩ける。何人何脚かわからないほどたくさん繋がってても、歩く原理さえ知ってれば結構簡単なんだね。


「じゃ、いくぞ。カカ、おまえの号令で動く。いち、に、いち、に、で進むぞ?」


「ほいさ」


「いち、で一歩だ。いいかてめぇら! 一人転んだら全員転ぶからな! 気合いれてやれよ!」


 おお! と意気込む私らの声は吼えるよう!


「いっくよー? せーの、いち!」


 一歩!


 成功。でもバランスを崩しかけた。さすがにこれだけ繋がってると、足にかかってくる力を感じ取りにくい。


「に!」


 二歩!


 成功。今度はうまくいった。誰かが転びかけたようだけど隣の人が支えたようだ。


 こうして。私たちは必死に、気合をいれて、一歩ずつ進んでいった。


 バカらしい、そう言う人もいた。


 なにやってるんだろう僕ら、そう言う人もいた。


 いまわたしに話しかけるなっ! そう言う人もいた。


 そんな私たちは――揃って楽しそうに笑っていた。


 そして。


「はぁ……はぁ……」


 誰の息かわからない。誰もが息を切らしていたからだ。


「歩くのって……ひどく疲れる作業だったのねっ!」


「でも、なんとか辿り着いたぞ……だんだん楽しくなってきた、僕」


「はっはっは! さぁ出番ですよクララちゃん! 私の代わりに神父役をやるのでしょう?」


「ええキリヤ! クララやります! 誓いのキックです!」


「あー……クララちゃん? それは違います。どう違うのか今さら説明するのも面倒なので、別の言い方にしましょう」


「どんなですか?」


「誓いのぶっちゅー! にしましょう」


 神聖な口付けが途端に堕ちたね。


「クララ了解です!」


 さぁ頑張れクララちゃん!


「えっと、私たちは! 悩めるときも、健やかなるときも、笑い、笑い、えっと……とにかく笑い、皆一緒にいることを誓いますか!?」


 ある人は楽しそうに。ある人は恥ずかしそうに。ある人は呆れながら。


 各々で「誓います」と宣言して――ラストだ。


 行けクララちゃん!


「誓いのぶちょー!!」


「どこの部長だよ!?」


 ズルッと皆で仲良くコケてしまった。多分足を結ばれてなくてもコケたと思う。それが妙に可笑しく思えてしまって、皆でまた仲良く大爆笑するのだった。 


「カカちゃん」


 そんな中、なにやら抱きしめられる感触が?


「どったの、だーりん」


「ありがとー……」


 ……あはは、困ったな。ドレスが濡れちゃうよ。


 黙ってたと思ってたら、涙を我慢してたんだねサエちゃん。


「本当に……ありがとー……!」


 いやはや、嫁冥利につきるね。


「よぅ、お二人さん」


「トメ兄?」


「まいったよ、おまえの思いつきには。僕はてっきり本気で擬似結婚するもんかと」


「まだ法律変えてないしね」


「変える気か!?」


「あたぼーよ」


 でも、今は皆で結婚。


 皆で幸せに。


 皆で、いつまでも一緒にいよう。


 この笑い声に誓って。


 足だけじゃなく絆を結ぼう。


 未来永劫、切れることのない笑いの絆を。




 お結び式、これにて終了です^^

 なぜお結び式というタイトルだったのか、これでもうわかっていただけたかと思います。

 なんだかんだで誕生日話はいい話にしてやろうという思惑が出てきてしまいましてふふふふ。読者の方々が和みまくってくだされば我は本望でござる。なので和んだ人は挙手してくださいね^^ 

 

 さて、明日はもらったプレゼント整理なんかするみたいですよ……?


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