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カカの天下  作者: ルシカ
615/917

カカの天下615「お結び式 雑談しまーす」

 乾杯、ということでトメです。


 妙に綺麗な花嫁姿のカカを見て、すでに娘を送り出す父親な気分です。や、僕は兄だったはずなんだけどな。うう、涙が……


 でねーよ。


「サエおねーちゃん格好いいです! カカ、似合ってます!」


「キャー! サエサマー!!」


 クララちゃんが興奮するのはわかる。しかしそこな母親、娘に様づけしつつ鼻血たらしながら『サエ命』のハッピ着て自作のうちわ振り回すってどうよ?


「キャーキャーキャー!! カカサマー! サエサマー!!」


 うっさいなぁ歳甲斐も無く。でもサエちゃんしか見えていないわけではなく、うちわには『カカも命』って書いてあるので許す。


「キャッキャ! カカタマー! ブタタマー! カニタマー!!」  


 タマちゃんお腹すいてんのかな。


「わたちタマー!!」


 なんかのギャグみたいなシメ方だな。


「……ぜー、ぜー、ぜー」


 あ、サカイさんバテた。やっぱ歳だな。


「カカちゃんイイじゃん! お姉さんびっくりしちゃったよ……いいなぁ、あたしと違って女装が似合って」


 女装て。アンタと一緒にすんなや。


 お、あそこの二人は?


「なぁサラさんよ。確かにあいつら似合ってるけど……あえて普段のイメージと逆にした理由はなんかあんのか?」


「だってタキシードは黒いじゃないですか。だからサエちゃんに」


「なるほどな。今サラさんが皿を持ってるのとおんなじ様な理由ってわけか」


「り、料理食べるときは仕方ないじゃないですか! テンカさんだってお皿持ってるし!」


「残念だったな。天ぷら食ってるからオレはテンだ」


 テンとサラさんの組み合わせって珍しいな。ま、カカを中心にしょっちゅう集まって何かやってるからな、僕の知らないうちに仲良くなったのだろう。


 さて、ここまで祝われている当の本人たちはというと……


「サユカンサユカン」


「なによっ」


 カカとサエちゃんは仲良く腕を組み、


「にやり」


「ふふんー」


「う、羨ましくないもんっ!」


 こんな感じにサユカちゃんで遊んでいた。


「サラさーん!」


「はいはーい? 呼びましたかカカちゃん」


「サユカンが羨ましがってるからさ」


「だから違うわよっ! わたしはこれっぽっちも羨ましくないし華やかな衣装なんか気にもしないから――」


「サユカンにも衣装を着せたげて」


「お願いするわっ!!」


 前後の文章が繋がってませんよ?


「ふふ、了解しました。サユカちゃん、こちらへどうぞー!」


「はいっ! わーわー、なになに? 何を着れるんですかっ」


 数分後。


 サユカちゃんは結婚式に無くてはならない役――いや、無くてはならないモノの姿で現れた。


「ぶははははははははははははは!!」


 真っ先に大爆笑したのはテンだった、そして笑いは光の速さで会場へと広がっていく。僕も悪いけど……吹き出した。


「なんなのよぅこれはっ!?」


「ぶ、ぶぶっ、ブーケですあはははは!」


 そう、最後に花嫁が投げたりするあの花束だ。その花束が――サユカちゃんの頭に咲いていた。さながら花束に顔と手足がにょきっと生えたような、とっても愉快な生き物となっている。や、可愛いんだけどさ……ウケる。


「くはははっ! よぅサユカ! なな、投げてやろうか!? あははは!」


「教師のくせに生徒を指差して笑ってんじゃないわよっ!!」


「待てテンちゃん、投げるならあたしの方が適任だよ。あのブーケは重すぎる!」


「重いっていうなっ!!」


「サユカちゃん、よかったねー。ブーケを受け取った人は次に結婚できるんだよー。ね? カカちゃん」


「サユカンの場合は受け取ったというより、ウケ取ったって感じだけどね」


「カカちゃんうまーい!」


「夫婦漫才してんじゃないわよそこっ!」


「はい、タマ様。たかいたかーい、これでいいですか?」


「じょー」


「わたしの頭に水をやるなぁっ」


「元気になーれ」


「ならんわっ!!」


 元気じゃん。


 いやはや。身体を張って式を盛り上げようなんて、友達がいのある子じゃないですか。うんうん感心感心。それに比べてこっちの大人は……はしゃぎすぎて一人ダウンしているサカイさんに水を飲ませつつ、僕は皆のサユカちゃん遊びを楽しく見守っていた。


『――さて、ここでお二人の馴れ初めについて、少し触れてみたいと思います』


 おお? 盛り上がりがひと段落したところでキリヤのマイク音声が響いた。


『その前に一言。サユカちゃん、ぐっじょぶ』


「嬉しかないわよっ!」


『あっはっは! いやはや、ウケどころを取られてしまいましたが、こちらもなかなか面白いですよ』


 二人の馴れ初めね……大体は知ってるけど、改めて聞くのもいいかもしれないな。キリヤも直接二人にインタビューして聞いたらしいし。


『二人が初めて会ったのは――男子便所』


 マテや。


『そのときサエちゃんは苛められてました。便器味の水を飲めと無理やり押さえつけられて――』


 え、えぐ……!


『そこにカカちゃんが登場! 苛めていた男子の便器味の水どころかステーキまでご馳走し、サエちゃんを助け出したのです』


 何食わせた、オイ。


『そのサービス精神、うちのファミレスでも見習いたいと思います』


 頼むからやめてくれ。


 そもそもそんな話をされちゃ、せっかくの料理がマズくなる――


『貸しな!!』


『おっと!?』


 あれ、キリヤがマイクを奪われた!? 奪ったのは――給食の鬼と名高い南のおばちゃん!!


『そんな話をされちゃ料理がマズくなる……今、そう思ったやつがいるね!?』


 ギクッと身を震わせる人多数、もちろん僕も。どんだけ鋭いんだこのおばちゃんは!


『そいつらは罰としてこれを食いな!!』


 ギクッとなった人の前へとなぜかこの上なく正確に並べられる皿。その上には――なんか、赤黒い、臓器をそのままむしってきたような料理が……!!


『食いな!!』


 や、でも。


『食いなっ!!』


 でも、これ。


『食えやぁぁぁぁぁぁっ!!』


 姉をもビビらす咆哮に、僕は慌ててその料理を口に入れた。不気味なほどにあっさりとスプーンで切れてすくえたその物体は――とてつもない味がした。食べた僕らは揃って口元を押さえて悶絶する。


 そして、声を合わせて言った。


『美味すぎる……!!』


『はん、汚物の話や臓器の見た目ごときでマズくなるような料理は作っちゃいないんだよ。ナメてもらっちゃ困るね!』


 勝ち誇った顔で去っていくおばちゃん……負けたぜ。


『さてさて、なにやら私の出番が奪われまくりでちょっとジェラシー、キリヤンったらやんやん、なわけですが』


 酔ってんのかキリヤ。


『話を戻します。そんな、サエちゃんを苛め、カカちゃんに成敗された思い出の人が――会場にいらっしゃってます!』


 また微妙なやつ呼んだなー。公開処刑にでもする気か?


『どうぞー!』


 でもちょっとわくわく。


 ……ん。


 あれ。


『おかしいですね、ちょっと待ってください――もしもし、ゆーた君? 何やってるんですか……え? 本当ですか? そう、ですか……』


 電話を切ったキリヤは、とても残念そうに、


『申し訳ありません、思い出の人は、サエちゃんのファンクラブの皆様によって……その、色々ありまして、現在、東京湾だそうです』


 どゆこと!?


「あれ……? そういえば、さっきから弟ちゃんと連絡が取れな――ま、まさかそれってヤナツのことじゃないですよね!?」


『残念です』


「残念ですじゃなくて!!」


『ええ、もうすぐ東京湾に流れ着くころだということで』


「ここでそんな説明するってことはやっぱり!?」


『続きまして――』


「続かないでくださいよぉぉぉぉぉぉ!」


 サユカちゃんの次はサラさんいじりか。うむ、またこれも楽しい……本気じゃないよな? まさか、な?


『カカちゃんとサエちゃんの絆を決定づけることとなった方たちを、お呼びしています。感動の再会です』


 お、誰だ誰だ?


「あの、私の弟ちゃんは!?」


『大丈夫ですって』


「本当に?」


『ええ。だって私がここで頷いたら、私が人殺しになってしまうではないですか。だから大丈夫です』


「一ミリたりとも安心できる要素が見えないんですけど!?」


『はっはっは! サラさんの慌てっぷりを見て主役のお二人も満足のご様子。というわけでそろそろこの人は無視して登場していただきましょう、どうぞ!!』


 弟を心配しまくる優しいお姉ちゃんを放っておいて、皆の視線は開く扉へと注がれる。


 そして、現れたのは懐かしの――




 皆でわいわい雑多なお話。それでも一言しか台詞がない誰かさん。哀れなり。


 さて、明日は感動のご対面と共にプレゼント贈呈です。はてさて誰のプレゼントが選ばれるやら……お楽しみに^^

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