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カカの天下  作者: ルシカ
608/917

カカの天下608「ステキなプレゼント」

 こんにちは、トメです。


 今日はカカに付き合って買い物にきています。それというのもサエちゃんの誕生日プレゼントを買うためで、いつもの商店街ではなく、遠出してデパートなんかに来てみたのですが……


「何もない」


「や、いっぱいあるけど」


「ここに価値あるものは何一つない」


「値札いっぱい貼られてるんだけど」


「それは幻だよ」


 だったらここにあるもん全部タダか? そうだったらどんなにいいことか……とりあえずカカのお眼鏡にかなうものは見つからないみたいだ。


「うー……」


 唸りながらさ迷うカカに付き合っていると、大きなデパートではお決まりのアナウンスが聞こえてきた。


『落し物が届いています』


 うん、よくあるな。それにしてもこういうアナウンスの女性の声って落ち着いた美声だよね。


『落し物は、ケンタ君、六歳』


 落とし物言うな。それ迷子だ。


『食品売り場に落ちていました』


 食品売り場でケンタ……フライドチキ――や、気にすまい。


『持ち主は速やかに取りに来るように――』


 持ち主とか言うなっての。


『お願いします。かなり常識のない暴れ方をしておいでです』


 あんたもけっこー常識ないと思うよ。


『うぎゃああああ!!』

 

 美声台無し。何があった? 


『……くそっ、揚げてやろうかしら』


 それケンタ違い。てかアンタがキレる前に放送を切れ。


 そんなことを胸中でツッコみつつもカカを追いかける……が、やがて立ち止まる。


「どした?」


「こんな意味のないデパートは潰れるべきだ」


 いいもの見つからないからってそんな可哀想なこと言うなよ。このデパートだって頑張ってるんだぞ? 掃除とか。


「でも近所の商店街はあらかた見たんだろ?」


「うん……でもあそこはモノがありすぎて、どうしても“これならサエちゃんが喜んでくれる”っていうのより“これをあげたらおもしろい”っていうのばっか浮かんできて……」


 血だな。もしくはそういう星の下に生まれた宿命か。


「帰ろ」


「はいよ」


 そんなわけでデパートを後にした僕ら。


 家に向かいてくてく歩く、その道すがら……


「お」


 カカが何かを見つけた。


「こんなん拾った」


 それは一見高価そうな、派手なバッグだった。でもよくよく見てみると所々に泥がついていて、一日か二日ほど道端に放置されていたような印象を受ける。中身は……空か。


「それどうするんだ?」


「んー……持ってく」


「なぜに」


「サエちゃんへのプレゼントのヒントになるかもしれないから」


 どこをどうしたらそうなるのかよくわからないが、この娘の思考回路は妙なことから名案を閃いたりするので放っておくことにする。いらなくなったら交番に届けよう。シュー君への嫌がらせに。


 で、そんなバッグを持って歩いていると……


「お」


 カカが再び地面にしゃがみ込んだ。


「こんなん拾った」


 それは一見、犬の糞だった。


 犬の糞!?


「拾うなよ!!」


「冗談。拾ってないって」


 ほっ、よかった……


「拾うけど」


「なぜに!?」


「こんなとこに放置したらマナー違反でしょ」


「え、なんでそんな普通に偉いこと言うの?」


「……トメ兄、あんたね」


 アハハ、だってサ、ね? わかるデショ?


「んしょ」


 カカは落ちてた木の枝を使って、さっきのバッグにうまいこと糞を押し込んだ。


「いいのか? そのバッグ。サエちゃんのプレゼントに――」


「サエちゃんにこんな小汚いものあげるわけないでしょ。捨てるよ」


 父さん、母さん。あなたたちの娘はいまだにわかりません。


「さて、行こトメ兄」


「マジで持ってくんだな……」


「ゴミ捨て場に捨てる」


 で、そんなバッグを持って歩いていると……


「お」


 カカが三度地面にしゃがみ込んだ。


「こんなん拾った」


 それは一見、カラスの死骸だった。


 カラスの死骸て!?


「拾うなよ!?」


「うん、バッグに入れる」


「なんでさ!?」


「こんなところに放置してたら車が通りにくいでしょ」


「なんで普通のことばっか言うのさ! らしくないぞ!」


「……このカラス食べたいとでも言えばいいの?」


「勘弁してください」


 車に激突して死んだばかりらしいカラスは、さほどひどい状態じゃなかった。だからまだ見れるし、また棒を使ってバッグに入れることもできる……けど……


「よしよし、おまえは車に立ち向かったんだね。他のカラスは皆チキンだから寄らないのに」


 カラスがチキンとはこれいかに。


「……なぁ、こういうのはちゃんとした処理してくれるところに電話すべきなんじゃないのか?」


「む、そなのか」


「ああ。今は大丈夫だけど、こういう死体は放っておくとヤバイ状態になるし」


 ノミとか湧いてきて……想像したくもない。


「ちゃんと処理してくれるとこってどこ?」


「んー、とりあえず近くに交番あるし、持って行くか」


 嫌がらせに。


「ん、よし。歩こ」


 で、そんなバッグを持って歩いていると……


「お」


 今度はなんだ……


「トメ兄」


「何を拾った?」


「ひったくりにバッグ盗られた」


「……は?」


 もしかして今すれ違ったバイクのやつか? あ、後姿がまだ見える。手にあのバッグを……一見派手だから狙ったのか。


「処理してくれる人がいてよかったね」


 開けてびっくり、よもやバッグに犬の糞とカラスの死骸が入っているとは思うまい。


「きっとあの人、ひったくりやめるな」


「いいことしたね」


「そだな」


 ツッコミどころは多いけど、今日は胸中でツッコむのに疲れたので放っておくことにした。


 さて、それにしても。


 サエちゃんのプレゼントどうするのかね。ひったくり犯にステキなプレゼントしてる場合じゃないんだけど。




 ステキすぎるプレゼントをもらったひったくり犯がどうなったかは皆さんのご想像にお任せします。

 あとこれを読んでるケンタ君がいて、もしも不愉快な思いをされたらすいません。でも私はケンタは好きです。別の意味? いやいやそんなことは……


 しかし最近ギリギリ多いですね^^;気をつけます!

 あとカカの誕生日プレゼント〆切りは二十日の十六時ですよん。 

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