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カカの天下  作者: ルシカ
606/917

カカの天下606「肉イ騒ぎな休み時間」

 こんにちは、カカです。


 今日も今日とて小学校。普通の授業を普通に終えたところなのですが……


「せんせー」


「んだよ、カカ」


 私のこの一言で、ちょっとざわつくことになります。


「焼肉は?」


 皆は覚えているだろうか?


 私たちが運動会をする直前、勝手に『優勝したらテンカ先生が焼肉に連れてってくれる』と言っていたことを!


「あんだそりゃ」


 案の定な返答をする先生。しかしそうは問屋が卸さない!


「俺たちが優勝したら先生が焼肉に連れてってくれるっていうから、俺たち頑張ったんですよ!?」


 と、はやて君。


「そうだそうだ!」


 と、泡盛君。


「にーく! にーく!」


 と、ハブ野郎君。


 誰かが勝手に言い出した約束――などという些細なことは、優勝した私たちの脳みそにはカケラも残っていないのである。


「あー……っと、つまりてめぇら。優勝したんだから褒美がほしいと?」


「そうです! みんな頑張ったんです!」


 と、照々君。


「カカちゃんなんかパン食い競走で、倒れたインドちゃんに皆が駆け寄る中でただ一人ゴールに向かって走る――そんな人でなしに成り下がってまで一位になったんですよ!?」


 げ、クラスメイトに火種だけつけて後は放置にしようと思ってたのに、こっちにまで飛び火してきちゃった。


「あー、ほら。ちゃんとゴールした後に駆け寄ったじゃん? それにさ、インドちゃん倒れたっていっても口は元気にカレーパン食べ続けてたし」


「それでもあんまりだよ!」


「か、カレーパン食べ終わったら回復したし」


「クラスメイトよりも勝利を取ったんだ!?」


 うぅ……だんだん悪いことしたような気がしてきた。


「そんなに勝利が大事か!?」


「格好いい!」


 賞賛してんのか非難してんのかどっちですか。


 ……ともかく、謝っておこうか。


「インドちゃん、ごめんね?」


「…………!」


「あ、あの? ごめん」


「…………!!」


 あのぉ、そんなに涙目でぷるぷる震えながらカレー入りタッパーなんか献上されたらほんっとに悪いことした気分になるんだけどぉ、怯えないでよぅ、何もしないよぅ、メルちゃんとして仲がいいだけにショックだよぉ。


「よしよし。これで心置きなく褒められるわね」


「カカちゃんのおかげで優勝できたのは間違いないわけだし!」


「カカ、よくやった! おまえのおかげだ!!」


 現金なクラスメイトたちめ……


「む、ニッシーだって一位取りまくったのよ! ちょっとは褒めなさいよあんたたち!」


 おお? ここでアヤちゃんの登場だ。


「だって、なんかニシカワ君って目立たないし……」


「カカちゃんのほうが派手だしね」


 あらやだ嬉し。


「むむむ……こらニッシー! あんたが目立たないからこんなこと言われるのよ!」


「僕は赤組の応援席が西にあったことだけで満足だよ」


「そんなだから地味とか言われるのよ! もっとアイドルな私みたいに派手になりなさいよ!」


「でもそう言うアヤ坊の運動会の成績は地味だよね。三位ばっか」


「う、うっさいわよ!!」


 ちなみにニシカワ君並にいい成績を残している足の速いはやて君は話題にも上らない。アヤちゃんがニシカワ君ばかり気にしているのは……やはり愛か。くぅ、染みるねぇ。


「まぁまぁお二人とも。運動会の勝利は皆様が団結して得たものです。三位であれ四位であれ、それが無ければ得ることはできなかったのです」


「イチョウさん……」


「そう、三位であろうと四位あろうと、獲得できるのが一点であろうと点数には変わりません。塵も積もれば山となる、ゴミも積もれば少しは役立つ、とも言うではありませんか」


「誰がゴミよ!?」


「あぅ!? わ、わたくしとしたことが、またもや本音を」


「本音ってあんたねぇ!?」


 イチョウさん元気になったよね。


「塵? ゴミ!? 冗談じゃないわよ! そんなのニッシーだけよ! 私はアイドル! ニッシーはチリドルでゴミドルよ!」


「はいはい、僕は塵でゴミですよ」


「そこまで言ってないでしょ!?」


「言ってる言ってる」


 さて、そんな騒ぎの中で私はマイペースに机の下に隠した携帯でメールをしていた。相手はサエちゃんとサユカン。なんで同じ教室にいるのにメールしているかというと、相変わらず私たちの席は四隅に離されているからだ。休み時間だから移動してもいいんだけど、皆が授業のときからそのまま座ってるから私たちもなんとなく動かないのだ。なので代わりにメールで会話。


 お。サエちゃんからだ。


『ひざがかゆい』


 む、返信しないと。


『私は鼻がかゆい』


 サユカンにも、と。お、返信。


『かけばいいじゃないのよっ!』


 ごもっとも。


 うーん、何してるんだろね私ら。


 お、またサユカンからだ。


『どうせなら君らの結婚式に全員呼んで、焼肉パーティーにしちゃえば?』


 ぽちぽちっと返信。


『結婚式は身内だけで済ませたいの』


『……あそ』


 なんか呆れてる。


「あぁうっせぇ! わかったわかった! ちょっと待ってろ」


 おお? メールしているうちに話合いに決着がついたみたいだ。途中からテンカ先生は蚊帳の外だった気もするけど。


「……もしもし? ああ、オレだ。あのさ、焼肉頼めねぇか?」


 テンカ先生が電話で話し始める。さすがに私もわくわくして携帯から手を離し、先生を見守った。


 やがてテンカ先生は電話を切って――私たちに向き直った!


「よし、喜べてめぇら!」


 私たちのテンションが上がる!


「や、焼肉ですか!?」


「おう、正真正銘の焼肉だ! 牛肉だ! うめぇこと間違いなしだし、タダで食わせてやる!」


 おおおおおおおおおお!!


「文句ねぇな、貴様ら!?」


『はい!!』


「ミナミのおばちゃんに電話した。明日の給食は焼肉だ、これでいいだろが」


『はい! ……はぃぃ?』 


 うわぁ……


 微妙……


「文句ねぇって言ったよな? じゃあそれで満足しろ」


 私たちは、運動会には勝ったのにテンカ先生には負けた気分で、すごすごと残りの休み時間に行動を移していくのだった……




 肉イねこの! どこが? はい、言ってみたかっただけです。


 というわけで、たまにはクラスメイトをたくさん出してあげようと思い、過去に出番があった生徒達を集めてみました。

 出番が少ない? キニシナイ。


 後半のクラスメイトの台詞には適当に自分の声を入れてお楽しみください^^

 ……でもそれってちょっと寂しい? ま、いっか。

 

 

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