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カカの天下  作者: ルシカ
602/917

カカの天下602「貴桜運動大戦 応援 パン食い 決戦リレー」

 こんにちは、カカです。


 運動会も午後の競技に突入です。最初は応援合戦だ!


「いっけーいけいけいけいけ黄隼!! おっせーおせおせおせおせ黄隼!!」


「必勝闘魂根性青龍! 常勝必勝絶対勝利!」


 各団の熱の入った応援が続き、ついに我ら赤鷲団の出番が来た!


 私たちのはすごいよ!


「なぁ、カカ。おまえ全部出るんじゃなかったのか?」


「うん。そうなんだけど。さすがに応援のときくらいは休ませてって言ったのね」


「へぇ。それで大丈夫なのか?」


「うん、代わりを置いてきたから」


「代わり……?」


 応援団が登場する。


 そこには私の代わりがいた。


「なぁ兄貴、なんで俺たちはまたこんなところにいるんだろうな」


「カカの嬢ちゃんに頼まれちゃ仕方ねぇだろが。しかし弟よ、このちあがーるとかいう衣装をどう思う?」


「なかなか似合うぞ兄貴。すぱっつがなければ捕まるな」


 トメ兄が呟いた、あっても捕まると。


「ほらあんたたち! くっちゃべってないでいくよ!!」


「おお、姉貴! 学ランがなぜか似合いすぎだ! 男前すぎるぞ!」


「小学生で学ランなんぞ着とるやつはいないし、なお目立つな」


 そして応援が始まる! ミナミおばちゃんの力強すぎる太鼓と共に、トウジとセイジのおっちゃんの声がグラウンド中に響き渡る!


『赤い鷲でゅみゅみゅみゅう! 赤い鷲でゅみゅみゅみゅう!』


 おー……渡した応援台本の通りだ。


「なぁカカ……おまえさ、いくらなんでもアレはないだろう」


「や、まさか本当にやるとは思わなくて」


「それもそうだ」


「なのに、なんか『いいだろう』とか『これは挑戦だな』とか『受けて立つ』とか妙に男らしく頷かれて」


「……なんであの人たち、断るってことをしないんだろう」


「楽しいからじゃない?」


「それにしたって……」


『でゅみゅみゅみゅみゅみゅみゅみゅみゅみゅみゅみゅみゅみゅみゅみゅみゅみゅみゅみゅみゅみゅみゅみゅみゅみゅみゅみゅみゅみゅみゅみゅみゅみゅみゅみゅみゅみゅ――」


『なげーよ!!』


 さて、改めて皆の心が一つになったところで、午後からの競技は始まります。


 最初は玉入れ。たまたま隣になった青龍団のタケダがちょっかいを出してきた。うざいから投げ飛ばして籠に入れてやろうとしたけど失敗した。残念。


 次、騎馬戦。


 女の戦い。


 とても痛々しい展開だったので、描写するなとトメ兄に言われました。


 そしてちょこちょこ色々あって。


 パン食い競走!


 各チーム二人ずつで走るんだけど、私と一緒に走るのはなんとインドちゃん。


 そして彼女の後ろにイチョウさんが並んでいて、二人は走る出番がまわってくるまで仲良く喋っていた。同じチームでも隣に並んでいるわけではなかったので、私は話に入ることはできなかったけど、こんな会話が聞こえてきた。


「先ほどはカレーをありがとうございました」


「い、いえいえこちらこそ。おかずもらっちゃって……」


「それならばお互い様ですね。ニシカワさんのお弁当からもおかずをもらいましたし。アヤさんは……奪う側でしたけど」


 なんだ、サラさん一家で一人だけいないと思ったらインドちゃんたちと食べてたのか。もしかして家族といるの気まずかったのかな?


「あの、イチョウさん、もう大丈夫?」


「ええ、ご心配おかけして申し訳ありませんでした。もう全部解決です。本当はわたくしが自ら兄に制裁を下したかったところなのですが……多分それは、楽しくない結果になったと思いますし」


「そっか。よかった、の?」


「ええ、よかったです」


「そっかぁ。ところで、あの、その、聞いていい?」


「なんでしょうか」


「なんでお兄さんに、怒ってたの?」


「……お姉様の悪口を言うからですわ。お姉様がいつも元気なのを見て、お母様のことをなんとも思ってないんだ、とか言って」


「イチョウさんは、お姉ちゃんが大好きなんだね」


「だぃっ!? え、ええと、その、大好きというほどではありませんよだってあの人わたくしがそれで兄と喧嘩していると知っていたのですよすぐに言ってくださればよかったですのにそれといいますのも今朝にわたくしたちの兄妹喧嘩を目撃して理由を知ったたばかりでどう声をかけるべきか迷っていたと申してますから仕方ないのかもしれませんけどでもでも知られてると思ったらば一緒にいるのが恥ずかしくなりまして――」


「い、イチョウさん、落ち着いて」


「は!? し、失礼しました……」


 イチョウさん。テンパるとサユカンみたいだね。今の口上にもう少し夢見がちな単語でも入れればサユカンだ。『きゅんきゅん』とか『もっきゅーん』とか。


 大好きというほどではありませんよきゅんきゅん。だってあの人もっきゅーん!


 完璧だ。今度サユカンに言わせてみよ。


「はい、深呼吸」


「すー、はー」


「落ち着いた?」


「はい……ご心配をおかけしました。あ、もう出番ですよ」


 おお、もうか。


「ところでインドさん」


「あ、はい、なに?」


「カレーパン、一個しかないみたいですよ」


「…………!」


「インドさん落ち着いて!」


 え、なに? インドちゃんどうしたの!?


「用意!」


 って余所見してる場合じゃない! さすがに騎馬戦までこなした後だと疲れてるけど……まだまだいける!


 パァン!! 


 身体を弾くようにスタートさせる。快調な滑り出し!


 私の前を走るやつはいない!


 いない。


 けど、あれ。


 予想外なものを見たと言わんばかりの周囲の歓声と共に。


 なんかくるなんかくるなんかくるなんかくる背後からなんかくる!!


 ギュン、と。


 いつぞやお姉が本気で走ったときのような音を唸らせ、私の脇をすり抜けたのはまさしく――インドちゃん!!


 抜かれた? そう認識した瞬間、負けてなるものかと身体が吼える! 全種目に出るため“一位になれる程度”に加減していた体力を総動員して全力を込めた。そして追いつく、だが抜けない。私が一歩前に出れば、彼女は三歩分加速して抜いてくる。それは鉄壁の意思、死んでも一位になるという意気込みだけで、インドちゃんは私を超えようとしていた。


 やがて見えるパン。


 私は適当に咥えやすそうな長いパンをめがけてジャンプ! よし、うまくとれた。


 隣を見る。インドちゃんはもちろんカレーパンを咥えた!


 そしてそのまま豪快に着地して!


 倒れた。


 死んでも一位になる、ではなく。死んでもカレーパンを食べると意気込んだ彼女は、目的を達成すると文字通り死んだのだった。


 や、口をもごもごさせて咥えたカレーパン食べてるから気絶しただけだろうけど。


 えっと……妙なところで全力出したせいで疲労が一気に襲ってきたけど、なんとか私は一位になるのでした。


 インドちゃんすげぇ。食べ物の執念すげぇ。


 誰かが言っていたインドちゃん実験は、見事に驚愕の結果を残したのでありました。




 さてさて。


 運動会も最後の決戦を残すのみとなりました。


「ヤナツ、あんたがアンカーか。本当に結構足速いもんね」


「……一番速いわけじゃないけどな。さっき格好悪いとこ見せた分、少しくらい良いところみせとけって、タケダがな」


 へぇ、あいつやるじゃん。


「とは言ってもカカが相手じゃなぁ。また惨敗しそうなんだが」


「何言ってるの。私、今日これで全部の競技出たことになるんだよ? さっき全力出しちゃったし、もうヘロヘロよ」


「それに負けたら格好悪いってこと」


「ん、それは確かにそうだね」


 ――そして、結果を言えば。


 ヤナツのチームが大きくリードしてアンカーに渡ったにも関わらず、私は勝った。


 死ぬ気で大爆走したおかげだ。


 とは言ってもヤナツも全力だったらしく、ゴールした瞬間に私たちは揃って地面に倒れこんだ。


 ヤナツは言った、やっぱり敵わない、と。


 でも笑っていた。


 多分、楽しかったんだろう。


 でも、私の勝ち。


 優勝は赤鷲団、これも私の勝ちみたいなもんだ。


 私の勝ちばっかりで気分がいい。


 そう、きっと私が誰よりも楽しんだ。だから私の勝ちなんだ。悔しかったら私より楽しんでみるがいい!


 ま、運動会が終わって笑ってる人は、みーんな勝ちのような気もするけどね。


 ――さぁ祝杯だ。コーラ持ってこーい!!




 これにて運動会編終了です!

 なんとか編ってどうにも長くなっちゃいますね。楽しいからいいんですが……まぁしばらくはのんびりと。

 というわけにはいきませんね、誕生日ありますから笑

 また楽しくなるように頑張りますよー!


 あ、忙しいとか書いてますけど、感想でもメッセージでも何かありましたらほんと遠慮なく送ってくださいね。それをエネルギーにして書いてるので^^


 本日の見所。


 タケダはもちろん、運動神経がいいはずのニシカワ君の空気さ。

 もちろんでゅみゅみゅみゅう。

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