カカの天下60「カカVS姉娘ラスト」
「えー……おはようございます……カカです」
なんとなくアナウンサーっぽく言ってみました。しがない一般人の小学生、カカです。
二日前にうちにやってきた姉の娘(仮)によって私はノイラーゼ気味です。ノリラーゼだっけ? ロリローゼ? まぁいいや、よく意味わかんないし。なんか微妙にアブなそうな単語できた気もするけど気にしない。
さて、今日は普通に学校があるので姉娘タマと戦わなくて済む……んだけど。
「カカー、起きろー」
「頭悪い!」
「……は?」
「違った。頭悪いのはトメ兄だ。頭痛いの」
「頭痛いわりには、いい感じに切れ味ある毒吐くじゃないか」
「そうそう、毒にやられてるの」
「話が噛み合ってないぞ」
「いつものことじゃん」
多分ね。
「とにかく、具合悪いから休む」
「小憎らしいほど元気に見えるが」
「具合悪いの!」
「……そっか。まぁ、たまにはいいかサボるのも」
聞き分けのいい兄でよかった。
はい、本当は頭悪くないし痛くもないです。でも……このままやられたまま逃げるのはなんか癪なのです。
私は居間で朝食をとって……早々にその敵に対峙した。
「あれだろ、今日でタマちゃん帰るから遊んでやりたいんだろ」
あ、そんな勘違いしてサボりをおっけーしたんだ。やっぱ頭悪いなトメ兄。
……ん?
今日、帰る?
休んでよかった……じゃあこれが最終決戦じゃん!
私はさっさとトメ兄を仕事へ追い出して、タマを探した。
見かけないと思ったら……ソファーに埋まって眠っていた。
「タマー?」
呼びかけると薄らと目を開けた。さぁ、勝負!
「ぬ……」
「ぬ?」
「ぬげー」
脱げ?
「……ねこー」
ネコ? ネコに何を脱げと言ってるんだろう。
「……かわー」
皮を!? どんな夢見てるのこの子!?
っと、早とちり早とちり。多分寝ぼけて適当な単語言ってるだけだ、うん。
「やめて……カカねー」
「ちょっと、もしかして私がネコの皮を脱がしてる夢見てる?」
やめてよ、そんなトラウマになりそうな悪夢。
「ねぇ、ちょっとタマ。起きてよ。お話しようよ」
「さばにこみー」
「さばなんか煮込んでないでさー」
「カカにこみー」
「私も煮込むなー。ほら、起きて」
「とめやきー」
「なんでトメは焼くのか知らないけどさー、ねぇねぇ」
このあとしばらく頑張ってもタマは起きなくて。やがてお姉がやってきた。
勝負してないのに負けた感じにがっくりしながら、お姉にタマを返すことになりましたとさ。ちぇ。
「なに、カカちゃん。最後にこの子と話せなかったのがそんなに寂しいの?」
「ちがうっ!!」
ああ違うとも。違うったら違う。
「目、潤んでない?」
「姉の目は節穴で通風孔だから当てにならないんだよ」
「どこに向かって説明してんの?」
「カメラ……じゃなくて。まぁ、いいじゃない。でさ、この子の名前、なんていうの?」
「名前?」
「うん、聞いてなかったから」
「そういや付けてなかったな……」
「は?」
「ん、拾ってきた猫みたいなノリで、タマちゃんでいいんじゃない?」
うわ、私と全くおんなじ発想。
「その子、ほんとお姉のなんなの?」
「それは秘密」
謎だ……
あと、なんか血のつながりを再確認してしまった一日でした。
なんにせよ、これで一人の悪魔が出て行ってせいせいしましたとさ、勝てなかったのは残念だけどめでたしめでたし。
……や、別に寂しくないよ? ほんとに。