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カカの天下  作者: ルシカ
591/917

カカの天下591「一生懸命な子を騙すのは簡単です」

 こんちゃ、カカです。


 今日は朝からサエちゃんの顔を見れて、私はご満悦です。家が近くなるっていいよね!


 どういう意味か? えっとですね、実はサエちゃんにジョギングを教えてほしいと頼まれまして。ぶっちゃけジョギングに教えるも何もないと思うんですけど、一緒にいられるならいっかーと思って了承したのです。


 というわけで、とりあえず一緒に走り始めたサエちゃんとサカイさんにご指導をば。


「まずは呼吸はミュージカルに」


「あぁあぁあぁあぁー♪ こんな感じー?」


「お母さん。いい声だけど、それ息吐いてるだけだよー」


「違った。リズミカルだ」


「はっはっはっはー、これでいい? カカちゃん」


「何笑ってんの」


「呼吸してるんだよー!」


 この辺は序の口。さて、次のステップへ行こうか。


「あのね、走りながら喋ると疲れるでしょ」


「はぁ、はぁ、うんー……」


「ぜー、ぜー……」


 サカイさん、もうそれですか。体力無さすぎだね。


「それでね、呼吸と一緒に声を出せば、辛いけどいいトレーニングになるんだよ」


「なるほどー」


「なるほどだぜー」


 サカイさん、男らしくカモフラージュしてぜーぜー隠したね。


「というわけで私に続いて声を出してね」


「わ、わかりましたー、はぁ、はぁ」


「わぜーかぜーりぜーましぜーたぜー」


 サカイさん、タヌキで『た』抜きの暗号みたいに『ぜー』を抜く暗号だね。


「いくよ。はい、はっはっは!」


「はっはっはー!」


「ぜははははは!」


 サカイさん、わざとやってない?


「はい、ほっほっほ!」


「ほっほっほー!」


「おほほほほー!」


 絶対わざとだ。この人、芸風変わったな。


「はい、にゃーにゃーにゃー」


「にゃーにゃーにゃー」


 ああ、可愛い……サエちゃんに猫耳つけたいな。


「ぜにゃ、ぜにゃ、ぜにゃ」


 ああ、気持ち悪い声だ……猫を踏み潰してるみたいな。


「きゃんきゃんきゃん」


「きゃんーきゃんーきゃんー」


 ああ、犬耳もいいなぁ。


「ぎゃわわん!」


 ああ、疲れてるのか余裕あるのかどっちなんだこの人。


「あん、あん、ああん!」


 ちょっと色っぽくしてみた、ドキドキ。


「あーん、あーん、あーん」


 なんかどっかの青いタヌキの主題歌思い出した。


 そしてサカイさんの異様に艶っぽい声にびっくり、さすが大人だ、となるかと思いきや。


「あんだこらー!」


 こっちのセリフだこらー。


 ともあれ、他にも……


「もきゅーむきゅーみきゅー」


 とか。


「みぃみぃみぃ」


 とか。


「ちゅっちゅっちゅっ」


 とか。私の欲望が指示するまま、サエちゃんに色んな言葉を言わせることができた。いやー鼻血出そうですよ、どうしましょ。


「…………」


 そしてふざける余裕のなくなるほど疲弊したサカイさん、いまや鼻血出しながら無言で走ってます。しかしグッジョブ! と親指立てられました。いぇーい。


 そんなこんなで公園に差し掛かり、ベンチで休憩することになりました。 


「はぁー、はぁー……疲れたよー。ね、カカちゃん、お母さん? ……なんで二人して鼻血出してるの?」


 や、だってね、あなた。


「サカイさん、生きてるー?」


「あぁー……萌え死ぬってこういうことかー……」


「個人的には、ひとちゅ、ふたちゅ、みっちゅーが最高かと」


「それで鼻血出たわー」


 走ることに一生懸命で自分がどんな破壊力抜群なことを言っていたのか気づいていないサエちゃんは、慌ててティッシュを取り出して私たちの鼻血を拭いてくれた。


「ティッシュ常備してるの?」


「うん、お母さんが鼻の粘膜が弱くて鼻血出やすいって言うからー」


 多分それ嘘。弱いのは自制心だ。


「それにしても二人とも、言うほど走れなくもないじゃん」


「呼吸の仕方をミュージカルにしたら随分と楽になったよー」


 ミュージカルでよかったっけ? まぁいいや。


「あとは二人三脚の練習だね。私、全部出ろと言われはしたものの、これは出ないんだよね」


 この競技は父兄も参加するから、そんなに大人数は出れない。だから親子で仲のいい人、もしくはこれをきっかけに仲良くしたいっていう人たちに譲ってあげたのだ。意外と参加希望が多かったし……ま、うちはそんなのしなくても仲いいしね。


「ふふふー、それなら大丈夫だよー。この前に足を結んで走ってみたんだけど、全然問題なかったんだよー。一回も転ばなかったのー! ね、お母さん」


「…………」


 サカイさんは無言で頷いた。さっき少し返事してくれたけど、基本的には死にかけらしい。


「でもなんかわかる気がする。サエちゃんとサカイさんって色んなテンポが似てるもんね。喋り方とか、考え方とか」


 腹黒とか。


「どっちかというと姉妹に近いかも?」


「片方はけっこー歳ですけどねー」


 言うね、サエちゃん。


「……あれー?」


「どしたの」


「いえ、あの人たち」


 サエちゃんの指差す方には一組の父子が立っていた。その向こうにもう一人いるかな? 二人の身体に隠れてこっちからじゃよく見えないけど。


「あのお父さんと息子さん、よくジョギングのときにすれ違うんだよー。お父さんと男の子で仲がいいなーと思って見てたんだけど」


 お父さんが羨ましいとか? や、わざわざ聞くことじゃないか。


「あの男の子、なんか見覚えがあるようなー」


「……あ」


 父子が二人して、おもむろに走り出す。そして見えたその横顔は……


「あの男子、私が何度かやっつけたことあるやつだ。ほら、サエちゃんを苛めてたこともあった」


「んー、覚えてないやー。その頃はそんなのどうでもよかったしー」


 そっかぁ。思えばサエちゃんに会う前はあいつと結構遊んでたっけ。そんなに友達とも思ってなかったけど、ドッジボールとかするにはいい相手だったし……ああ、サエちゃんを苛めるのを見てからだ、そいつが苛めっ子だと知ったの。だからそんな場面を見つける度にボコってたんだけど。


「あれ、イチョウさんじゃないー?」


「ほんとだ」


 ヤなヤツとその父親っぽい人が去った後に残っていたのは、まさしくイチョウさんだった。


「なんだか険しい顔してるー」


「何かあったのかも。あいつヤなヤツだし。今度懲らしめておくかな」


「やめたほうがいいよー。兄妹喧嘩にそうそう他人は口を出すものじゃないしー」


「……は?」


 兄妹?


 あの二人が?


「まーカカちゃんたちの喧嘩なら私たちは口出すけどねー。家族だしー」


 そんな嬉しすぎる言葉にも、私は反応できなかった。


 それほど衝撃的だったのだ。


 あの大人しく(最近は強いけど)頭のいい穏やかなイチョウさんと、悪ガキないじめっ子のヤなヤツが、兄妹? 双子!?


 似てなっ!

 

 似てなっ!! 


 似てなさすぎ! 



 

 それにしても、何を話してたんだろう? 




 とてもあくどいタイトルのこのお話。いかがでしたでしょうか?

 あくどかったですか?

 それともグッジョブですか?


 まぁともかく。

 この三人だとサエちゃんで可愛く遊べることが判明しました(ぉぃ


 イチョウさんについてはノーコメントで。


 あと最近、感想の返信ペースがとても遅いので申し訳ないです。明日からはわりとちゃんと返せると思うので、懲りずに送ってくださいまし^^;

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