カカの天下589「実行委員? がんばれタケダ」
やぁやぁ、タケダだ。
実は今回、運動会の実行委員をやることになったのだ。伝統ある行事を滞りなく進めるための重要な仕事、頑張らねばなるまい!
そう気合を入れていたのだが……なにやら雲行きが怪しいのだ。少し話を聞いてくれ。
まず俺のクラスメイト。概ね応援してくれているのだが、一部に厄介なやつがいてな。最近そいつがやたらと突っかかってくるのだよ。
「ようタケダ。運動会の実行委員になったんだって? よかったじゃねぇか、運動ダメダメなやつでも役に立てて」
「おや、ヤナツ君。君こそよかったではないか、大して目立たないながらもささやかな見せ場ができて」
「んだとぉっ! このグラタン野郎!」
果たしてそれは悪口なのだろうか? グラタン好きな俺としては理解しかねる。
この頭の悪い男子はヤナツ。同じクラスなのだが、周囲の者からは『ヤ』が足りない男子として有名だ。
どういうことか?
ほら、ヤナツに『ヤ』の文字を足してみろ。ヤなヤツになるだろう。
「……いい気になってると痛い目みるぜ」
「ふむ、それは何度か俺の靴や机に画鋲を入れたことを言っているのか?」
「なっ!」
小学生のような悪戯だ。
あ、俺たち小学生だった。
「偶然に目撃した人間が教えてくれたよ。そんなことを続けていると、またカカ君にボコボコにされるぞ?」
「うう……お、覚えてろ!」
はてさて何を覚えていればいいのやら。かつての悪業を理由にカカ君に八回ボコられたことか。
ともかくヤナツがヤナヤツなのはわかってくれたかな? 問題を起こしてくれなければいいのだが……何が一番ヤなヤツかというと、全然面白くないのだ。お目汚しすまない。
「なな、そこの実行委員」
呼ばれて振り返ってみると、見知らぬ上級生の男子さんが。
「おまえさ、撮影も担当するんだよな?」
「ええ、一部だけですが」
「じゃあサエ様を撮れ!!」
……またか。これで八人目だ。
「えー、俺は先生方から任されているため、そのような贔屓はできませぬ」
カカ君はいっぱい撮るが。
「ちぇ……やっぱ自分で撮るしかないかぁ」
「それならそれでお気をつけて。同じサエ君ファンクラブに見つかったらボコられますよ」
「うぐ……」
聞くところによると運動会で『サエ競走』なるイベントがあるやも? という噂が流れているとか。実行委員としてはそんな馬鹿なと言いたいが、あのカカ君ならなんとかやりかねん。
「タケダ?」
「おう!?」
噂を思えばなんとやら! そこには愛しのカカ君が!
「か、カカ君ではないか!」
「タケダが実行委員なんだってね」
「おお、全力を注ぐつもりだ!」
「ハ」
……あれ?
なんだか鼻で笑われましたよ俺。
「じゃ」
な、なんだその「タケダが? じゃ好き放題できるや」みたいな態度は!
いくらカカ君の頼みとはいえ、好き放題させると思っているのか!?
させますね。
「た、タケダ、君」
「おお? ノゾミ君ではないか」
今日の昼休みは客が多いな。
「自然な会話……自然な会話から……」
なんだ? 声が小さくてよく聞こえんが。
「あ、あの……わたし、ね? パン食い競走に、出るんだけど」
「心配するな。ちゃんとカレーパンも混ぜておくぞ」
「あ……! ありがとう!」
そんなに喜ばれるとは思わなかった。そこまでカレーパンの有無を心配していたのか。
「本題……本題……」
またもや小さくて聞こえない。本代? まさかまたもや本Die、訳すると『本格的に死ね』とか言われるのではあるまいな。
「あの! あ、危ないところを助けてくれてありがとう!」
きょとん、としてしまった。
「い、言った、言っちゃった」
「ノゾミ君、カレーパンが無かったらそんなに危なかったのかね」
「……え?」
「もしや他のパンを食べると倒れるとかあるのか? もしくはあんパンが嫌いだとか」
うちの兄貴の知り合いが聞いたら激怒しそうだが。
「……伝わって……にゃい……くすん」
「あ、おい! ノゾミ君、どこへ行く!?」
ああ、なんだかわからないが泣きながら去っていく……俺の何が悪かったのだろう。さっぱりわからん。
「タケダさん」
「お? これはこれはイチョウ君ではないか!」
やっとまともな会話ができそうだ! いやはや、常に冷静かつ穏やかなイチョウ君はとても頼りになるのでね、運動会の進行について相談したかったのだよ!
「タケダさんのクラスには死んでも負けませんから」
相談、したかったの、だけ、ど?
いつもどおり穏やかな顔、しかしそれだけを言ってツカツカと去っていくイチョウ君の姿は……なんというか、怖い。
……俺の何が悪かったのだろう。さっぱりわからん。
せっかくの運動会、俺が楽しくしてやろうと思っていたのだが。
まさか俺、地味な便利屋みたいになるのではなかろうか?
タケダの出番を増やしてほしい! その意見をくんで書いてみたのですが……
タケダ、頻繁に出るとあんまおもろくないですね。まぁコメディ的にもヤナヤツがいたのもありますが笑
しかも登場=出番少なくなるフラグが立つからやりにくく……
ま、しょせんタケダです。出番もどそ(ぇ
出番を増やしたければ革命を起こすしか……




