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カカの天下  作者: ルシカ
585/917

カカの天下585「おかーさんマジ自重しろ」

 こんばんは、サカイです!


 今日も今日とて残業してのお帰りですー。いつもサボってばっかだった私が最近急に残業ばかりするものだから、同僚の方に「病院いく?」なんて言われてしまいましたよー。「いや、いこう。すぐいこう今いこう。人が壊れていく姿なんて見たくない」なんて続けられましたが、正式に社員になる話があると説明したらようやく納得されました。


 今まではアルバイトみたいなものでしたからねー。社員になるからにはきちんとお仕事しないといけません。私は今、二人分の生活費を稼がなければいけないのですから。空読のジジイに言えば援助はしてくれるでしょう。実際、私も夫と別れてからしばらくは、空読からの慰謝料という形の援助をいただいて生活してきましたし。


 しかし今。私は自分の力で二人で暮らしていかなければならないのです。母親として。


 お仕事は一生懸命やります。残業もします。家に帰り、深夜には資格の勉強もしています。


 立派でしょー?


 すごい頑張ってるでしょー?


 それというのも――


「ただいまー!」


「お母さん、おかえりー」


 この、この、このこのこのこの可愛いすぎる娘のおかげなのです!


「お母さん、えっと――」


「ご飯にする、お風呂にする、その前にサエにするー!!」


 ガバッと!


「ふわわわわわわわー!」


「する! サエに擦るー!」


 ほっぺたをすりすりすりすりー!!


 五分後。


「ふー、今日の疲れも癒えたわー」


「ほっぺがー……ううー……ねーお母さん。これ毎日やってて飽きない?」


「サエの身体に飽きるわけがないでしょー!」


 最高の触感だわーにへへへへへー。


 え? さっきまでの母親の威厳が消えた? うっさいばーか。


「はいはい、とにかくご飯作ったよー。どうぞー」


「うう、ごめんなさいねー。本当ならお母さんが作ってあげなきゃいけないのにー」


「お母さんは仕事で忙しいでしょー。それくらいはいいよー」


「うう、いい嫁もらったもんだー」


「はいはいー」


 二人には大きすぎる家を歩きます。でも、この家で一人で暮らしてきた私にとってはサエが嫁にきてくれただけで、もう天国! 寂しさなんてこれっぽっちも感じはしないのですー! 


「あのね、これはちゃんと作ったの。あとは冷凍食品なのー」


 テーブルに並んでいるのは鶏のから揚げ、きんぴらゴボウ……これらは冷凍食品ね。そしてサエが作ったのは……野菜炒め!


「ごめんねお母さん。私、何かを適当に炒めることしかできない……」


「大丈夫よサエ。世の中には誰かを適当に痛めつけることしかできない人もいるんだから!」


 今ごろカツコちゃん、くしゃみしてるかな。


「それじゃー食べましょー! いただきます」


「うん。いただきますー」


 母娘二人での食事……


 ううー、一緒になってから毎日感動してしまうわー。野菜炒めうめー。


「ねーお母さん」


「ん、なにサエ? あーんしてほしい?」


「い、いや、そうじゃなくてー」


「じゃ、私にあーんしてー」


「そうじゃなくてー! あのね、お母さん。大事な話があるの」


 真剣な顔のサエ……


 この子はどんな顔も可愛いわー。


「大事な話?」


「うん。あのね、私と」


「結婚!?」


「なんでそうなるのー!!」


「いや、ほら、同棲の次はやっぱり……ねー?」


「ねー? じゃなくてー!」


 あら残念。違うのかー。


「お母さん、私たち」


「私たちの間についに子供が!?」


「もー! 話を聞いてよー!」


 やーん怒ったサエも可愛いー!


「……話聞いてくれないと、もうちゅーしてあげないからねー」


「申し訳ありませんサエ様!!」


 それは! それだけはー! ただでさえ一緒になった初日にしすぎたせいで、特別な日じゃないとダメって禁止させられてるのにー!!


「じゃーちゃんと聞く?」


「聞く聞く、なんでも聞くよー!」


「じゃー、これ」


 渡されたのは一枚のプリント。えーとなになに……運動会の父兄参加プログラム?


「親子で二人三脚しながら、障害物競走……あの、一緒に、出てくれないかなー、なんて」


 サエの言いたいことはわかったわ。


 そうね、せっかく一緒に住み始めたんだもんね。


 せっかく改めて家族になったんだもんね。 


「一緒になってからの、初めての共同作業……がんばるわよー!」


「う、うんー。なんか結婚式のケーキ入刀みたいな言い方だけど」


 私にとっては変わらないわよー! ふふ、頑張るわよー。


「ところでお母さん。私、運動神経スッカラカンなんだけどー……お母さんは?」


「運動神経? もちろん、ちぎれてるわよ」


「ち、ちぎれ……!?」


「うん。でもまーちぎれたら結べばいいんだからー」


「……朝からジョギングとか始めよっかー」


「うんうん! また二人でいる時間が増えるわねー」


「もー……前のお母さんってこんなにべったりだったっけ」 


「あらあら、ちょっとひっつきすぎかしらー?」


「ううん、すごくひっつきすぎー」


「じゃあやめる?」


「……やだ」


 私たちってラブラブよねー、ふふふー。


 はー、幸せー。


 幸せすぎるー。


 さて、と。その幸せを守るために、今夜も勉強しますかー!




 大・暴・走!!


 これがおかーさんの本領発揮さ!

 書きながら「ホント何してんのこの人」としみじみ思っちまいました。


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