カカの天下584「あなたならどの競技に参加しますか?」
こんにちは、カカです。
ただいま午後の授業でクラブ活動の時間です。手芸部員である私、サエちゃん、サユカンの三人は、家庭科室のおっきな机を囲みながらせっせとビーズをいじっています。
「よし、できた」
「何ができたのー?」
「作品名、鼻毛」
「なんつう名前よっ。しかもどの辺が鼻毛?」
「ほら、ここにちょろっと毛が生えてるでしょ」
「……じゃあ、その毛が生えてる楕円っぽいビーズの塊は、鼻なの?」
「や、お尻」
「じゃあ尻毛じゃないのっ」
「サエちゃん聞いて。サユカンね、尻毛がいいんだって」
「何もかも略しすぎな説明するんじゃないわよっ」
そんな感じで遊んで――じゃなくて活動してたんだけど。
「さて、諸君」
「どしたのカカすけ」
「そろそろ今学期の我々手芸部の活動内容を決めようではないか」
「活動って、今やってるのじゃダメなのー?」
だってビーズ遊びはいつもしてるし。クラブ活動って感じじゃないんだよね。
「前学期ではテンカ先生のお見合いを邪魔したり、漫才大会に出たりと大活躍だった我々手芸部だが」
「あれクラブ活動だったのっ?」
「当たり前でしょ! なんだと思ってたの?」
「……なにかしら。説明できないわ」
「じゃあクラブ活動でいいじゃん」
サユカンは首を傾げながらも頷いた。細かいこと気にするねこの子は。
「それで、我々は今学期は何をするべきだと思うかね?」
「はーい」
「うむ、サエ君」
「運動会に何か一発かませばいいと思いまーす」
おお、それがあった。去年は運動会の日がことごとく雨で結局中止になったんだよね。今年こそは頑張ろうと思ってたとこだし、手芸部としてさらに何かするのも悪くない。
「い、一発かますってなによっ」
「んー……」
「何か案はあるかね? サエ君」
「カカすけ、どうでもいいけどさっきからのその変な口調なに?」
「部長っぽくしてみた」
えっへんって感じ。偉そうになってるかな?
「アナウンスのマイクを奪う、とかどーかなー」
「あ、それ面白そう。それで実際とは違った競技の放送を流したりすれば……どうなる?」
「迷惑にしかならないわよっ」
ちっちっち、と指の運動。
「そこはうまくやるんだよ。ねーサエちゃん」
「そだねー。例えば玉転がしの競技があったとするでしょー」
「うんうん」
「こほん。『えー、次はサユカちゃん転がしです。サユカちゃんを掌の上で転がしたい人は集合してください』とかー」
「転がされてたまるもんですかっ」
「あ、本当に転がすわけじゃないよー? 面白おかしく鬼畜にからかうって意味で」
「丁寧に説明してくれなくてもわかるわよっ! 却下っ!」
「よし。じゃあこんなのどうよ。『次はトメ兄競走です。トメ兄が好きな方は競走してください』とか」
「トメお兄さんの心を奪ったほうが勝ちだねー」
「絶対に一番になってみせるわっ! 賛成!」
どう競走するのかさっぱりだけど、やるなら私も参加、かな。や、一応ね、一応。
「多分その日だけじゃ決着つかないと思うけどねー。じゃあ次は何のサユカちゃん競技にしよっかなー」
「む、それならわたしだって! 『次はサエすけ競走です。サエすけが好きな方は競走してくださいっ』でどうよっ」
「カカちゃんのマネでオリジナリティがなーい」
「ううっ」
「それに多分お母さんが勝つよ、それ」
「ふ、サエちゃんのためなら死ねる私を忘れてもらっちゃ困る」
「お母さんも多分死んでくれるよー?」
「……サエすけ? ちょっと言い方選びましょ」
「サカイさんとはいい勝負ができそうだ」
そんな感じでわいわい喋ってると、顧問のくせにたまにしか顔を出さないテンカ先生が入ってきた。
「よう、てめぇら」
「……テンカ先生競走か。意外と大勢参加するかも」
「人気あるもんねー、なぜか」
「サエすけっ! いくら不思議だからって、いくら不思議だからって、いくら不思議だからって本人の目の前で『なぜか』とか言わないのっ!」
「なんで三回言うの」
「それだけ不思議なのよっ!」
サユカンもほんとたくましくなってまー。
「何の話かよくわからんが、怒っていいんだよな?」
まーまー落ち着いてモチついてーと先生をなだめるついでに、運動会で私たちがするべきことはあるかな? と聞いてみた。
「応援用に垂れ幕か横断幕でも作れよ」
私たちはびっくりワーオ。
「それがあった! それでいこう!」
「手芸部っぽいわっ!」
「まったく思いつかなかったー」
「……あん?」
私たちがあまりにも驚いたのが気になったらしい先生に、さっきまでの会議内容を説明してみた。
するとなぜかジト目で見られた。
「なんかてめぇら、手芸部っつうか……手芸しながらなんか企む部になってねぇか?」
そだね。
今年はやります運動会!
来月上旬くらいを予定してまっすー。
も少しまったりしてからね。
んー、にしても何するんですかね、手芸しながらなんか企む部の三人は。




