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カカの天下  作者: ルシカ
57/917

カカの天下57「不機嫌の理由は?」

 こんにちは、トメです。


 突然ですが、困っています。


 なにやら小生意気なことでご近所で有名な僕の妹カカが、小学校から帰ってきてからずっと不機嫌なのです。


 今もこたつに入ってごろごろしながらムスーっとした顔でテレビを見ています。いや、無愛想なのは元からだけどさ。


「あのさ、カカ」


「なにー?」


「何かあったのか?」


「べつにー」


 でた、最強の万能の言葉、「別に」だ。


 何も話す気ありませんと、この上なくシンプルに伝えることができる攻撃呪文だ。MPという精神力は使わないが、くらうと精神的ダメージは負う。ゲームの話がわからない人がいたらごめんな?


「え、えーと、カカ? 晩御飯なにがいい」


「なんでもー」


 むぅ……重症だ……


「カカ、お菓子食べるか?」


「いらないー」


「カカの好きなエクレアだぞ?」


「いらなーい」


「みかんは?」


「いらないよ」


「バナナは?」


「いらない」


「僕は?」


「いらないってば」


「…………」


 ショックだ。


 端から見れば自爆以外のなにものでもないけどショックだ。


「……ん? あ、やっぱいる」


「我が妹よ! おまえはやっぱり可愛いな!!」


「バナナ食べたい気分だった」


「可愛くねぇ!!」


 ツッコミつつもカカがちゃんと反応してくれて嬉しかったりする僕だった。


「バナナ栄養たっぷりだもんね。食べて元気だそ」


 そう言いながらもしゃもしゃとバナナを頬張るカカは、本当に元気が無いようだった。


「なぁカカ。マジな話、なんかあったんなら相談しろよ」


「んー……」


「僕はおまえの家族なんだからな」


「くさい」


「わかってるわ! わかってるけど、たまにはこんなことを言ってみようと思った僕の出来心をちゃんと見てくれ!」


「見たよ、恥ずかしい」


「恥ずかしいとか言うな!」


「……や、だって。私の悩みのほうが恥ずかしいから」


 そう言って恥ずかしそうに俯くカカ。


「恥ずかしいってなぁ。生まれたときからずっと一緒に暮らしてきて、今更恥ずかしいもなにもないだろうに。言え言え」


「実はね……」


「おうおう」


「今日、トイレの大きい方がうまく出なかったの」


「んあ?」


「こういう日って……憂鬱だよね」


「そ、そうか?」


「うん……なんかその憂鬱から始まって、いろんな昔のこと思い出しちゃって……」


 そう言って遠い目をする小学三年生。


 大便から始まるいろいろな歴史があるのか、この妹は。


 僕も試しに遠い目をして、そんな歴史があったかどうかを思い出してみた。


 ……ああ。


 ……あああ。


 いろいろあるよね……うん……便意って突然だしね……子供のころは特に。


「はぁ……」


「トメ兄も憂鬱?」


「うん、いろいろあったよな」


「そっか。じゃ一緒に便所行って語ろうか」


「語れねーよ」




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