カカの天下561「めんめんめん」
「ただいま」
ふぅ……トメです。
最近ちょっと仕事が忙しくて疲れ気味です。そんな僕を真っ先に迎えてくれる玄関のホワイトボードに書かれていた文字は……
『わたし、めっちゃかゆいねん』
知らんて。
「おかえりトメ兄!」
「おう。夕飯までちょっとダラダラさせてな」
身体がだるいので居間でゆるりと横になる……ふー。
「ねね、聞いてよトメ兄」
「んー?」
「今日さ、いろんな人の夏休みの様子を聞いてたんだけどさ」
ふむ、あれだな。調子戻すためにカカでもからかうか。そうなると……からかうツッコミどころを探さないと。
「なんと、ハワイに行った人がいたのだ!」
「あ、やっぱ実際にいるんだなそういう子」
うちは国外には行かないからなぁ。理由は母さんが長期の休みを取れないから、そして母さんを差し置いて旅行に行こうなどとは誰も思わないからだ。
「ハワイ……すごいよね。私、ハワイ語なんかできないから行く気になれないや」
ハワイ語……アロハオエーとか? おえー。
「ハワイ語。略してワイ語」
猥語? 卑猥の猥? そんな言語が主流なのか。終わったなハワイ。
「それからね、イージス艦に行った人が」
出兵でもしたんか。
「イギリスだった」
だいぶ違うな。
「似てるよね」
まぁ、響きだけなら似てると言えなくも、ない、か?
「あとね、空に行ったって人が」
……死んだのか?
「たくさん」
たくさん死んだのか。
「あ、海だった」
「青くて綺麗なとこしか共通点ありませんが」
「ほとんど同じじゃん」
……それもそうか。
……そうか?
「僕はてっきりたくさん死んで空に上ったのかと」
「なに、そんなに死にたいの? のこぎり持ってこようか?」
なぜにそんな恐ろしいアイテムをチョイスするのですか。
「やめてくれ」
「いまなら斧もついてくるよ」
「怖いからやめぃ。話を戻すけど、海なら僕らも何度か行ったよな」
「だよね。でも山にも行きたかったなー」
きゅぴーん。ツッコミどころめっけ。
「山に?」
「うん、山に」
「山仁さんの家なら二丁目にあるぞ」
「や、そうじゃなくて。山の中だよ」
「山中さんの家なら三軒隣にあるぞ」
「違う! お山のこと!」
「尾山さんなら」
「もう!!」
「毛さん? そんな中国系の人近くにいたっけ」
「知らない!」
「シラヌイさんならこないだ――」
「うがー!!」
「UGAね。カラオケに機種にあるなー」
あらら、怒って自分の部屋に行っちゃった。
……さて、調子も戻ったことだし夕飯でも作りますかね。
その前に、と。
「おーい、カカ?」
カカの部屋の扉の向こうへ呼びかけるが、
「オー・イカカなんて人知りません」
返ってきたのはこんなお言葉。怒ったかなこりゃ。
「やりすぎたよ、ごめん」
「槍杉さんも多夜さんも五面も知りません。四面もクリアしてないし」
言ってることはよくわからんが、とにかく怒っているらしい。
「ごめん!」
「私はまだ二面!」
あ、あれか。シューティングゲームとかで言う一面とか二面とかの話か。一つ目のステージを一面とか言う……となればこれは、五面までいけば許してもらえるということ!
なぜそうなるか? ほら、五面までいけば『ごめん』が認められることになるんだよ。え、まだよくわからない? カカ的思考だと、とにかくそうなんだよ。
「えっと……二面にいるんだよな? 三面にはまだ行かないのか?」
「二面のボスが強いの」
「ちなみにボスは誰だ?」
「お姉」
ラスボスじゃん。
「三面のボスは?」
「本気出したお姉」
裏ボスじゃん。
「……四面のボスは?」
「変身したお姉」
全部姉かい。というか何に変身するんだ。
「……五面のボスは」
「お姉×10」
勝てねー。
このままでは永遠に許してもらえない……仕方ない。
食べ物で釣るか。
「あー、その、夕飯なに食べたい?」
「めん!!」
面面言ってたからか麺ときましたか。
「麺類な。それ作るからさ、機嫌直してくれよ」
「めん!」
返事か? それ。
「たいこ!」
「わかった。明太子パスタな。それと、本当にごめんな?」
「……いま四面。もうすぐ五面」
おお、もうすぐ許してくれるみたいだ。
ちゃんと許してもらうために、姉を10匹倒せるくらい美味しいもん作らないとな。
意味不明なサブタイトルでしたが、話を読んでいただければ納得してもらえたはずです! めんめん!
え? 五面とごめんの関連性がわからない? そこはカカ的理論なんで適当に流してください。
しかし夏休み。私の家は旅行とかまったくしない家だったのですが、特にハワイとか行きたいとは思いませんでした。まぁ行ったことないから良さがわからないだけだと思いますが……
今は普通に温泉とかいきたいなぁ(しみじみ




