カカの天下558「夏の詰め合わせ、した」
とある最後の夏の風景、そのいち。
カカです。
さて、何しよっかな。こないだのトメ兄とのあれやこれやで宿題終わっちゃったんだよね。
よし、一人で遊ぼう。
カキ氷を……がーっと食べる!
があああああーっと。すると……来た来た!
頭の奥が、キィィィィィィィン……!
「あぅ、おぅ、あぅぅぅぅ!」
たはー!!
たのしー!!
もっかいやろ……
そんな感じで過ごす最後の夏。たはー!
とある最後の夏の風景、そのに。
タケダだ。
「ほらニッシー! 急いで宿題を終わらせるわよ!」
「はぁ、毎年よくやるよねぇ僕らも。絶対に最後の二日で終わらせようとするんだから」
必死に机にかじりつく二人を見てため息をつく。
「それはいいが、なぜ俺の家でやるんだ?」
「ここならクーラーあるじゃない」
「お茶も出るだろ」
はぁ……こいつらは。
「イチョウ君、君は宿題しなくていいのか?」
「わたくしは一日で終わらせるタイプですので」
「おお、俺と同じだな」
む? なぜアヤ君とニシカワは嬉しそうな顔をしているのだ?
「なんだ! 二人とも仲間だったのね!」
「いや待てアヤ坊! ラスト一日で終わらせるなんてヘタすれば僕たちの上を、いや下を――」
「何言ってるんだおまえらは」
「宿題は初日に終わらせるのですよ」
「そういうもんだろうが……あれ、どうした二人とも」
なんかすごく睨まれているような……
「これだから優等生は!」
「お茶! タケダ! お茶!」
「わ、わかったわかった、煎れてくるから待ってろ!」
なぜ怒る。まったくもって意味がわからん。
しかし……ノゾミ君、遅いな。
「早く!」
「はいただいま!!」
「おかえり!」
「……は?」
こんなこき使われる最後の夏……
とある最後の夏の風景、そのさん。
ノゾミです。
今日はタケダ君の家で勉強会……じゃなくて宿題会。今度こそお礼を言うチャンスだ。お礼用のカレーも準備したし。
タケダ君もイチョウさんも宿題終わってるみたいだけど、難しい問題の答えを見せ合ったりしながら勉強するのも結構楽しそうだし……ってうきうきしてたのに。
宿題が見つからない。
とっくに待ち合わせ時間は過ぎてるのに。
ないよう。
ないよう……
ああ、時間が……
結局行けなかった。
翌日、見つかった。
くすん。
寝かせたカレーおいし。
くすん……
こんな泣ける最後の夏。
とある最後の夏の風景、そのよん。
サエです。
私たちを差し置いて宿題を終わらせてしまったカカちゃんを恨みつつ、サユカちゃんと二人で宿題を片付けています。
やっているのは算数のドリル。
二人で一つの机を挟みながら、黙々とやります。
――ぺら。
同時にめくれるページの音。
――ぺら。
再び同時。
――ぺら。
また同じ。
「……ねぇ、サエすけ」
「なにー?」
「なんでページをめくるタイミングが同じなの?」
「なんでだろねー」
「……そのドリル、わたしが今やってるのと同じやつよね」
「そだねー」
「ページも同じよね」
「そだねー」
「……サエすけっ!」
「一緒にやるって楽だよねー」
「君、わたしの写してるだけでしょっ!?」
「うん、逆さまから文字読むの、得意なんだよー」
「あーそうね向かい合ってるわけだからそっちから見ればわたしの文字も数字も逆さまよねスゴイスゴイ――ってこらっ! 堂々と白状してんじゃないわよっ」
「大丈夫だよー。時々は違う答え書いてるからバレないってー」
「そういう問題じゃないでしょっ! こういうのはきちんとしないとダメなの! わたしと違うドリルやりなさい、いいわねっ!?」
「ぶー、サユカちゃんのマジメんぼー」
「褒めてくれてありがとっ」
「アメンボー」
「どういう意味よっ!?」
「甘えんぼー」
「余計なお世話よっ!!」
こんな感じでサユカちゃんで遊んだ、最後の夏。
とある最後の夏の風景、そのご。
サラです!
今日はちょっとお洒落してみました。奮発して買った服をいくつか鏡の前でとっかえひっかえして、ようやく決めたこの姿!
ちょっと胸が目立つ気がして恥ずかしいけど……た、たまには露出多いのもいいですよね、夏ですし!
さぁ……いざトメさんの家へ!
最近あんまり遊びにいってなかったからなぁ。楽しみだなぁ。わくわく……
ピンポンを鳴らす。
カカちゃんが出てきた。
「トメ兄ならテンカ先生と飲みに行ってるよ」
がーん! なんてこと、驚かせようと思って連絡しなかったのが裏目にでた……うぅ、どうせ暇だと思ってたのに。
こうなったら私もその飲み会に無理やり参加するわ!
……お洒落のせいでお金が無い。
「え、えっと。カキ氷、一緒に食べる?」
「うん……ありがとうカカちゃん」
とても美味しかった。
「サラさん、泣いてる?」
「違うの、これはつべたくて、キィィィンとして涙が出てるだけなの!」
そんな、冷たい氷で心温まる最後の夏。
とある最後の夏の風景、そのろく。
トメです。今、テンと飲んでます。
「もうすぐ夏休みも終わりだな……面倒くせぇぜ」
「なぁ、テン」
「あん?」
「今、ほしいものとかあるか?」
誕生日プレゼントに何をやるのか結局決めてない僕は、感づかれるのを覚悟で率直に聞いてみた。
「ほしいもの? ああ」
しかしテンは気づくどころか深く考える様子もなく即答した。
「おもろい宿題だな」
そう、深く考えることもなく急所を突いてきたのだ。
「夏休みが終わってからの楽しみっつったらやっぱそれだろ。特に自由研究! どんな奇抜なものを提出してくれるのか、楽しみでならねぇぜ! ん、どしたトメ」
「あれか……やっぱあれしかないのか……」
カカの提案するテンへのプレゼント、あまりにも恥ずかしい宿題。あれを……やれと!?
僕にタケダの仲間入りをしろと!?
あんまりだ!!
「おかわり!!」
「おお、よくわからねぇが威勢がいいな、気に入った! オレも付き合うぜ!」
そんな飲んだくれな最後の夏。
とある最後の夏の風景、そのなな。
クララです! 今日はキリヤの店にきてます! デザートにフォンダンショコラを奢ってもらってます! 甘すぎておいしすぎです!
「そろそろクララちゃんも夏休み、終わりですね」
「へ? クララは毎日がお休みですよ」
「クララちゃん、それニートって言うんだよ」
「クララしょっくです!!」
そんなお勉強になった最後の夏。
とある最後の夏の風景、そのはち。
こんにちは、ユイナです♪
今日の私はちょっとお暇ができました。なのでパパ君とスタジオ近くの公園を散歩なんかしてます。
「いい天気ですねー」
「うむ……」
のんびりとした時間。
それもいいけど、ちょっとお茶目してみようかな。
「パパ君パパ君」
「なにかね我が女神」
「はい、これ」
私はおもむろに一枚の紙を差し出した。
その紙にはただ一文字、『上』とだけ書いてある。
それを読んだパパ君は、
「シュバッとな!」
果てしない青空へと吸い込まれていった。上へまいりまーす。上すぎでーす。上杉さんは関係ありませーん。
……やがて、黒い米粒になったパパ君が落ちてきた。
「スタッとな!」
「パパ君かっこいー!」
「いやーはっはっはっは!」
「はいこれ」
「む?」
今度は『下』です。それを読んだパパ君は、
「土遁!!」
ズボッと地面へ潜りこんだ。下へまいりまーす。ありえないほど下すぎでーす。下杉さんって方はいらっしゃいますかー? 関係ありませんけど。
……やがて、どこまで潜ったかわからないパパ君がニョキッと生えてきた。
「ズボッとな!」
「パパ君かっこいー!」
「いやーはっはっはっは!」
「でも汚い♪」
「ごめんなさい」
こんなラブラブな最後の夏。
とある最後の夏の風景、そのきゅう。
カツコだ!!
今日は気分的に流しそうめん! 水の流れるミニ滑り台をシューに無理やり用意させて、いざスタンバイだ!
「あ、あの……いいんですか、僕なんかが最初に下にいて」
「いいよいいよ、準備ご苦労さん。あたしらが流すから待ってな。ねータマちゃん」
「ねー」
「うう……ま、まさか褒美がもらえる日が僕なんかにくるなんて……感激です! いざ! 流れてくるそうめんの全てをすくいとってみせます!」
「んじゃ流すよー」
「はいっ!!」
つるつるつるー。
「タマちゃんも、ほい」
「おー」
つるつるつるー。
んー、良い感じ。
「……あの、流れてこないのですが?」
「あ、待って。先にあたしらの胃に流し込むから」
「流しそうめんの意味ないですよねそれ!?」
「美味しいねー、タマちゃん」
「うー、おいしー、この線路」
「たしかに細くて長いですが無理ありませんかタマ様!?」
「じゃー、いぼ?」
「どこも共通点がなーい!!」
「や、たしか『いぼの糸』ってそうめんがあったよ」
「そうなんですか!? タマ様……知ってました?」
「なんじゃそえ」
「知らないのに『いぼ』って答えたのね」
「タマ様スゲー」
そんな楽しい最後の夏。
先月の31日に書いた「うえ」……今月の31日に書けばいいかなぁとか思ってましたが、最後の話は決めていたので今日お届けします。
ついでにあんパンのほうも新しい話をば^^




