カカの天下557「激烈極まる闇の戦い」
カカでーす。
今日はトメ兄とスーパーへお買い物に来てます。夕飯その他を買うためです。
「カカ、今日は何が食べたい?」
「美味しいもの」
「……何が食べたくない?」
「美味しくないもの」
難しい顔をするトメ兄。
「はぁ、仕方ない。いつもみたいにやるか」
「ん」
最初からそうすればいいのだ。
通りかかったのはお魚コーナー。今日の主役でも決めるのかな。
「よし、カカ。カンパチとサンマ、どれがいい?」
カンパチとサンマ……
カンパチVSサンマ!
カンパチ=なんとなく昔の人っぽい名前=どっかの男=あだ名はハチ。
サンマ=さんまさん=芸人さん=おもろい=無敵。
「サンマの勝ち」
「おっけ」
その後もいつもの通り、私の脳内決戦で買うものをどんどん決めていく。
「あ、油切れてたな。カカ、オリーブオイルとサラダ油、どっちがいい?」
オリーブオイルVSサラダ油!
オリーブオイル→オリーブ。
『あぁ! オリーブ! オリーブ!! 会いたかったよ!』
なんとなくこんなの浮かんだけど誰だろう。まぁいいや、とにかく人の名前だ。
サラダ油→サラダ。
『サラだ!! 私はサラだ!!』
知り合いだ。
「知り合いの勝ち。サラダ油」
「ん、安いほうがいいよな」
次はお菓子コーナーだ。
「おやつ買っていいぞ。一つだけな。スナックとチョコ、どっちがいい?」
スナックVSチョコ!
スナック……
『あらぁ、また来たの? そんなに私が好きなのかしら? しょうがないわねぇ……何飲むの?』
チョコ……
そういやサエちゃんの水着のイメージがたしかチョコ……
『あらー、また来たのー? そんなに私の水着姿が好きなのー? しょうがないなー……一緒にあそぼ?』
「問答無用でチョコ」
「いいけど、食べ過ぎるなよ。鼻血出るからな」
別の意味で出そうです。
「あと買うものは……あ、そうだ。今うちにある材料なら芋買えばカレーできるな。明日にでも作るか。芋……さつま芋の時期だよな。なぁカカ、さつま芋カレーか、それともじゃが芋で普通のカレーか。どっちがいい?」
さつま芋VSじゃが芋!!
私の脳内で対峙する二人。
『くく……この殺魔芋と勝負するとはいい度胸だな、貴様。名を名乗るがいい』
『ふん、大層な名前ではないか。我は邪牙芋――闇に堕ちた我が牙をその身に受けるがいい』
注意。対峙してるのはあくまで芋です。
『大仰な芋だな。芋とは元より土の中に生きる者。つまりは芋である時点で私たちは共に闇に属しているとは思わないか?』
『それは至極尤もだ。だが我はあえて口にしよう』
『闇を超えし闇に堕ちたとでも言うつもりかね? くく、単なる根暗とさして変わらなく聞こえるが』
『――上等だ、芋と根は切っても切れぬ関係故』
『いやまぁ切れば切れるがね、所詮は。まぁいい――受けて立とう、“邪なる牙”よ』
『“殺しの魔”よ、盟友にして天敵――商売敵たる貴殿に敬意を表し、我が牙の全力をお見せしよう』
しつこいようですが注意。こいつらは悪魔で芋です。微妙に誤字じゃない気がします。
『……一つ、聞くが』
『なんだ』
『貴様の牙とは、その所々に生えている芽のことか? だとしたらあまりにも間抜けに思えるが』
『ふん、甘いな。世には――何物をも越えて硬き芽があると知るがいい!!』
『来るか、ならば私も応えよう。世には――闇の黒さえ埋め尽くす紫があると知れ!!』
激突する邪牙芋と殺魔芋。
邪たる闇の牙が、殺意を込めた魔の紫が交差して――
両方砕けた。芋だから。
「さつま芋食べたい」
「おっけー」
勝負が引きわけだったので気分で選ぶ。
あ、なんか色んなものを戦わせてたら思い出したことが一つ。
「ねーね、トメ兄」
「なんだ?」
「唐突に過去の間違いを思い出した」
「多すぎて困っただろう」
「や、私のじゃなくてサユカンの」
「サユカちゃんの? 何か間違ってたのか」
「うん。ほら、七夕やったじゃん? それで願い事書いたじゃん」
「ああ、結構前の話だな」
「そのときにサユカンがなんてお願いごとしたか知ってる?」
「えっと……自分で言うのも恥ずかしいけど、なんか僕とデートしたいとか」
「実はね、その札の裏に小さく“トメさんとずっと一緒にいられますように”みたいなこと書いてたんだけど」
「そ、そうなのか……照れるな」
「あのね、“ずっと一緒に!! サユカ&トメ”って書きたかったんだろうけど……サユカVSトメになってた」
「ずっと戦うの!?」
今さら気づいても遅いけどね。ま、いいんじゃん? さっきの芋同士の戦いみたいに格好よかったなら。
……あれ。
なんで芋同士の戦いがあんなに格好いいのさ。
謎だ。
謎はおまえだ。
そう読者にツッコんでほしくて書きました!!
ここで一応注意。格好いいこと言ってる二人がいますがあくまで芋です。ええ芋です。ちゃんと芋同士の戦闘シーンを思い浮かべてくださいね。
さてさて、8月も残り2日。
内容はともかく「最後の二話はこんな話をやろう」と決めているものがあったりします、が、この芋たちよりは大仰な話ではないのであしからず。




