カカの天下549「野菜生活」
「よーい、ドン!!」
だっしゅ、だっしゅ、だっしゅっしゅー!!
「――よし、一番!!」
「ふぅ、二番よっ」
「さーんーばーんー」
予想通りの順位だね。あ、こんにちは、カカです。今いつもの三人で競走してたところです。
「気持ちよかったー! ありがとうねサユカン、畑使わせてもらって」
「わたしのお祖父ちゃんのだし、別にかまわないわよ。でもいきなり『畑貸して!』っていうから何をするかと思えば……」
「ふぅ……ふぅ……私、こういうの、苦手だよー」
「ごめんねサエちゃん。でも一度やってみたかったんだよ」
日光の下、緑の匂いが溢れる畑の中を全力疾走! 絶対気持ちいいと思ったらビンゴだった。ほら、なんか畑の均等に延びてる道ってレース場みたいじゃない? それに気づいたらむしょーに三人で競争したくなったんだよ。
「はー、はー、まー、たまにはー、運動するのもー、いいけどー」
「そうそう、サエすけはこれくらいしないと、もやしっ子になっちゃうわよっ」
「もやしみたいにサエちゃんが畑でいっぱいとれるようになるのかぁ……」
「そして出荷されて皆に食べられるのねっ」
「いやぁー!!」
スーパーでサエちゃんが並んでれば買うけど! なんか食べるとか言うとグロくて嫌だ!!
「そういえばさ、皆を野菜に例えると何になるんだろうね」
「……カカすけ、相変わらず発想が突飛ね」
「でもー、はー、おもしろいかもー、はー」
「サエちゃん大丈夫? ちょっと木陰に座ろう」
背の高い農作物の影に三人並んで座る。土がお尻につくのも気にしない。でもこの植物は木になる、って木になったら大変だ。気になるだ。これはなんだろ、見たことあるような……とうもころしか!?
「ふー……落ち着いた」
「よかった。じゃあ本題にいこう。サユカンは野菜に例えるとなんだろう」
私とサエちゃんの視線が一点集中。サユカン今日はショートパンツだから白い太ももがかなり眩しい。
「「大根だね」」
「どこ見て言ったっ!?」
「サエちゃんはなんだろ」
「聞きなさいよっ」
「サユカンどう思う?」
「ほんと人の話を聞かないわね君らは……」
「人に話を聞いてるよー」
「いいけど……慣れたし……サエすけならコーヒー豆でいいんじゃないの?」
あれ……野菜なの? 豆だから野菜か。
「はいはい、黒いって言いたいんでしょー」
「甘いわねっ。わたしが思うに、サエすけの黒さは煮ても焼いても食えないほどのレベルじゃないのよ。まだ可愛らしさがあるっていうか」
「つまりー?」
「コーヒー豆なら煮ても焼いても食えるわっ」
「うまいこと言ったつもりかー!!」
言いながらサユカンの太ももをこちょこちょーっとくすぐるサエちゃん。むぅ、乗り遅れた。
「ちょ、やめ、やめなっさいっ!」
「むー、腕を押さえられたら敵わないー」
腕力ないからねサエちゃん。
「さて、お次は私なわけですが」
「カカちゃんは簡単だよー」
「ほほう? なによサエすけ」
「トマト」
「なぜに」
「上から読んでも下から読んでも一緒でしょー」
……あ。トマト。カカ。なるほど。しかも赤いしぴったりだ。
「じゃあトメさんはっ」
「トメ兄はゴボウ」
「その心はー?」
「よくちくわにつっこんであるじゃん」
「それだけなのっ!?」
こういうのは直感と思いつきが大事なんだよ。
「じゃーテンカ先生はなんだろー」
「かぼちゃ!」
「即答するわねカカすけ。理由は」
「天ぷらにすると美味しい」
「……わかるけどさ、それ君の好みでしょ」
かぼちゃ美味しいよ、甘いかぼちゃ。
「じゃー、あの通りすがりの人はー?」
「顔がたまねぎ!!」
「あの通りすがり二人目はー?」
「雑草」
「とるに足らない存在ってことだねー」
「や、名前も知らないって意味で言ったんだけど……そ、そこまで言わなくても」
「ちょっとっ! わたしを置いていかないでよっ」
こういう競走となると私とサエちゃんがツートップ、サユカンが遅れぎみになるんだよねー。
それにしても野菜食べたくなった。かぼちゃの天ぷらとか……トメ兄にお願いしよっと。
その後、夕飯の買い物に行くトメ兄に。
「今日さ、食べたいものがあるの」
「へぇ、言ってみ」
「テンカ先生の天ぷらとトメ巻き、サユカンの煮物が食べたいな」
「…………」
「あ、サユカンと私のサラダでもいいか」
「私のサラダてオイ」
「あとサエちゃん飲みたい」
「おまえいつから姉の仲間入りしたんだ?」
バケモノと言いたいらしい。
そういえばお姉って野菜だと何なんだろう。
んー……
すいかだね。
すいかは野菜なのか果物なのかわからない。
お姉は何が何だかわからない。
ぴったりだ。
カボチャの天ぷら、ゴボウのちくわ巻き、大根とトマトのサラダ。食後はコーヒーにデザートはスイカ。
これにご飯と味噌汁つけてカカ天定食!!
へるしー。




