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カカの天下  作者: ルシカ
543/917

カカの天下543「お盆の夜には色々……いらっしゃいます?」

 むにゃ……どうも、トメです……


 挨拶したものの、僕は自分の部屋の愛しきベッドでそろそろ就寝するところだったりします。今日は墓参りに行って疲れたので、すでに布団に入ってうつらうつら……


 あ、そろそろ睡魔に屈服します。


 それではみなさま……


 おやすみなさい……


 それにしても最近この枕、チクッとするとこあるなぁ……むにゃ……


「アチョー」


 ……なんか聞こえた?


 ま、いっか……ぐぅ……


「ホァター」


 やっぱなんか聞こえる。


 ゴン。 


「アタッ」


 どっかぶつけたか? 僕の部屋の向こう……廊下から聞こえる。


 なんとなく想像はつくものの、僕は起き上がって電気をつけてドアを開いた。


 するとそこには布団のお化けが。


「一緒に寝て」


 やっぱりか……この妹、知っての通り幽霊の類がてんで苦手である。そのためご先祖の霊がたくさん帰って来るこのお盆、さらに墓参りした後は妙に怖がりになるのだ。


「墓参りなんて毎年してるだろ? それで毎年何もないんだから、今年だって何もないさ」


「今年は違う。なんかいる」


「幽霊か」


「幽霊などこの世にいない! いたら私はもう死んでいる!!」


「そ、そうか」


「でも何かいるの! だから私は警戒しながら必死にここへ辿りついたの!」


 警戒……ああ、さっきのアチョーとか言ってたやつか。言いながら暗闇に向かってファイティングポーズでも取ってたんだろうな、きっと。


「何かってなんだよ。きっとネズミかなんかが屋根裏にでもいるんじゃないか?」


「でも……お盆だし」


「お盆だからゆうれ――」


「その名を口にするな!!」


「でも、お盆――」


「ボーン!!」


「……はい、もう何も言いません」


 よくわからない迫力に押され、結局一緒に寝ることに。まぁこの歳になった妹と一緒に寝るなんて最近は年に数回しかない珍しい行事だし、たまにはよかろう。


「電気消すぞー」


 カカは僕の隣で持参してきた枕にしがみついている。そして電気を消して寝転がると――今度は僕にしがみついてきた。人肌は温かくて寝心地はいいんだけど、こいつヘタに鍛えてるから握力めっちゃ強くて痛いんだよな……いつつ。


 しかしそんな寝苦しさにもやがて慣れ、再び睡魔さんが登場してねんねんころすと歌ってくれたとき――あれ? なんか不穏な歌じゃなかった? まぁいいや――突然カカが叫んだ。


「ボーン!!」


 その叫びと共に振り下ろされた拳は見事に僕のお腹へクリーンヒット。眠りかけていた意識は「あにすんだこらぁ」的な感情と共に目覚めた。


「な、なんだよカカ!」


「何かいる! 音がする!」


 音? あ、ほんとだ。上のほうからガサゴソと。


「く、くくく、くるならこい!」


 電気はつけてないけど闇には目が慣れてる。上のほうに……なにかいるな。黒い細かいのが動いてる。


 それに対してカカが構えているのは……僕の枕? そんなもん振りかざして武器のつもりか。


「こ、この枕はね、伝説の枕なんだぞ!」


 初耳だが。


「昨日これでゴキブリを潰した!」


「聞いてないぞそんな伝説!?」


「それだけじゃない!」


 ……聞こう


「先週、なんでか家に蛇が入ってきたから……追っ払うのにこれを噛ませた! そしたら蛇の牙が刺さって抜けて、枕についちゃったのだ! つまり……この枕は毒がある(かもしれない)牙を持っている!」


 ……ぇ、最近ちくちくするなーと思ったら、それ?


 ど、毒ないよな? ないよな!?


「さぁこい!」


「よしきた」


 スパァン!! と人の枕で暴挙を尽くしてくれた妹の頭を引っぱたく。


「なにするか!?」


「おまえこそ人の枕で何をしとるか。ええい、とにかく明かりをつけるぞ」


 暗いのに目が慣れているところへの突然の光で目がくらむ。しかしすぐに慣れ、天井あたりを飛んでる黒いのの正体がはっきりした。


 すばしっこいけど、こういうの捕まえるの得意なんだよね僕……んっと。


「ぱしっとな」


「と、トメ兄、手で掴んだの!?」


「これコウモリだな。窓からでも入り込んだんだろう」


 牙むき出しだな。噛まれないように気をつけてっと。


「もう大丈夫だぞカカ」


「寄るな!」


「助けてくれたお兄様にそれかい」


 ほれほれーと近づけてやろうかとも思ったけど、それで大騒ぎされたらご近所迷惑になるからやめておいた。遅い時間だしね。


「……そのコウモリ、変身したりしない?」


「しないだろ」


「いきなり吸血鬼キリヤンになったり」


「なんであいつが……」


 ふと想像してみる。ヤツが黒いマントをはためかせ、高らかに笑っている様を。


「似合うな」


「でしょ」


「サエちゃんも似合いそうだけど。可愛らしくて」


「サエちゃんになら心臓をかじられて脳みそ飲まれてもいいんだけど」


「エグいエグい」


 冗談を交わしながら窓から逃がしてやる。これにて一件落着か。


「さて、問題は解決したわけだし部屋に戻」


「ここで寝る」


「……ま、いいけどね」


 またボーンとか言い出さなければな。そう願いつつ一緒の布団で眠りについたのだが……


 カタ。


「明かりをつけましょボンボンボーン!!」


「ぐほぁ!? つ、つける、明かりつけるからその妙に威力のある拳を引っ込めろ!」


 今度は本当にねずみでしたとさ。


 甘えられるのも楽じゃない……




 怖がりカカとそれに振り回されるトメ君。

 なんだかんだで仲がいいです。また「トメ殺す」みたいな発言がきそうですが、これはこれで大変みたいですよ? 夜中にねずみ探しって……

 でも、ま。

 人肌恋しい人にとってはやっぱ羨ましいんですけどね笑

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